第2話 畏まりました、ご主人様

//SE 玄関のチャイムが鳴る音


「こんばんは。『眠れぬ夜の寝かしつけサービス』から参りました」//インターフォンに向かってに明るく


//SE 玄関ドアが開く音

//スーツの女性が入ってくる


「二度目のご利用、ありがとうございます。失礼致します」//口調はやわらかいが、仕事モードで


//SE 玄関ドアが閉まる音


「連日のご指名ありがとうございます。早速ですが、シチュエーションは『主人とメイド』でよろしかったでしょうか?」


「では、私のことは『おい』、もしくは『メイド』とお呼びくださいね。お客様は引き続きダイヤ様でよろしいでしょうか? 変更することも出来ますよ」


「畏まりました。では、『ダイヤ様』『ご主人様』『坊っちゃん』などの呼び方がございますが、ご希望のものはございますか?」


「『坊っちゃん』ですね。ちなみに『坊っちゃん』でしたら、オプションとして赤ちゃんプレイもございますが、どう致しますか? はい、ご希望ではない……と」


//SE 書類に書き込む音


「オプションのご検討もありがとうございます。『スキンシップ』ですね。それでは」


//SE ジッパーを開け、カバンからメイド服を取り出す音

//シチュエーションプレイに入る。年上ではあるが、初々しい表現で


「初めまして、旦那様。今日からこのお屋敷で働くことになりましたメイドでございます。あの……メイド服に着替えたいのですが、着替える場所はございますでしょうか?」


//SE 寝室の引き戸を開ける音


「あっ! 旦那様のお手をわずらわせてしまい、申し訳ございません! ありがとうございます」


「それでは着替えて参りますが……絶対、覗かないでくださいませね」//振り返って頬を染めながら


//ひとり寝室に入る

//SE 寝室の引き戸を閉める音

//SE 袖を通したり、ボタンを留めたり、着替える衣擦れの音


「お待たせ致しました」


//SE 寝室の引き戸を開ける音

//SE 寝室の引き戸を閉める音

//メイド服に着替えている


「あの……こちらのメイド服、ミニスカートなのですね。ストッキングはガーターベルトで……少し恥ずかしいのですが、大丈夫でしょうか?」//もじもじして


「そんな、『似合ってる』だなんて、もったいないお言葉でございます!」//恐縮して


「今までのお屋敷では『覗かないでくださいね』と申し上げると、殆どの方が覗かれたのですが……旦那様は、大変紳士でいらっしゃるのですね」//嬉しそうに


「旦那様のことは、なんとお呼びすればよろしいでしょうか? 『坊っちゃん』ですね。畏まりました。それではわたくし、本日からお世話になります。よろしくお願い致します、坊っちゃん」


「こんなにお若い旦那様にお仕えするのは久しぶりで……なんだか緊張してしまいます」//少し恥ずかしそうに


「まずはなにをすればよろしいでしょうか? 何なりとお申し付けくださいませ」


「マッサージ、ですね。畏まりました。ではヘッドマッサージからおこなって参りますので、椅子に座って頂けますか」


「……失礼致します」//距離が近くなる


//座った男性の後ろに立って、マッサージを始める

//SE 髪の毛がこすれる、ヘッドマッサージの音


「あの……力加減など、大丈夫でしょうか? それはようございました」//安堵して


「わたくし『力加減バカ子』などとニックネームをつけられまして、シャンパングラスを持てば割り、缶詰を開けようとすれば握りつぶし、つまずきそうになった旦那様を支えようとすれば腕を骨折させてしまい……何処のお屋敷でも追い出されてしまい、こちらで十八軒目なのでございます」//凹んだ口調で


