第81話 「日程とお風呂場」
「……そうですか」
今日の学校一連の出来事を話すと神妙そうな表情の花咲凛さん。
「……どうかした?」
「いえ……たしか秋月様はキョウ様の許嫁候補に選定される際に、男性、それに恋愛への拒否感を示したことからメンターが陰ながらサポートしていたと思うんです」
「え、何それ初耳」
そんなメンターがいたなんて……
でも彼女の近くにそんな存在はいなかった気が。
「ええこれは本人たちにも伝えておりませんから。あくまで許嫁制度を円滑に進めるために試験的に行ったものですが、そうですかこの結果を見るにすべてが上手くはいかなかったんですね」
確かにそのメンターにしてみれば失敗だろう。
なんせ……
「俺の結婚は破談っていう形になっちゃうから?」
「そうです、恋愛をするっていう意味では女性の恋人が出来ている点で改善できたようですが」
「でもいいんじゃないかな?二人が幸せならさ、望まぬ結婚なんていつの時代もいいもんじゃないよ」
「……いつの時代もってキョウ様まだ20年も生きてませんけどね」
不思議な発言を聞いた、と少し目を丸くする花咲凛さん。
「歴史とかドラマとかではよくあるじゃん?」
前世ではそういうドラマ結構見たんだけどなぁ……
「ですか……でも人生なんて望んだとおりに行かないもんですからね、その中でどうやって精一杯生きていくか、みたいなのも大事な気もしますが」
花咲凛さんも過去に何かあったんだろうか、あったんだろうな。なきゃNAZ機関にいるはずもないから。
だけど俺はいまだにそれに触れられてはいない。
「あ、勘違いしないでほしいのですがわたくしは今大変満足ですからね? ただ秋月様はそういうことで悩めてしかも選ぶことができて幸せだな、と。まぁ私としてはキョウ様を捨てたのはかなり遺憾ではございますが」
「まだだよ、捨てられ予定なだけで」
なんか言ってて悲しくなってきた。
「私ならそんなこと絶対にしないのに……まぁ過去の許嫁のことは置いておくことにしましょう、今は未来の話です」
「花咲凛さんにそう言ってもらえてうれしいよ」
というか今さらっと花咲凛さんの中で秋月さんが過去の許嫁になったな。
「それで未来の話って?」
どういうこっちゃ?
「前にNAZ機関の椎名さんが自宅に来てお話されたこと覚えていますよね?」
「あぁ、三者面談?」
「さようでございます。あれの日程が決定いたしました」
「あー決まったんだ」
決まっちゃったのかぁぁ。
どうしても気が重いんだよなぁ。
「嬉しくなさそうですね、キョウ様」
「会いたくない、とかではないんだけどね? でもさただでさえ許嫁である宝生さん秋月さん橘さんってさ、インパクト強かったじゃん。 だからそんな3人の親御さんっていうとよりインパクト強いんじゃないのかなっていう先入観で不安で」
「……確かに、この親にしてこの子供あり、みたいなパターンも結構あるって言いますからねぇ」
「そのパターンでいくと、全員俺のこと嫌いなところから始まるんですけど」
「そうなりますねぇ、しかも宝生さんの家に限っては娘である紗耶香さんを通さずに勝手にやり取りして、力を貸してって半ば脅しみたいな形で話してましたからねぇ……小生意気な小僧が、くらい思われていても不思議ではないですね」
「あー」
こればっかりは全部やったことだから何も言い訳できない。
道理としてはこうするしかなかったとはいえ、論理と感情はまた別の話。
感情面で不快感を持たれてもしょうがないよね。
「でも安心してください、キョウ様」
「何を?」
「そんな三者面談ですが、3回もやらなくてよくなりましたよ」
「そりゃ秋月さんは婚約破棄みたいなもんだからね!やらなくていいに決まってるよ、行ったら行ったで婚約破棄をされたことを言いに行くみたいなカオスの状況が生まれちゃうよ!」
「物事はプラスに考えていきましょう、キョウ様の胃を痛くする出来事は2回しかないです!それに最初は嫌いでもなんだかんだ皆様がキョウ様のことをお認めになってるでしょう?」
「まぁ最終的には好かれてはなくても人としては見てもらえるようになったかな?」
次もどうなるかはわからないけど。
「……まぁ回数が減るということはキョウ様が不安に呷られて、そのストレスを私に発散する機会も減ってはしまったんですが、ああいう強引なのもたまにはいいんですけどね」
「なんかその言い方だとおれがストレス発散のためだけに花咲凛さんとしてるみたいじゃない?違うからね?」
「真意はキョウ様しかわからないのでおいておくとして……」
置いておかれた。彼女の中で俺はどんな鬼畜なんだ。
