第66話 「2度目のはじめましてとお迎え」
「──で、あるからして」
壇上では秋月さんが……いや今は秋月先生か、秋月先生が授業をしてる。
秋月先生の授業は意外も意外、めっちゃわかりやすい。
家ではほとんど話さないからわからなかったが、授業は理路整然としていて要点をつかみやすい。しかも時折小ネタとかを挟んでくれるおかげで飽きずに聞ける。
いくつかの驚きはあったが、授業事態は何事もなく終わった。
やっぱり一度高校の授業を学んで、しかもそのうえで花咲凛さんに見てもらっているのもあって授業は今のところついていけそうな気がする。
ちなみにこのクラスのは俺を含めてちょうど30人。
内訳としては男子が3人、女子27人。
ということで昼休みになったわけなんだが……
「ねね武田君はどこから来たの?」
「好きな食べ物教えてー」
「好きな色はー?」
「趣味とかはなんなんですかー?」
もう速攻で女子に囲まれた。
髪を明るく染めた子とか、眼鏡をかけた子などいろんな子が集まってくれる。
そしてこれはみんなに言えることだがみんなきれいで、お顔が整っていてスタイルもよい。
周りいる子に限った話じゃなくてこのクラスの女子みんながそう、なんなら学校全体がそう。
さすがは政府がこの制度のために支援した学校って感じ、うんよきよき。
ちなみに輪の中にしれっと橘さんも苦笑しながら混ざっている。
……まぁ俺に助け船を出す様子はなさそうだけど。
「田舎、それも超が付くほどの田舎から来たんだよね。だからまだあんま都会になれてなくて。えーっと好きな食べ物は……やっぱラーメンとか、かな?それと好きな色は赤で趣味はえーっと趣味かぁうーん……読書?」
一つ一つ丁寧に答えてく。
そしたら……
「わ、本当に質問に答えてくれた!」
「会話してくれるなんて奇跡!」
「女の子と普通にしゃべってくれるんだね」
「読書って男性だと珍しい!知的なのはイメージにぴったりだけど」
より増えた、1答えたら倍増えるみたいなそんな感じ。
しかも答えただけで驚かれることに思わず驚く。
まぁそういうもんだとは聞いてたけど、やっぱ田舎とは違うなぁ。
田舎は良くも悪くも前世の日本みたいな感じで隔たりがあんまなかったから。
「さっきもミズリとも話してたけど本当なんだ、男性だけど雑談とかでも回答してくれてるんだね」
「そりゃするよー、話しかけてくれてるんだから」
逆にしない、というか無視することもあるのか……。
「いやまぁ女とはしゃべらない、っていう男の人も結構いるからさー」
「うんしゃべってくれてもあんまり話したくなさそうだったりねー」
あーこっちの世界の男性ってそうだよなぁ。
まぁここらへんは前世の俺の考え方だから、ね?一概に何とも言えない。
「まぁいろんな人もいるからねー」
「じゃあもっと聞いてもいい?」
「いいよー」
気軽にそう答えたら……
「こないだの騒動の件聞かせてよー」
「分かる分かる超気になるー」
「好きな女の子のタイプはー?やっぱり宝生さんみたいなタイプー?」
「許嫁って一人だけじゃダメなんてことはないよねー?」
「どんな髪型が好きなのー?」
もう怒涛のように質問が来た。
しかも食い気味に。
「おすすめのらーめん屋さんとかあるよー」
「宝生さんとはどんな感じなのー?」
もう止まらない止まらない。
さていったいどれから答えたらいいか。
と、ちょっと困ってると……
「こらこらあんたらー、一気に質問しすぎだよ。武田君が困ってるじゃんかー、ちゃんと会話をしな会話を」
呆れたような口調で間に入ってくれた。
横を見れば大柄な女性。
俺よりもちょっと小さいくらいかな?
金髪をボーイッシュな感じでセンターパートにわけている。
「セツナの言う通りだよー、見て? キョウ君の顔。困りに困ってみんなのおっぱいを見るしかなくなってるよー?」
「いや見てないよ?!橘さんやめて!!」
急に爆弾ぶん投げてこないで?!
そしてみんなえっ、みたいな顔しないで!
「ミズリも下ネタはやめい!」
ていっと橘さんの頭にチョップ。
「いったぁーいセツナがDVだDVだ」
「何言ってんのよ、力なんて入ってないでしょうが」
「セツナのばーかばーか」
橘さんめっちゃ小学生みたいな悪口だな。
「はぁあんたは……まぁいいやミズリのことは置いといて。周りをうるさくしてごめんね?武田君」
困った困ったとばかりに苦笑を浮かべながら俺の目を見てくる。
「私は青山刹那、よろしくね、なんかあったら言って?これでも顔は結構広い方だから……」
「よろしくね、青山さん」
そういって手を差し出す……がいつまでたっても握り返してこない。
「……えっと、い、いいのかい?」
「?……うん」
握手にいいも悪いもない。
男は苦手なのかもだけど、俺は気にしないし、ちゃんとしたい。
「そ、それなら」
おずおずと青山さんは手を拭いて、握り返してくれる、くれるが力は青山さんの堂々とした立ち居振る舞いからは想像できないくらい、か弱い。
もう本当に触れたかどうかくらい。
というか握手して「おぉ」とか「エッチだ」とかやめて?!
