第12話 「続・第1回許嫁家族会議」
「……今回の件はまぁ事故、ですかね?」
【続・第1回許嫁家族会議】の結果、話し合った結果、判決は宝生裁判員によって下された。
「そうね、わざわざ男性が女性の裸を見るなんて考えにくい時代だからねー?逆に男性の裸を覗いたっていう話なら、最近ならよく聞くんだけどね?」
100年ほど前ににぎわした、男性から女性への痴漢は根絶と言ってもいいほどに無くなり、逆に女性から男性へのセクハラなども増加していった。
俺のいた時代みたいなことは無いわけだ。
昨今のニュースなどでは時折、それらの問題について論じられている。
前世と違って、それだけ男性が社会的に弱い、ということ。
数は力と言ったものでやっぱりそれは正しいのだろう。
そう、だからこそ男性が女性にセクハラめいたことをする、というのは昨今の情勢から考えると、俺の剣はかなり珍しいことになる。
前世のラノベ、みたいなことは物理的に起こらない状況になるわけだ。
「……まぁとはいっても間違って覗いてしまったのも事実だし……」
「大変申し訳無かったです、すみませんでした」
そこはきちんと頭を下げる。
やっぱり価値観前世の俺としては、大変心苦しい。
昔ならラッキーともとれる状況だし。
「…………橘さんどうかしら? 悪気はないようよ?」
「…………そうだね、じゃあ一つだけ本当に教えて」
「うん?」
なんだろう。
悪気があったのか、とかかな?
「ほんとに何も見てない、の?」
「ああ、何も見てない、一瞬で振り返って、扉を閉めたしね」
俺がそう言うと、橘さんは顔を安堵させる。
「そっかそっか良かった良かった私のエッチな黒いパンツは見られないで済んだわけか」
あれ?
「いやどちらかと言えば赤だったような…………はっ!?」
「武田さん?」
「すみません、一瞬ではあったけど刺激的な光景だったのでつい……記憶から消します!」
「ちなみに上は裸だったんだけど?」
「いや上は本当に目線に触れてないから分かんないです」
「ならまあよし!残念だったね私の裸見れなくて」
にひひと、いつものように笑う橘さん。
「それでいいのですか?」
「ええ、ほんとうにみてないみたいだし大丈夫〜」
「パンツは見てるけどね?」
ぐはっ。
秋月さんの言葉が刺さる。
でもどうして人は、ただの布切れに期待をしてしまうのか。
「誠に申し訳ない……」
「いいっていいって減るもんじゃないし〜、まあでもそんな気にするなら私も武田さんのやつ見せてもらおうかなー」
「そんなもので良ければいくらでもどうぞ」
「うえっ…………」
「あっ…………」
みすった。
思わず前世のノリで答えたけどこの世界だとこれはおかしな話だ。
いや前世でもおかしくはあるか?
「ま、まぁ冗談だけどね?」
「そ、そうだよね?」
微妙に気まずい雰囲気が部屋を満たす。
ミスったぁぁぁ。
「でもこれでひとつハッキリしたし証明されたわね」
秋月さんが空気を変えるためか、そんなことを言い出す。
やっぱ教職についてるからか空気を読む、というか場を仕切るのが上手いな。
まあその点では宝生さんも上手いんだけど。
……あれ?もしかして俺空気?
「……と、いいますと?」
みんなの疑問を代弁して、宝生さんが聞く。
「それはあれよ」
「「あれ?」」
みんな一様にクエスチョンマーク。
「まあ私たちにとって、いいことは何一つないわけだけど……」
そう秋月さんは前置きし、
「この人が本当に女性を好きだということが、よ」
脳裏に蘇るのは昨日のセリフ。
【「俺は女の子が好き!!!!大好きだ!!!!!!」】
一晩たって冷静に考えた。
普通にあれはやりすぎだったんじゃないか、と。
そう考えたら、なんというかとても恥ずかしくなってきた。それで悶えてて眠れなくなったから、走りに行ったと言うのにっ!!
「確かにそうですね。ちゃんと赤面されてましたし、嫌な感じも出されてなかったですしね」
「…………ということは私は証明に使われたってことだ…………なんか策士!」
宝生さんは納得し、橘さんは愕然としてる。
……いや待って欲しい。
「いや計画的じゃないからね!?」
「…………」
じぃっと見られる視線。
「こんな方法で証明してどうするんですか、もっとほかのやり方あるでしょ!……それに、こんな身を削らなくてももっとわかって貰えそうなもんじゃん女性が恋愛対象なことくらい」
「……確かに、初手自爆はない、か」
「そこまで頭が残念では無い、というか残念であって欲しくないといいますか、ええまぁはい」
「そっか〜計算した訳では無いんだ〜」
三者三様の評価。
それに黒川さんも
「わざとでは無いとも思いますよ、仕事柄嘘を見抜くこともある程度出来ますが、そんな兆候はないですし。まぁ私の目を欺くほどでしたら話は変わってきますが、それならこんなわかりやすいミスはしないでしょうし」
…………え、執事の仕事ってそんなこともするの?
