第3話
(何あの子……半端じゃない。学園にある的はこれでもかというくらい魔法耐性かけまくってるっていう的だよ……なんで壊れての……?)
そう思いながらエンブロックを見るとびっくりした様子ではあったが笑みを浮かべていた。私は何故だかその笑顔に寒気を感じ、魔法を打った少年の方に向き直した。
「あ〜あ〜やっちゃたよ」
一度も壊れたことのない的が壊れて誰もが呆気に取られて声が出なかったのに試験生の中から呆れたような声が聞こえた。
「何してんのフォール?私とて黒に抑えたのに……」
少年はびっくりした様子で声の出所を見た。
「アクア?!……やっぱりお前も来てたか」
少年は目を見開いた。
「ふふ、当たり前でしょ」
一方少女は嬉しそうにそう言う。
「よく俺だと気づいたな?」
「魔法からしてわかるでしょ」
「そっか」
「そうだよ」
少女はそう言った。
「で。フォールくん。これ壊しちゃったけどどうするのかな?… 」
その少女の雰囲気が急に変わり怒っているような顔になる。そして急に少年はしどろもどろになる。
「いや、その、なんていうか、手加減をミスった、です。すみません」
フォールと呼ばれている少年は下を向きながら申し訳なさそうに謝る。そんな姿にその少女は
「じゃあ、直しておいてね」
その言葉にフォールは目を見開いてアクアに目を向ける。
「は?」
「どうしたの?簡単、でしょ」
「いや、でも」
そう言った瞬間、じっとアクアがフォールを見る。
「はいやります」
そう言って少女はそさくさと受験生たちという人混みに入ってしまった。シーナは何も理解できずに少年をずっと見ていた。すると少年は的に急に向かって歩き出した。的の前にしゃがむと粉々になった粉々になった的を見て言った。
「やりすぎたかな……接着剤で直んねえかな」
シーナは心の中で「んなわけないでしょ」と突っ込んだ。まだ自分に突っ込める余裕があるのかと思うと変な気持ちになる。でも粉々、その言葉どおりというのに接着剤なんかで直るわけない。少年はそんなふうに見られていることを知らずに、少年は、
「じゃあ魔法で直しますかね…はぁ」
そう言うとフォールは手を粉々になった的に向ける。
「時間逆光リバース…」
少年がそういうと粉々になっていた的の一つ一つの欠片が少し浮いてくっついていく。ほんの数秒で粉々だった的が元の形に戻り少年はほっとしたようだった。
シーナは彼を前にして唖然した。今日で何回驚いたことだろう。学園の敷地があまりに広くて、壊れないはずの的が壊れ、そして…私の目標である「賢者」の魔法を使った……。
シーナが幼い頃から魔法を学んでいた理由、それは物語に出てくる賢者の話を見たからだ。賢者は強力な魔法で敵を蹴散らしたり、支援魔法で仲間を助けたりしていた。そんな賢者になりたい、そう思った。でも周りからはそんな者になれるわけない、と私の夢を否定された。そんなありえないはずの賢者の魔法を使った彼は言った何者…?
「時系列系統魔法を無詠唱で扱うとは流石ですなフォール殿。」
突然後ろから声がしてシーナは振り返った。
「校長…?!」
誰よりも早く声を上げたのは試験監督である先生だった。そして我に返ったかのように
「こ、この子!的を、的を壊したんですよ!」
「そりゃ当たり前だ。なんせ彼は魔法界序列2位だからな」
そう言って校長は大きな声で笑う。その言葉に周りの人達がざわつく。
「ちょっと校長?!それ絶対に言っちゃダメってこの前言ったばっかじゃん!」
「あれ?そうだったかフォール殿?いやぁすまんすまん、つい言ってしまった」
「言ってしまったって……影から密かにさまざまな脅威から人々を救い名も言わずに去ってしまう影の英雄、その正体は学園でスノーライフを過ごす正体を隠した1人の少年……っていうやつをやりたかったのにぃ!」
あ、魔法界序列2位ってこんな感じなんだ。シーナは光の速さ並みに察した。
「まぁまだいいですよ。まだ間に合うはず……」
間に合わないなー。もう間に合わないよ。たくさんの人に聞かれちゃってるもん。いや、まさか記憶を操作する魔法?!
「さてどうやれば間に合うかな?一人一人脅すか?」
いやないな。てか魔法界序列2位ほんとか?でも時空列系統魔法使ったからなぁ。てかよく見るとイケメンだなぁ。
「フォール?一瞬でバレちゃったね。」
「アクア?……どこからきたの?さっき人混みの中に……」
「ん?ずっといたよ?」
「え?……深く聞かないことにしよう」
「何で?」
「怖い」
「あっれれー?魔法界序列2位様でも恐怖って感じるんだー?」
「3位は黙ってろ、校長あとは頼みます」
そういうと逃げるようにして彼はどこかにいってしまった。シーナはまたなにか聞いてしまった気がしたが無視ししようと決心した。これが私がフォールとアクアと出会った日のことである。
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