第7話 勇者よ……
貴様の活躍は聞いていた。どう考えても貴様より強い仲間と共に、貴様より強い俺様の部下を次々と倒し、見事我の前に姿を現したな。一応誉めてやろう。
何度殺されても復活し、困難を次々と乗り越えてきたのは敵ながら驚嘆する。報告されているだけでも1000回以上の復活とは……俺ならば正直馬鹿らしくなるが、もしかして死ぬのは悔しいけど……感じちゃうとかそういう性癖なのか?
そもそも勇者じゃないと魔王を倒せないというのは誰に聞いた? 女神か?
まあそういう運命が判るのならば少なくとも最初から強い武器とかを渡しておけよと思うが、本当昔からあの女はけち臭いな。そこが可愛いのだが……ああ、あの女との甘くもほろ苦い関係は今話すには時間が足りないな。
今更だが……考えてみろ? 勇者じゃないと魔王は倒せない、
という事はどんな事があっても勇者は魔王の前に立てる、という事だ。
言い換えれば魔王さえ倒さなければ貴様は不死身、という事だ。
言いたい事は判るか? 傲慢な王や貴族どもの命令を受けても無視しておけば、貴様は不死のまま何100~何1000、下手したらいつまでも生きられたという事だ。
それは裏を返せば魔王にも適用される。つまり勇者と魔王はお互い出会わないように気を付けて、もし出会ってしまってもお互い殺したりしないでいる方がお互いWINWINという事だ。
それじゃ敵を討てない? 俺が直接お前の村に火をつけたか?
部下が勝手にやった事で監督責任はあるのは認めるが、例えば893の大量殺人事件を組長の責任とするにも色々裁判とかするべきだろ、いきなり殺しに来るとかどんな無法国家だよ。
世界平和の為? お前はそもそも何もしてなかった俺の部下まで無残に殺してたよな? 戦争状態だから仕方がないとはいえ敵を皆殺しにしようとか引くわ。
しかもさっきまでこの城の宝物庫を次々と漁ってお宝手に入れてたよな? この泥棒野郎。
もし戦勝国の権利か何かを主張するにしても 魔王を倒してから安全になった城内を、そういう戦後処理班に任せて回収させるべきじゃないのか?
有用なアイテムがあるかも? ここに乗り込む前に用意しとけよ。
色々言いたい事はあるが、今お前は俺の前でとどめを刺されようとしている。何故負けたか判るか?
魔王は勇者に倒される
つまりは
魔王じゃなきゃやられるかどうかは実力次第
という事だ。戦闘開始した後、まず勇者の攻撃が来る前の無敵時間に貴様の仲間を全部倒し、貴様1人になった瞬間に
「魔王という肩書を変えた」
……俺の今の肩書は「初代大統領」だ。無論選挙じゃなく腕っぷしでなったものだが、まあ大統領じゃなくても君主でも天皇でもリーダーでも何でもいい。
幾多の魔物を実力で従えてきた俺とその勇者補正に頼ってきたお前が一対一で戦うと、どうなるかは日の目を見るより明らかだったな。
……あれ? もう死んだのか。気付かなかったぜ……独り言みたいで恥ずかしいな。
しかし本当滅茶苦茶にしやがって……おいお前ら何人残ってる? ひのふのみよ、まあこれだけいれば軍再編もそう難しくないか。
そしていい加減女神にも、そういうのもう辞めてくれって文句を言いに行かなければな……べ、別によりを戻そうとかそういうんじゃないけどなっ!
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