実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!? だが気付いた時にはもう遅かった!
第7話 意外にメジャーだったダンジョン攻略
第7話 意外にメジャーだったダンジョン攻略
「プレイヤーの皆さんは順次、仮設ルームで着替えを始めてください!」
お偉いさんの話が終わると、案内の人がこんな声を上げていた。
え、着替えが必要だったのか?
俺、何も持って来てないんだけど?
「彼方にもスーツ用意してるからちょっと待ってて!」
「あ、うん」
どうやらスーツとやらは団体で用意するものらしい。助かった。
つくしがさっそく紅先生の方へと走っていく。
「あーダンジョンねぇ、持ち込めるのは衣類含めて一つだけなんよぉ」
「ふ、服も一枚だけ!?」
「そそぉ。だからねー専用のスーツがあるってワケ。ほら、見てみー」
それで澪奈部長に言われて仮設ルームの入口を見ると、すでに着替えた楠達の姿が。
上下一体のピッチリな競泳水着みたいな服を着ている。
な、なるほど、これでコンプライアンスを守るんだな!
「だからうっかり下着とか着たまま着用すると大変な事になるから注意ねぇ」
「クフフ、紅先生って実は初期経験者なんだけど、最初うっかりやらかして大変な事になったらしいわ……!」
「はいはいモモっち、人様の深淵を暴露しないでねぇ~」
ああ、紅先生ってそういう経緯があったから顧問なんだな。
というか大変な事って一体どうなったのかとても興味がある。予想はつくけど。
そう想像を巡らせていたら澪奈部長に「イーッ」と頬をつねられてしまった。
とても痛い。
この人は読心術でも会得しているのか!?
……と、とにかくだ! スーツを受け取って仮設ルームで着替えよう。
それで実際に着てみたら、服が体に貼り付くような感覚を覚えた。
体のラインもくっきり出るし、なんだかちょっと恥ずかしいぞ!
「お、きたきた、彼方ー!」
「あ、ああ……(なんだこれ、天国か!?)」
けど意を決して外に出たら、予想通りのすばらしい光景が待っていた。
つくし達のスーツ姿があまりに眩しくて、とてもじゃないが直視できそうにない。
守れられてないよコンプライアンス!
「それにしても、みんな派手な柄とかネーム入ってるけど、うちは地味に黒一色なんだなぁ。宝春学園の刺繍は入ってるけども」
「柄入れると予算足りないしねぇ。スーツ代は提供予算決まってっからぁ、後は宣伝も兼ねて団体側が補填するんよぉ~」
「宣伝……? ダンジョンの中に籠るのに?」
なんだ宣伝って? そんなものが必要なのか?
ここからダンジョンに赴く間しか露出しないのに……?
「実はさ、中の光景は逐一あそこに映るんだよね!」
するとつくしがダンジョンと思われる岩塊のような建造物を指差す。
それでふと注視してみると、その周囲にひし形の水晶がいくつも並んでいるのが見えた。
な、なんだあれ、浮いているぞ!? おまけに中の光景が映るだって!?
一体どういう仕組みなんだ……?
「だからダンジョン攻略委員会はあれから中のチームの活躍を見て査定するってワケ。他にもほら、あそこにマスコミも来てるでしょ」
「あ、本当だ。カメラ持ってる人がいる」
「他にもビューチューバーも来たりするよ!」
「委員会に認定を受けた人がこうやって中の映像を逐一映して放送してんだよねー。あーしらの活躍もお茶の間で流れるよぉ」
驚いた。思った以上にメジャーなんだな、ダンジョン攻略って。
ただ、それと同時に違和感も感じるけど。
人が死ぬかもしれない場面をお茶の間に放送って、それおかしくないか……?
「部長、人の生き死にを一般放送って控えめに言って間違ってません?」
「そうねーもう倫理とか関係無いよねー。でもさ、もうこうなっちゃったんだよ。世間が慣れちゃったからやるしかないんよ。理屈こねたってさ、もう止めらんないから」
……きっと世間はもうわかってるんだろうな。
苦情言ったって、ダンジョンが勝手に消える訳ないんだって。
澪奈部長もそうわかっているからか、答えている時の顔がとても真剣だった。
それでもやるしかないんだって割り切っているんだろう。
「……すんません、野暮な事聞いちゃって」
「いいよいいよー、最初だしねぇ~」
「うす、がんばるっす」
「ま、活躍すればビューチューブ収益化の報酬も出るしぃ! 生放送なら同接数次第で国からの報奨金も上がりまーす!」
「げ、現金だなぁ」
「あーしはそれが目的でプレイヤーやってっし!」
「あたしもー!」
「フフフ、私もよ……!」
ま、みんなのこの思い切りは見ていて清々しい。
だてに場数は踏んでないって事なんだろうな。
「そんな訳で張り切って行こうかぁ~!」
「「「おおー!」」」
だからもう余計な事を考えるのはよそう。
もうすぐ突入が始まりそうだから、目の前の事に集中するんだ。
子どもだけしか入れなくとも、ここは死地。
油断をすれば死ぬかもしれないのだから。
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