第7話
彼女の好きが、私の好きと違うと分かったのは、彼女がアメリカに行って一年が経過してからのことだった。
こんなことまで私はトロいのかと、さすがにこの時ばかりは自己嫌悪に陥った。相談する相手もいないので、元担任の先生に電話しようかと思ったけど、どう説明すればいいか分からなかったのでやっぱりしないことにした。
「穴があったら入りたいとはこのことね」
「何がっすか?」
「スコップはどこで購入できるかしら」
「意味が分からないっすけど、止めておいたほうがいいっすよ」
バイトの後輩くんは、優しいけれど冷たい。私に声をかけてくれる数少ない人間だけど、あまり話を聞いてはくれない。
「……恋愛って難しいわね」
「はぁ!?」
「どうかしたかしら」
「いや、え? 恋愛? 先輩が?」
「おかしいかしら」
「…………ひとつ、聞いてもいいっすか」
「ええ」
「一ヶ月前に俺が告白したのは覚えてますか?」
「何をかしら。もしかして何かミスでもしていたの?」
「二度と恋愛を語らないでください」
「どうして」
やっぱり。彼は優しいけれど冷たい。
彼女の好きが、恋愛の好きだと思っていた。
好きだと言われて、すとんと心が落ちた。ああ、私は彼女が好きなんだって。私も彼女が好きなんだって。
嬉しくて。
アメリカに行ってしまう彼女が待っていてと言ってくれたことが嬉しくて。
「でも、違ったわ。あれは、友達としての好きなのね」
「だから何がっすか」
「分かったの。これを読んだおかげで」
「はい?」
「この少女漫画を!」
「二度と恋愛を語らないでください」
「だからどうして」
それでも、勘違いに縋りたかったから。
彼女が待っていてほしいと言ってくれたから。
同窓会の連絡を受けたとき、きっと答えが分かると。
まあ、それは薬指の指輪という形になったわけで。
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