超高難易度ダンジョン編

第81話 入場制限はいつか来るもの

 俺の家の事を知ってからというものの、遥が隔日くらいのスパンで訪れるようになった。

 もちろん目的は俺、ではなく軒下魔宮の方だが。

 おかげでつくしが負けじと付き合うようになったので、俺としては嬉しい誤算だ。


 その甲斐もあって一ヵ月後の今、遥は軒下魔宮において双剣使いレベル290に。つくしもレベル368まで上がって軒下でもまともに戦えるようになった。

 時々緒方君や澪奈部長達も参戦してくれて、晴れて全員がレベル200越えだ。

 コンも付き添ってくれればもっと上がったかもしれないんだけどな。


 そんな感じで熱い夏を越え、ようやく落ち着きを取り戻してきた。

 みんなが戦い慣れたおかげか気持ち的にも余裕ができたらしい。


 まぁ俺達は学生だから学業もあるし、戦ってばかりもいられないよな。

 ――という訳で。


 今日も真面目に授業を受け、中間テストに備える。

 実はつくしだけでなく遥も割と頭が悪かったので、ここを越えるまでは軒下周回を封印する事にした。

 ……俺は保護者なのか?


 とはいえ本番のダンジョンそのものは否応なしにやってくるものだ。

 ゆえに、放課後に部室へ訪れればおのずと現実から乖離せざるを得なくなる。


「うーっす」

「あ、みんな来たねぇ。明日ダンジョン行くからぁ~」

「ええーっ!? 唐突過ぎィ!」

「つまり初回攻略という事かしら?」

「ううん。なんでも今朝発生してぇさっき急遽攻略開始したんだけどぉ、初回攻略しくじったらしいんよ~」


 それにしたって、部室に着いた途端にこれは笑えない。

 あまりに唐突で緒方君が動揺してしまっているし。


 俺も正直、勉強時間が足りなくて動揺している!

 主につくしと遥の復習時間が足りないんだよ!

 空気を読めダンジョン!


「それで場所はどこに?」

「東北、岩手だって」

「え……岩手っていうとトップスナンバースリーの『東北アライアンセス』がいるんじゃ。三木塔みきとう剛司つよしさんも行ってるんじゃないんすか?」

「そぉ。彼等も出張ったみたいよぉ」


 しかも彼らが攻略に参加していたなんて。

 剛司さんはあの遥との攻略対決の時にも世話になったな。

 あれ以来、よくトップス案件でも絡んで仲良くやらせてもらっていたんだが。


「ただ、ミキティは出てないって」

「なんで!?」

「……入場制限、くらったんだってさ」

「「「え……」」」


 なんだって、入場制限!?

 つまり剛司さんはもうダンジョン攻略ができない!?


 ……たしかに前会った時、剛司さんはもうすぐ二〇歳になるって言っていた。

 だけど誕生日は十二月だというし、まだ制限くらうには早過ぎないか!?


「個人差があるんよねぇ、入場制限って」

「え、そうなの!?」

「そそぉ、オトナになる速さなんて人によって違うし。実際に二一歳になっても入れた人がいたくらいだしさぁ。基準はわからないけどねぇ」

「そうだったのか……なんてこった。じゃあ剛司さんは引退確実なんだな」

「まぁいずれ来る事ですから仕方ないですわね」


 なるほど、主力がいなくなったから負けたか。

 しかも突然の事だし、調子が落ちるのも仕方ないよな。

 とはいえ東北チームは結構な粒ぞろいだから、それでも負けるなんてとても考えられないのだけど。


 もしかして他に何か負ける要素があるのか?

 以前やったダンジョンミミックみたいな特殊なギミックとか。


「ところで澪奈部長、今回のダンジョンはトップス案件になるようなものなんです?」

「もち。しかもちと結構ヤバめだよぉ。ミキティがいるいない以前の問題カモ」

「ひええ!? あの人けっこー強かったのにー!?」

「単純に敵の強さが段違いに強いらしいん。ダンジョン形式は今までと変わらない連層攻略式みたいなんだけどねぇ」

「それって一体どれくらいの――」

「三層」

「え?」

「東北チームありで三層までしか到達できなかったんだってさぁ」


 なっ!?

 曲がりなりにもトップスがいて、たった三層で敗退!?

 ボスまで到達したならまだしも、ダンジョンコアさえ見る事無く!?


「その詳細はこれから動画見て知ろぉ。あーしらもまだ見てねーし」


 澪奈部長も珍しく真面目な雰囲気を醸し出している。

 それほど切羽詰まった状況なのかもしれない。


 なら東北チームを途中退場させるほどの難易度を見させてもらうとしようか。

 場合によっては、俺が元より考えていた計画を実行に移す必要性があるかもしれないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る