ニ十首連 ‐ あわせ歌
椹木 游
あわせ歌
『散り花や 落ち逝く間際の せつなさえ』 私の時は ここで
紙切れの なんてことない 落書きに 目一杯の 後悔
道のりの 何処か覗きし その先に 影を探すと いと愛しきの
「また今度」届いてくれと 君にだけ この心の底 君にだけだと
呼び声や 子供の遊びの 声でさえ 思い違いに 浮足静め
蝉の声 溶ける真夏と 静まりに 髪の
やんちゃして 濡れる髪の毛 手を伸ばし 拭いてあげると 鼻を伸ばして
息を当て 温める手を
さよならと 冬至が告げる 街灯の 言いたいことは 喉で
俗世さく 落花の舞の 下で舞う
寝て起きて 繰り返す日に ふと思う 私の時間は 止まったままだと
新天地 住処を求めて 歩くじぶんの この細道を 行けるは独り
箱の中 褪せたはんかち 取り出して 時を吸い込み 後悔を吐く
立ち食いの 時計見やると かき込んで バスに乗るなり 後部座席へ
『また今度』 もう一度だけ 願わくば いつもの角を 曲がった所で
蝉の声 机上の筆と 静まりに 紙の香りが いやに
もう幾つ 濡れる髪の毛 拭きながら 雨の降る空 独り見上げて
きっともう 待ってはないと 『また今度』 並び歩いて 時を進めて
春化粧 幼さ置いて 『変わったね』
花散れど 香りは褪せず 今更の 『離れ難きと 想ひあわせて』
ニ十首連 ‐ あわせ歌 椹木 游 @sawaragi_yu
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