第6話 頼っていいのかよくわからないダンジョン部

 どうやらつくしや澪奈部長はずっと前からダンジョンに通っていたらしい。

 中学から、下手すると小学生からって事もあり得るから驚きだ。


 それでも戦えるようになるのはすごいと思う。

 プロチームというのはそれほど徹底的に鍛え上げるんだろうな。


「ま、あーしはコーチとの不仲でプロチーム辞めちゃったんだけどねぇ。それで宝春学園にダンジョン部作ったってワケ」

「じゃあつくしもその折に?」

「なはは……あたしは去年頭に戦力外通告されちった!」

「それ、頼っていいのか……?」


 ……頼り切るのは少し怖いかもしれない。

 初めての俺よりはずっとマシだろうけど。


「ほらぁ止まってないで歩くよぉ、他のチームも来てるみたいだからさぁ~?」

「他のチームもいるんだ」

「地方くくりで対応する事になってっからねぇ。多いと百人とかになったりするよぉ」


 それでも百人か。

 多いけど、規模としてはそこまでではない気がする。

 それ以上の人数がいらないのか、それとも攻略者のなり手がいないのか。


 そんな事を考えつつ、澪奈部長に付いて集合場所へと歩く。


 すると場にはもう多くの参加者らしき人が集まっていた。

 制服を着ている人もいれば、私服姿の人も。

 他にも運営らしいスーツ姿の人もいるし、奥には軍隊の影も見える。


 そして耳をすませば「タターン!」という音が何度も上がったりしていて。


「魔物は時々外に出てきちゃうからね、自衛隊員が倒してくれるんだー」

「って事はこれ、銃声なのか」


 ここは想像以上に物騒な場所らしい。

 とはいえ、みんなもうそんな音に見向きもしていないが。


「やあ早矢川さん、今日は参加できる事になったんだね」

「やーくすのきっち、おひさー」


 おや、なんか男子が話し掛けてきたぞ?

 どうやら澪奈部長と知り合いらしく、仲良さそうに話しかけている。


 しかも今度は俺の方に視線を向けてきた。


「おや、見ない子がいるね。もしかして新人さんかい?」

「は、はい、間宮彼方っていいます」

「最初は危ないからね、みんなの後ろから戦いの仕方を見て学ぶといいよ」

「はい、が、がんばります」


 ただ割と触りのいい人だ。

 こんな助言をしてくれて、にこりと笑って去っていった。


「楠っちはねー、あーし達が前にいたプロチーム所属のエースプレイヤーなんよ。一応は器量もいいし、基本優しい奴だよ。実力もあるから、多分今回も彼のチームがトップなんじゃないかなー」

「プレイヤー? トップ?」

「プレイヤーっていうのはダンジョン攻略者の俗称だよ! あとね、プレイヤーやチームにはランキングがあって、活躍度で報酬額とかも変わるんだー!」

「そのランキングでトップなのがあの人なのか」

「クフフ、あくまで新北関東エリアで、だけどね……」


 なるほど、だからあれだけ余裕があるのか。

 みんな緊張しているみたいだけど、あの人だけ妙な自信を感じられたから。


 自分だけは絶対に死なない、って自信が。


「澪奈パイセンも元エースじゃないですかー!」

「やめてよつくしぃ、もう競うのは勘弁だしぃ!」

「フフ、チームの攻略貢献度がランキングに影響する……。だから人を助けるより自分達だけで戦った方がより深みに立てるのよ……!」

「それが四人必須の理由?」

「安全上の問題もあるけどぉ、今はそれが主だねぇ~」


 あの楠って人も実力と成績があるから他人を気遣える。

 この場の誰にも負けないっていう自信もあるからだろうな。


 初見はいい人でも、それを考えると何だか心証が悪い。

 つくしも後輩だろうに、そっちには視線すら向けなかったし。

 澪奈部長が適当にあしらってたように見えたのはさしずめ、これのせいかな?


「あ、ほら集合かかってる! 行こうみんな!」


 そう悩んでいたら澪奈部長が何かに気付き、俺達を叩いて促してくれた。

 どうやら最初にお偉いさんの挨拶があるらしい。


 すると案の定、知らないおっさんが仮設の壇に立って長々としゃべり始めた。

 聞くと『防衛庁 ダンジョン攻略委員会』の役員らしいが。


 でもこんなどうでもいい長話をする余裕なんてあるのだろうか。

 面倒過ぎて、ダンジョンより先にあの壇上を攻略してやりたいくらいだよ。

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