普通だから!エッチではないから!
「あれもしかしてせつーな照れてない?」
「照れてないわ!と、ととというかほらあんたらもいろいろ質問とかする前に自己紹介くらいしな?」
「「はーい」」
一人ひとり挨拶を丁寧にしてくれる。
それはいいんだけど……みんな握手した手を大事そうにしないで?どっかの宗教か何かをやっているみたいに見えるから。
「大体みんなしたかね?……あとはミズリだけだよ?」
そっか橘さんもか。
「あー私?……そっかそうだよね」
「……うん?」
ちょっと不思議そうにする青山さん。
「初めまして、さっき小声でも挨拶したけどねん。橘
作ったような二回目の挨拶。
なんか不思議な感じ。
「よろしくね……橘さん?」
俺も併せてあいさつする。
「あれは私にはできないわ」
「うんミズリにしかできないねいきなり下の名前だなんて」
「しかも愛称でなんて」
「あざといあざといよぉぉ!」
「しかも嫌味なくいうからすごい!」
小声でみんなぼそぼそといってる。
橘さんは完璧スマイルを崩さない。
すごいなホント。
「……みんなでご飯とかも食べてもいいかい?みんなまだまだ聞きたいことありそうなんだけど」
みんなが期待と不安がないまぜになったような目で俺を見てくる。
「もちろんこっちこそ!転校して早々、ぼっちめしはきついからね」
「いやいや武田君ならどこでも人気者っしょ!」
別にそんなこともないんだけどなぁ…………。
今は人生2週分の経験値で補ってるだけだから。
しかも高校までしかないからこれ以降はもうどうしようもないけど。
「おー、武田君のお弁当おいしそうだね!」
「作った人が上手いんだよね」
花咲凛さんだけど。
「へーすごいねぇ、一品一品こだわってそう」
こだわってそう、というかこだわってたよ引くぐらいに。
彼女の言葉を借りると、
【精力は食事から!】
だそう。
花咲凛さんの弁当に舌鼓を打っていると、ふと教室から出ていく2人の男性の姿。
青山さんもどうじにみつけたらしく、おーいと手を振る。
「あんたらも一緒にたべないかい?」
青山さんが二人を明るく話しかけるが、
びくっと体を震わせ、
「だ、大丈夫です」
消え入るような声で断った後、そそくさと二人とも出ていく。
「……ま、あの二人は学年が上がっても変わるわけないよなー」
あははと青山さんは明るく笑い飛ばしまた食事に行く。
そうなのか、これがいつもの光景なのか。
おれは改めてこの世界の男性、というものの現実を思い出した。
ご飯はとてもおいしかった。
───────────
なんだかんだいろいろあったが初日としてはいい出来だった。
そこまでみんなにも反感をかってもいない気がする。
まぁ男子とは話せなかったけどまた明日以降かな?
帰りは橘さんに事前に、「誰かにつかまる前に帰ること―、捕まったらめんどくさいぞー」と脅されてたので、そそくさとかえる。
もうなんか放課後RTAって感じ。
さっさと帰ろうと、校門までたどり着くとなんか見たことのある車が止まってる。
黒いSUVの外車。
どこで見たんだっけ?最近見たんだけどなぁ?
近づくにつれてだんだんと全容が見えてきた。
校門の前までくると予想外の人物がいた。なんか用事あるのかな?
「……どうしたの?ほら速く乗ったら?」
どうやらおれらしい、そりゃそうだよねぇ。用事なら校門前にいないもんね。
彼女は金髪の髪を後ろに前髪はサングラスで止めている。
ただそんな姿も海外のセレブみたいで様になっている。
「宝生……さん?」
「どうしたの吃驚して。許嫁なら迎えに来るのも当然でしょ……それともお友達ものせていく?」
「お友達?」
後ろを見たら何人かの女子と橘さんの姿が遠くに見える。
あの様子だと橘さんが止めてくれてるのかな?
宝生さんは彼女らに笑顔を浮かべ、手をひらひらと振る。
表面上は好意的に、でもさすが上流階級というべきか、ひれ伏したくなる、自分ではかなわない、そんなカリスマ性を相手に感じさせる。
無言の威圧感とでもいうべきか、宝生さんにみんな丁寧にお辞儀を返ししてる。
「いかないみたいよ?ほら乗って?」
作ったような完璧な笑顔。
そんな顔初めてみた、宝生さんの普段を知らなきゃおどろいちゃうね。
これがほんとだったらうれしいけど、きっとこれは作り笑顔なわけで。
「じゃ行きましょ?」
いったいどこに行くというのか。
……俺の学校初日はまだ終わらない。
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