第13話 「お詫びと花咲凛さんとのデート」
善は急げ、とばかりに街へ出てきた。
街を歩けばやはり圧倒的に女性の姿が多い。
「相変わらず注目されますねぇ」
「だね」
隣を歩く花咲凛さんは私服だ。
いつものメイド服とは違い、新鮮な感じがする。
「この雰囲気にも慣れました?」
「……うーん微妙」
「ですかぁ」
この世界にもう15年近くになる。ある程度慣れたとは言え、それでも前の世界を知っている俺からすればどうしても違和感がぬぐえない。
前世にいたら、普通にカップルがいて、子供がいて、親子がいてそんな社会だったから。
それがこの世界に転生して、男性の姿は圧倒的に減り、街で見かけることは少なくなった。
しかも若者の男性となったらその中でもかなり少数になっているため本当に見かけることは少ない。
見かけたとしても熟年の夫婦とか。
まぁ来ているのは、新宿の高島○だから、客層の平均年齢が高め、ってのはあるんだろうけどね。
「さてキョウ様つかぬことをお聞きいたしますが」
「んー?」
「お詫び、と言ってましたが、何を買う予定なんですか?」
「……そうだな、いますぐ答えてもいいけど、それじゃ面白くもないし、ちょっとクイズ形式にしようか」
「…………まぁいいですけどね?」
あからさまに不満そうに返事する花咲凛さん。
いや大丈夫、きっと大丈夫。
絶対ばれてない、はず。
「そうですねぇ、まぁまずアクセサリー系は当然ないですよね?」
「……そうだよね?」
へ、へぇそうなんだね?
ちゃんと謝罪とかしたことないからなぁ。
あんまやらかすときなかったし、初めてだよこんなの。
「ちなみに理由は?」
「……そもそも異性にアクセサリーを送るのは、親しい仲か、それか相手に好意を伝えるときくらいかな、と。逆に謝罪でアクセサリーは聞かないですよ?」
当然ですよね?みたいな目で見られましても、ねぇ。
「でもたまに時計とか送ってない?ドラマとかで富豪が」
「それは富豪なので私たちは…………まぁキョウ様は今後わかりませんけど。私も橘さんも家庭環境は、普通ないしは恵まれている方ではないので。間違っても富豪ではないので、そんなもの渡されても、困惑しちゃいますよ。……そう考えたんですよね?」
「も、もちろん」
分かっていたともええ。
「まぁ同様の理由で服とかでもないので、まぁ無難に行けばお菓子、ですかねぇ」
「そりゃもちろん!」
「ですよね?その中で、お菓子の種類何かってのが本題ですよね?」
「ま、まぁ」
ここは無難に行けば東京ばなn……
「しょっぱい系か、甘い系か、ってなりますよね?でもそうですね、普通こういう時はしょっぱい系とか控えますもんねぇ。甘い系とは言っても、洋菓子か和菓子か、さぁどちらでしょう」
呪文のように並べ立てられる言葉。
え、ちょっと待ってそんなに考えるものなの?
「さて、キョウ様。もしかしてですけど何か聞きたいことあります?」
…………どうやら全部ばれているらしい。
「菓子折り、何がいいか教えてください」
「はい、分かりました。最初から見栄張らなきゃいいのに。ちなみに最初は何を渡そうと考えていたんですか?」
「…………」
何とも言いづらい。
「キョウ様?今後の為にも適切なアドバイスが出来ませんので、教えてください」
「東京ばなな……」
「……」
「……だから言いたくなかったのに!」
「でも惜しいですね、洋菓子、っていう点はいいと思いますよ?あれ東京バナナって洋菓子、ですかね?」
「バナナケーキだと思えばそうじゃないかな?」
「……まぁいいです。キョウ様に足りなかった点は一つだけです」
おお意外と少ない。
「その心は?」
「値段、ですかね」
「あぁ……」
たしかにあれおいしさの割に値段やすいもんなぁ。
そっかぁ。
「そうです、大人は誠意をお金で表すんです。まぁキョウ様はまだ早いかもですけど、なのでまぁ3000~5000円くらいのものが妥当だと思いますよ、ちょっと高いかもですけどまぁ高い分にはいいでしょう」
「なるほど~」
勉強になります。
「これ、宝生様とかだったらもっとややこしいことになりますよ。あそこはがちの上流階級なので。なので粗相をなるべくしないようにしましょう、ええ」
一般人でさえ、5000円。
これ多分普通に万超えるな。
「うん十万もあります」
どうやら想定の1個上だったらしい。
「桁が違う?!マジで?」
