第5話
「受! かったー!!」
「そう」
会いに来てくれる。
そう思って学校で待っていたわけじゃない。家に居ても、居心地が悪いから来る必要のない学校で時間を潰しているだけだった。
「おめでとう」
「さすがに最後はしんどかったよぉ……もう二度と勉強したくない」
「お疲れ様でした」
結局。
彼女は親と学年主任の先生の言う通りに東京にある国立大学を受験した。それ以外に有名私立にも複数受かっていたと聞いていたので、今年の我が母校の合格実績は近年稀にみるものとなるだろう。
私はといえば、名前を伝えても知っている人のほうが少ないような大学になんとか合格することができた。喜んでくれたのは、目の前の彼女と担任の先生だけだ。
「ふふ」
「嬉しそうね」
「親がさ。夢を見るのは大学に受かってからにしろって言ってたんだよね」
「そう」
「あたしさ。大学に受かったじゃん」
「そうね」
「じゃあ、夢見てもいいよね」
「そうね」
「聞いてる?」
「返事してるじゃない」
「……ありがとう」
「なにがかしら」
「べっつにー」
そう言って笑う彼女の顔が、なんだかとても……。
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