嘘を見抜くのも仕事なの…………え?
まあいいや深く考えるのはやめよう、今はちゃんと謝ろう。
「はい、完全なるアクシデント、事故です。大変申し訳なかったです」
「そっかそっか、ならしょうがないね〜、私こそごめんなさい、朝早くからみんなを起こしちゃって!ちょっとビックリしちゃって、さ」
申し訳ない!と橘さんも手を合わして、謝る。
「いいえ顔をあげてください、事故とはいえあなたは被害者なんだから謝ることはないですよ」
「あはは〜ありがと宝生さん」
「じゃ一旦解散、でいいかしらね?」
「それでいいと思いますよ〜」
「はーい」
「二度寝しよ〜っと」
「……今からですか?もう10時ですけど……」
「社会人は寝れる時に寝るのよ?」
そんな事を話しながら、それぞれの部屋へと戻っていく。
ただ1人橘さんだけは残っていて。
「ど、どうしました?」
「ねぇ」
その目顔には先程のような笑顔はひとつもない。
「本当に見てない?」
その目には光が宿っていない。
まるで漆黒のようで。
「…………裸…………のこと?」
「そう」
「……本当に見てないよ……………………パンツ以外」
気圧されながらも、何とか答える。
何だこの雰囲気は。
ただ俺の答えに満足したらしく
「そっか!ならいいんだけどね!ごめんごめん一応の確認。じゃあね〜」
先程までの空気が霧散し、いつもの人懐こい笑顔に。
その切り替えの速さに驚いてるうちに彼女も、上へ。
場には取り残された俺ただ1人。
「一体なんだったんだ?」
少しだけ違和感が残る。
申し訳ないのももちろんあるが、それでも違和感。
腹黒、とはまた違うなんというか二面性?みたいなものを垣間見た気がする。
でもそれがなぜ引き起こしたのか分からない。
「……いやー怖かったですね、彼女」
「うおっ!?びっくりした」
「驚かせようと思って待機してました」
花咲凛さんが何食わぬ顔で待機してる。
「おはよう」
「おはようございます」
「さっき起きたの?」
「いえちゃんと8時半に」
「あの悲鳴聞いても?」
「ええ、どんな時も熟睡できるのが密かな自慢でございます」
「なるほど…………主人のピンチでも?」
「獅子は子を谷から突き落とす、と言います。今回も同様です。まあ今回は自分から落ちた訳ですから、自分で這い上がってくるべき、が考えですね」
まあ今回の件は俺が悪かったからなんとも言えない。
言えない、が。
釈然としない気持ちもどこかある。
まあいいかそれよりも。
「なんか違和感あるんだよなぁ」
「……そうですね、キョウ様が悪いにしてもあそこまで過敏になられるのは昨今の女性では珍しいな、とは思います」
「やっぱそうだよなぁ」
「何か見られたくないもの、でも見ちゃったんじゃないですか?……それを見たから殺された、みたいなパターンを私はコナソ君でよく拝見してます」
「それ俺被害者になってるじゃん!?」
「…………はい安心してください、私が美人名探偵カザリンとして解決いたします!」
ぐっと拳を握ってやる気アピール。
「事件が起きないように尽力してくれない!?」
「悲しいかな、事件があるからこそ名探偵も生まれる、なんと非情な世の中…………」
「何勝手に名探偵気取ってるのさ」
「いや、ありだな、と思いまして。まぁ何かしら見ちゃったんじゃないですか?赤いパンツ以外の何かを」
「一瞬だし特に何か気になることはってことは思いつかないけどなぁ」
「キョウ様が気にならないことでも、橘様は気にされるみたいなこともありますからねぇ、人間色んな人いますよ」
「そっかァ、まぁ原因が分かればだけど、一旦は」
「一旦は?」
「お詫びの品買いに行こう」
「それが正しいかと、それだと私も嬉しいですね〜」
「嬉しい、花咲凛さんがなんで?」
「ぁ〜……だって、私が一緒に行くことになるわけで、ならわたしも何か買ってもらえるじゃないですか?」
「……主人にねだるメイドまじ?」
「メイドなので……」
これが本当のメイドらしい。
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お疲れ様です!
まだ土曜の夜だよ?
皆さんは何をして週末過ごされますか?
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