第5話 ダンジョンは大人数で挑むもの
母さんだけでなく父さんにもダンジョン部への参加を許してもらえた。
おかげで心置きなくダンジョン部の正式部員として活動できそうだ。
一体どういう所なんだろうな、ダンジョン!
――そんな想いを馳せつつ布団に入ったら、気付けばもう翌日。
俺は心を躍らせながら準備を整え、コンに見送られて家を出る。
そうして速足で学校へと辿り着いたのだが。
「おっ、きたきた彼方っち~!」
「彼方ーおっはよー!」
「おはよう同志……!」
「お、おはようございます……!」
俺が着くと、すでに待っていた虹岡さん達が手を振って迎えてくれた。
人が待ってくれているのって初めての事でなんだか嬉しい。
それに下の名前で呼んでくれているのがもう……!
「来たね、間宮彼方君」
それとあと一人、知らない大人の女性がいた。
スーツをラフに着こなしている、少し毛先が跳ねて荒々しい長髪の人だ。
「ダンジョン部顧問でサポーターもやっている
「うす、よろしくおねがいします」
「それで間宮君、親御さんの承諾は得られたか?」
「あ、はい。これどうぞ」
その紅先生から催促されたので、先日の書類をカバンから取り出して渡す。
ハンコは母さんの血判だけど、これで良かったのだろうか?
あ、すぐ足元の鞄に仕舞ってしまったし平気らしい。
「……普通こういうのには親御さんは難色示すもんなんだけどねぇ」
「うち放任主義ですから。やる気がある場合は何でも許してくれるんです」
「放任過ぎるだろう。こうもすんなり持って来たのはそこの厨二病――
邪悪――もとい厨二病先輩、雰囲気と違って名前がすごい可愛い!
本人から自己紹介されなかったのってもしかしてそういう理由!?
……ま、まぁ本人がフードをギューって下げて恥ずかしがってるから触れないでおこう。
「さてさっそくだけどぉ、これからいきなり今年度初ダンジョン攻略いきまーっす♪」
「えっ!? じゃあ今日の授業は!?」
「えへへ、それは大丈夫なの! 実はダンジョン参加する日はねー授業とか免除されるし、後で補習も任意でうけられるんだよー!」
「おまけに成績にも少しプラスされるしぃ、将来的にも就職に有利になったりぃ! 最高っしょ!」
「リスクさえ目を瞑ればいい事だらけなんだな」
どうやらみんなもう準備は万端らしい。
紅先生が後ろに控えた大型車を指さしてくれている。
「荷物を後ろに積んでくれ。もう車に乗っていいぞ」
なので指示された通り荷物を積み、車に乗り込む。
それでワイワイと騒がしい中、遂に車が目的地へと向けて走り始めた。
こうして俺達が向かったのは茨城県東部。
埼玉にある宝春学園からおよそ二時間ほどで着く場所だった。
道中は少し退屈だったかな。
みんなが話すのは普通の話題で、全然わからなくて入り込めなかったし。
とはいえ気遣ってくれてはいた。
例えば「呼ぶ時は下の名前でいいよー」って。
なんだかちょっと恥ずかしいけど、嬉しくもあるから好意に甘えようと思う。
「みんなー着いたぞ」
でも辿り着けば、途端に緊張がみんなを縛ったかのようになった。
笑いもどこか頑なになったし、そもそも話がピタッと止まってしまったから。
それだけで来る時が来たんだなって思い知らさせてくれる。
そんな中で車から降りたのだけど。
「彼方!」
「な、なんだつくし?」
「えっとね、彼方は初めてだからあたし達の後ろに隠れてていいよ!」
「えっ……?」
いきなりつくしが嬉しそうにピョンピョン跳ねながらこんな事を言ってきた。
何を言ってるんだ、つくしもダンジョン部に入ったばかりじゃないのか?
「あぁ~車の中で色々教えとけばよかったか~。つくしはね、ダンジョン経験者なのよぉ。元々プロチームの一員だったんよ」
「プロチーム……?」
「そぉ。サッカーのジュニアチームみたいな感じでぇ、プロの傭兵が戦い方を教えてくれるダンジョン攻略クラブがあんのぉ。あーしもつくしも前は新北関東プロチーム所属しててさぁ~」
なるほど、だからつくしは澪奈部長と知り合いだったんだな。
それで経験も豊富だから守ってくれるって訳か。ありがたい。
でも、という事は二人とも中学生くらいにはもうダンジョンに入っていた?
とするともう倫理どころか教育観念も怪しいな、今の日本って
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