//SE ヘッドマッサージの音がやむ


「えっ? もうよろしいのですか? わたくし、マッサージは得意な方なのですが……」


「あ……分かりました!」//閃く


「今は、ヘッドマッサージのご気分ではないのですね。では、肩をお揉みさせて頂きます。わたくし、肩揉みが一番得意でございまして!」


//SE 肩から二の腕まで撫でさする音、両肩を数回

//SE 肩から二の腕まで撫でさする音、右だけを数回

//SE 肩から二の腕まで撫でさする音、左だけを数回

//SE 再び肩から二の腕まで撫でさする音、両肩を数回


「如何でしょうか? 気持ちようございますか? よかったです」//嬉しそうに


//SE 両手の平を合わせ、トントンと右肩を優しく数回叩き

//SE 両手の平を合わせ、トントンと左肩を優しく数回叩き


「えっ? 懐かしい感じがする……?」//驚き、少し嬉しそうに


「それは……」//迷い


「その……わたくしが申し上げたことは、ご隠居なされている先代様には、どうか内緒にしてくださいませね」//左の耳元で、小声で


「実はわたくし……九つのときからご奉公に出されまして。一軒目が、こちらのお屋敷でございました。坊っちゃんとは三つ違いでまだ六つでございましたから、わたくしのことなど覚えていらっしゃらないと思い……大変失礼致しました」


「あの頃は坊っちゃん付きのメイドとして可愛がって頂き、ありがとうございました。まだ子どものわたくしと、色んなことをして遊んで頂きましたね。うふふ、そう、マッサージごっこもしておりましたね」//楽しそうに


「わたくしその頃から『力加減バカ子』でございまして、坊っちゃんの肩をお揉みした際に脱臼させてしまい、お暇を頂くことになりました。あのときは謝罪する間もなくお屋敷を出されてしまいましたので……坊っちゃん、あのときは本当に、申し訳ございませんでした!」//頭を下げる


「許してくださるのですか? なんてお優しい……。それに、立派な殿方におなりになって……」//嬉しさに、少し涙ぐんで


「え……マッサージごっこ、ですか? とんでもない、もう分別はついております。坊っちゃんにマッサージなどして頂く訳には参りません!」//慌てて


「えっ、ご命令、でございますか? でも……」//戸惑う


「はあ、畏まりました」//根負けして微笑み


「そこまで仰るなら、坊っちゃんのご命令に従わない訳には参りません。では、失礼して着席させて頂きますね」


//距離が近くなる

//メイドの後ろに立ってマッサージをする坊っちゃん


「あの……優しく、してくださいませね」//もじもじと


//SE 肩から二の腕まで撫でさする音、両肩を何回も


「あ……ん」//喘ぎに近く、悩ましい声で


「殿方の指って……硬いのですね。凄く硬くって、とっても……ぁん、気持ちようございます……」//意味深に


「あっ、あっ……坊っちゃん……わたくし実は、坊っちゃんが初恋でございました。お下げ髪をバッサリ切って、眼鏡をかけてこちらのお屋敷に戻って参りましたのは……んっ、坊っちゃんともう一度……あっ、ん、もっと下……あぁん、そこ、もっとぉっ……坊っちゃん、わたくし、身も心も坊っちゃんに捧げてお仕えし……」//下品にならない程度の喘ぎ声で


//SE 言葉を遮ってピピピ、というタイマー音

//SE すぐにピ、と止める音

//椅子から立ち上がり、距離が開く


「ありがとうございました」//仕事モードに戻る。柔らかい口調だが、色っぽさは全くなく


「失礼してメイド服、脱がせて頂きますね」


//SE ボタンを外しメイド服を脱ぐ衣擦れの音


「あ、ご心配なく。スーツの上から着用しておりまして、着替えるくだりは演出でございます」


「オプションの『スキンシップ』は如何でしたか? え? やっぱり眠れない? それはお仕事冥利に尽きるお言葉ですね。ご利用規約により、やはりクレームとして処理することは出来かねますが」


「それでは改めまして。ダイヤ様、『眠れる夜の寝かしつけサービス』二度目のご利用、ありがとうございました」


「気に入って頂けましたら、色々なシチュエーションを試してみるのもよろしいかと思います。オプションも」


「ぜひまた、ご指名くださいね……んふっ」//少しセクシーに


//SE 玄関ドアの開く音


「それでは、失礼致します」//仕事モードで


「それでは坊っちゃん、またお会いしましょう、ねっ」//ドアが閉まる直前、シチュエーションプレイの口調で色っぽく


//SE 玄関ドアの閉まる音

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