「三者面談の日程でございますが、本来の予定、秋月元許嫁様がいらっしゃったときには、宝生家、秋月家、橘家、の順番で三者面談が行われる予定となっておりました。ただ秋月様が抜けられるので、宝生家、橘家、の順番になるかとおもいますね、まだ正式ではないですけどね」
秋月さんがいつ親に言うかで許嫁破棄の時も決まるんだろうなぁ。
「その具体的な日程は決まってるの?」
「はい、まずGWに許嫁の皆様で宝生家の施設に行かれます。そこで仲を深めあった後に、そのまままずは宝生家にご挨拶いただきます。その2週後に秋月家、さらに2週後に橘家というスケジュールでございましたね」
「……じゃあ秋月さんの所が空白になって前倒されるかそのままか、それは要調整ってことだよね」
「そうなります。また秋月様が許嫁から抜けられる、となりますとまた新たな3人目の許嫁候補が今後追加されると予想されますので、そちらについても別途調整が必要ですね」
「別の女性か……」
そっかそうなるのか、欠員が出たら再度補充、みたいな。
まるで女性はいくらでも替えがいる、みたいな感じで複雑な気分になる。
「人をなんだと思っているんだ、という風にキョウ様が思われるのも理解はできます。ただ実際問題男性が少なく、希少であるのもこれまた事実。さらに男としての機能が優秀な男性に対して女性を宛がわない、っていうのは政府としては怠慢に見えるのですよ、今の日本にはそんな人を遊ばせているほどの余裕はないですから」
道理としてはそうなるよね、ただでさえ俺は特別待遇なわけだから。
「ただキョウ様の場合搾精を毎度すごい量出されているのでお勤めとしては十分なのでそこは気負ったりしないで大丈夫ですよ、なんならお勤め以上にいただいていますから」
そろり、と花咲凛さんが胸板を優しくなでる。
可憐な指がなんともまぁ欲情を誘ってくる。
「キョウ様、今日は秋月さんの許嫁破棄とかなどいろいろあってお疲れでしょう?もうお湯の方は張ってありますのでごゆるりとお寛ぎください」
ただ花咲凛さんの手はすぐに俺の胸を離れて、トンと背中を押し、浴室へと促してくる。
「……じゃあそうしようかな」
不完全燃焼感はあるけれどでも確かに花咲凛さんの言う通り仮眠したとはいえ、身体もそうだけど心もちょっと疲れてる。
服を脱ぎ、浴室へ。お風呂場にはたっぷりのお湯が張ってあり、入浴剤か何かを入れたのか白濁としていてヒノキの香りもして心が落ち着いていく。
お風呂に入る前に、シャワーで頭を洗う。ついで身体を洗おうとすると、
「お体お流ししますね?」
気づいたら花咲凛さんが後ろにいた。いつの間にか入ってきたらしい。
鏡越しに見える姿はバスタオルを体に巻いていて、それがまたすごく煽情的だ。
「……お願いします」
「はい」
スポンジで背中を洗ってくれるけど、適度な力加減でめちゃくちゃ気持ちい。
やっぱり自分でやるよりも人にやられる方が気持ち良かったりするよね。自分の手が届かないところに届く感じ。
「後ろは終わりました、じゃあ前も失礼して……あらここは凝っていますね?」
花咲凛さんの手が前に伸びて、俺のものをさわさわ、としていた。
ただでさえ花咲凛さんのバスタオル姿を見ているんだ、そりゃこうなるよね。ならなかったら男じゃない。
「これはマッサージも一緒にやらないとダメみたいですねぇ」
自分で体を背中に押し付けて誘ってきてるくせに白々しくもまぁ。
「じゃあキョウ様、横になってください」
言われたとおり横になれば、その間に花咲凛さんも自分の身体にボディソープをつけていく。
その豊満な肢体を俺の身体に滑らして洗っていく。
それはもう何度も入念に入念に。
「もう、どんどん凝っていきますね?」
そりゃ凝らない方が不自然なわけで。
「じゃあここも重点的に洗っていきますね?」
しなやかな花咲凛さんの手がするり、ブツと撫でてくる。
「んあっ」
「はいリラックス、リラックスですょぉ」
そういう花咲里さんの手は止まりはせず、なんならスピードは上がっていく。
「胸とかの方がいいですかね?」
そんなことを言い出し始める始末。
……ああ、今日もまた疲れが取れなさそうな、そんな予感がした。
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花咲凛さんと主人公を書いてるときが一番楽しい。
お風呂場の続きとか需要あるかな?教えてください!書くとしたらサポで?
わからぬ。
あ、次回は三者面談前の温泉会です、そこでほのぼのして次からは……て感じです!こうご期待!
ではいつもの謝辞を。
いつも感想ありがとうございます!
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