「本当に」
真顔で言われた。
「……考えるの止めよ」
「そうですね、今は橘様のものを選びましょう。でもここからはご自分で選んで下さいねあくまで、キョウ様の誠意が大事なんですからね?」
「わかってるよ、そこまで任せるつもりは無いさ」
「そうですか、それは一安心です」
その後デパートの中をいくつか見て歩く。
色々見た結果だけで言えば、菓子折りにもめちゃくちゃ種類があるらしい。
もう最後はフィーリングで、消費期限の長い洋菓子を組み合わせるやつにした。
本当に色んなのがあるんだな。
その後、花咲凛さんとデパートの中を歩いて回る。
まあ軽いウインドウショッピングみたいなもの。
お詫びのためとはいえ、久々に2人でゆっくりした気がする。
「なんか怒涛の日々ですねぇ」
そろそろ帰ろうかと歩き始めた時そんなことをポツリとこぼす。
「そうだね、この一週間が嵐のようだったね」
「分かんないですよ?これがまだ嵐の静けさレベルかもしれないんですから」
「なんとも否定出来ないのが、辛いところなんだけど」
「……それでも何とかするんでしょ?キョウ様は、お姉様の時のように自分を犠牲にしてでも」
「……そこまでじゃないけどね、自分に出来ることをしてるだけだけど」
姉さんの時だってたまたまどうにか出来ただけなんだから。
「でもそれは……」
花咲凛さんが何を言おうとしてるのかは分かる。
「もう決めたことだから」
「……差し出がましかったですね申し訳ありません、でも何かあれば相談してください。私は私だけはいつでもキョウ様の味方なので」
花咲凛さんの目はどこまでもこちらをいたわる様で。
俺そんなに無理してるように見えたのかな?
心配かけたかな?
「ありがと、花咲凛さん。それじゃはいこれ、心配させちゃってるみたいだから」
「え…………これって」
「さっき買ったものだから大したものじゃないけど。日頃家事とかやってくれるから、さ。あんまハンドクリームとかつけてるとこないからもし良ければ」
「…………キョウ様でも私は仕事をしてるだけで」
「それでもだよ、俺が感謝してるんだから」
花咲凛さんは貰ったことが信じられないかのように、一身に見つめてる。
「あー要らなかった、かな?」
やっぱ人へのプレゼントって難しいなぁ。
「い、いえ!そんなことは!とても嬉しいです!ただ少し困惑してしまって……」
「…………困惑?」
「ええ、私がこんなにも幸せになっていいのかなって」
「……幸せになっちゃダメな人なんていなくない?というかプレゼント渡しただけだよ?」
「それでもです。だって私は過去……」
花咲凛さんはそう言葉を詰まらせる。
「俺は花咲凛さんの過去を詳しくは知らないけど、でもきっと今を楽しんだらいけない、なんてことは無いよきっと」
「…………そうですかね?」
その目にはいつもの力強さは感じない。
「それとも雇い主、というかご主人様として命令した方いいかな?」
「…………」
「うーんそうだなぁ、そうだね。うん。じゃあこれはアメリカとかで言うチップだとでも思ってよ。幸せとか関係なく、日頃の労働の対価の延長。これなら納得できない?」
「対価の延長……」
「うん、あとは俺のメンツを守ると思って。受けとって貰えると嬉しいな」
ここで受け取って貰えなかったらもう俺は死ぬ気でそのハンドクリームを自分で使う。
「ふふ、そうですか。ならわたしが使わないと行けませんね。ありがとうございますキョウ様」
にこりと笑う花咲凛さん。
「いえいえ」
「…………それじゃ帰ろっか」
そうして、帰ろうとしたところで。
「どしたの?」
花咲凛さんが裾を掴んでる。
「あの」
「ん?」
「今から、しちゃいませんか?」
しちゃう……それって
「あの家でするのも気にはなりますけど落ち着かないので、なので、ね?
義務。
最初はただの政府からお金をとるための義務だった。
でも2人で住んでく上でその義務は文字通りのもの以外も含み始めていて。
「そだね、しとこうか」
2人して、休憩場所で義務をしに、反対方向の電車へと乗り込んだ。
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お疲れ様です!
明日からまた仕事ですね、頑張りましょう!!
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