第38話 「自慢の姉とハーレム」


 美桜ねぇに頼まれた飲み物を買って戻ってくると、なんか二人がめっちゃ仲良くなっていた。


 「あ、おかえりー」


 「キョウ様お帰りなさい」


 そしてまた二人でそのまま話始める。


 いい光景だ。

 美桜ねぇが俺以外の人と話してる。


 いつも俺しか病院にはこれなかったからなぁ。友達もたまに来てくれるらしいけど俺は会えてないし。

 俺の大事な人同士が楽しそうに話してる。それがいい。内容はまぁ…………気にしないようにしよう。

 ところどころ漏れ聞こえてくる声的には、俺の幼少期とかの話をしているっぽいけど。


 「あ、恭弥の昔の写真見る―?全裸で泣いてるやつ!」


 「ちょっと待って何でそんな写真あるの?!」


 それはちょっとスルー出来ない。

 

 「えー、見てみたいですねそれはぜひ」


 なんで花咲凛さんも乗り気なんだよ。


 「よーし、かわいい花咲凛ちゃんのためならみせちゃうぞー」


 いや話を聞いてくれ?。

 これあれだ、俺が女性の圧に圧倒的に負けている。

 まずいこれはまずい。


 しかも俺が口答えしにくい人たちだ。

 

 …………結論から言おう。俺はおもちゃにされた。

 死ぬほど昔の黒歴史をばらされた、ついでに今のも。


 …………やっぱりあれだよね、前世の記憶があるからといっても一般人。

 身体に精神年齢が引っ張られるとはいうけど、本当なんだね。


 今思えば幼少期の俺はなんであほみたいに川に落ちたり、全裸で走り回ってたんだろう。

 なのに女性の裸とかは気恥ずかしくて…………。なんか損してない?


 まぁというわけで、俺はもうお嫁にいけない。


 俺の精神が何とか復活したところで、今日のもう一つの用事を話しておく。

 俺の今おかれている状況と、姉さんに迷惑をかけちゃうことについて。そのことはあっさりと了承してくれたけど。


 「あらら、そんなことになってるのね。ごめんなさいね迷惑かけちゃって」


 美桜ねぇが申し訳なさそうに謝る。


 「いつも言ってるけど迷惑なんかないよ。美桜ねぇがいるおかげで、俺はこの人生を楽しめてる!それにこの制度のおかげで花咲凛さんにも出会えたし。たぶん許嫁の人も悪い人はいなそうだし。姉さんの病気のおかげで俺の人生は開けたって言ってもいいんだよ」


 「あら、つまり恭弥はそれは私の病気を喜んでるってことぉ?」


 「いやそれはなんというか語弊があるんだけど、なんていうかその…………えーっと花咲凛さん!」


 はぁっと花咲凛さんがやれやれとばかりに頭を抱える。


 「キョウ様普段は頭が切れるのに、こういう時は何というかあれですよね、残念ですよね」


 「ざ、残念?!」


 一応俺主じゃなかったっけ?


 「キョウ様はこういうことが言いたいんですよね?美桜さんのおかげでいろんな女の子をとっかえひっかえ出来てうれしいです、って」


 「やっぱりそういうことだったの?なんともまぁひどい男」


 「本当ですね?」


 二人は顔を見合わせて笑う。


 「か、花咲凛さん?裏切ったの?」


 「…………いえ?私はキョウ様がこういう風に言ってほしいんだろうなって素直に思っただけですよ」


 「なんか全く以心伝心していない!」


 「人間って難しいですねぇ、でもやはりそういうのは自分のお言葉で伝えられた方がいいと思いますよ?」


 …………うーんそれは確かにそうかも。


 「俺が言いたいのは、ですね」


 「うんうん」


 美桜ねぇは笑顔で聞いている。

 絶対これ言わなくてもわかってるでしょ。

 でもこういうときは言うまで放してくれないんだなぁ。


 「なんていうかあれだ!いろんなきっかけがあっていろんな人と出会った。でもやっぱり俺の人生には美桜ねぇがいないとちゃんと幸せなれないから。俺は美桜ねぇの病気とか関係なく、美桜ねぇのことが大好きだしこれからもずっと一緒にいたいから、だから早く病気なんて治して、一緒に住もう!」


 なんか言いたいことがめっちゃごっちゃになったな。

 というか最初といってること変わったな。


 「でももし、今姉さんが迷惑をかけたって思うなら、病気をなおして俺の寝起きを花咲凛さんと一緒に起こしてよ」


 「…………」


 「…………」


 あら?

 二人とも無言なんですけど。


 花咲凛さんはあちゃぁって感じで頭を少し抱え、美桜ねぇは笑っている。


「これはあれだねプロポーズだね」


 「ええ、プロポーズですね」


 な、なんだ二人して。

 ぷ、プロポーズかなぁ。いうならもっとちゃんと場所を選んで言うけどね。


 「これは野に放っちゃいけないやつね」


 「放ってはいけないですね」


 「無自覚なのがより質悪いわね」


 「破壊力すごいですね、私言われたわけではないですけど」


 なんか感想戦始まってない。


 「恭弥」


 美桜ねぇが真剣な目で、こちらを見つめてくる。


 あれ?よく見れば目に涙が?


 「すごくうれしいわ、あなたの人生にこれからも私がいて。これからもあなたの隣にいさせてくれて、早く病気治さないと、ね」


 そして私の人生をかけて支えていく。


 そうぼそりとつぶやいた。


 そこまで重く考えなくてもいいけどなぁ。美桜ねぇは美桜ねぇの幸せを求めてほしい。そこに俺がいればよりいいけど。そう思ってもらえるように頑張る。


 「一つ違うよ、俺が姉さんの隣にいさせてもらうんだよ?」


 「あらあらうまいこと言っちゃって」


 「キョウ様は豪華ですね、私と美桜さん二人に起こしてもらおうなんて」


 「ほんとね」


 「そりゃハーレムを政府によって作られてますから」


 全員が笑う。

 あぁ俺はこんなみんなの笑顔を守りたいな、ってそう思った。




 その日の帰り道。

 

 「美桜さんとても素敵な方でした。優しくしていただいて」


 花咲凛さんが歩きながらそんなことをぽつりとつぶやく。


 「仲良くなれたならよかったよ」


 「ええ、いろんなお話を聞けました幼少期の話とか聞けて」


 「それは聞かなくても…………ん?」


 なんかスマホが鳴ったな。

 そろそろ調査の結果が出たのかな?


 出てきたメッセージを見て、歩きが固まった。


 「どうしました?」


 無言でメッセージを見せる。

 それを見た瞬間、花咲さんも苦笑いをする。


 「ハーレムって感じですね」


 「本当に、ね」


 メッセージからは橘さんから。


 

 【今度のデートよろしくね☆デートプランなんだけど…………本来は私がかんげるべきなんだけど、あえてそっちのお任せで!JKが喜ぶお洒落なコースを考えてよね!許嫁候補の甲斐性を見せて、ちょ、よろ☆】



 女子高生が喜ぶデートっていったいなんぞや。

 

 

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