第11話 「許嫁家族会議」
「俺は女の子が好き!!!!大好きだ!!!!!!」
一応、ね?
直近の男子は男子同士で、みたいなパターンもあるらしいからね。
俺には到底理解できないけど、でも女性の権限が強くなっているっていうのと数少ない男同士で慣れ合う、みたいなこともあるのかもしれない。
だから意思表明は大事というか、なんというか。恋愛対象は女の子ですよ、とね。
「……」
「……」
「……」
つぶっていた眼を少し開けると、みんながみんな絶句してる。
いや、後ろで花咲凛さんだけが肩を震わしているね。
「……ま、まぁ言いたいことはですね。今回の制度によって、みなさんとは繋がった関係にはなりますけど、俺としては、皆さんと誠実に向き合って行きたいと思ってるのでよろしくお願いします」
なんか最後は演説っぽくなってしまったけど。
とりあえず曲がりなりにも言いたいことは伝えた、かな?
姉さんのためとはいえ、それだけでこの人たちと向き合わない、ということにはならない。ちゃんと向き合っていい関係を築けたらいいな、って思う。
「…………ぷっ、変なの〜」
橘さんがクスリと笑う。
嘲笑するような嫌な笑いじゃない。
たまらず吹き出してしまったみたいな、そんなな感じ。
「…………若さを感じるわねぇ」
「先生もまだ若いよ?十分」
「自分より若い教え子に言われるのも複雑なんだけど? 授業中に寝てること担任の先生に伝えようかしら」
「?! いやそれはやめてよ〜」
あれ?実はこの2人って…………、そっかおなじ高校に通う生徒と教師だから知り合いでもおかしくないのか。
「…………話、位はいたしましょうか。どうせ1月だけとはいえ暮らさねばならぬのですからね」
「そうだね〜、どうせならこの1月気持ち良く過ごしたいよね〜」
「1月だけならまあ折り合いつけてやりましょ?」
一応3人ともに合意してくれた。
してくれた、けどさ。
それにしても……皆1月1月ってそんなに連呼しなくても良くないか?
なんかもうここまで来たら絶対この許嫁制度成功させてやる、って気になってきた。
「じゃあ、この1月をうまくやるためにこそ、生活に関するルールみたいなの決めておきましょうか」
「何それ、学校みたーい。なんかあれだね~、紗耶香ちゃんいいんちょみたい」
「……まぁ大事ではあるわよねー、ある程度の取り決めというのは。制限がないのが一番よくないからね」
「とはいっても、決めすぎてもあれですから、最低限、って感じで行きましょうか。ね、武田さん?」
一応宝生さんが俺にも確認を取ってくれる。無視とかするわけじゃないのはありがたい。涙が出そう。
あれ?俺の感動のライン低くね?
「それでいいと思います」
なんというか……
「それじゃ、それぞれここだけは譲れない点、とかこうしたらいいんじゃないか、っての言ってきましょう、それを黒川が書きだすので、あとで精査していく、っていう感じにいたしませんか?」
「私もそれでいいわよ、でもさすがね。やっぱ会社の社長やるだけはあるわね~」
めちゃくちゃ宝生さんの仕事できる感がすごい。社長はやっぱりすごい。
「いいんちょとかのレベルじゃなかったね!あはは、女社長だね~」
「まぁ社長とはいっても、所詮母の子会社ですから、そんなすごくはないですよ。ただの女子大生、って思っていただいて結構です」
卑屈そうに言う宝生さんの顔は少し影がある。
ただ場の雰囲気が少し暗くなったと思ったのか、
「すいません、暗くなっちゃいましたね。それじゃ決めていきましょうか。まず必要なのはトイレ問題、とかですかね? ここはお互いの階を使う、でいいですかね?メイドさんはどうしましょうか……?」
「彼女は2階も使える、でいいんじゃない?……多分彼の専属メイドだし部屋が3階にあるだろうけど、2階使えないのも変だし、ね?」
「お気遣いありがとうございます」
花咲凛さんが丁寧にお辞儀している。
こう見ると、ちゃんとメイドなんだけどなぁ。
あ、背中側でなんかピースしてる。
「じゃあ1階は共用、2階は女性、3階は男性関連、って感じかしら?」
「そうですね……あとは~」
そうしててきぱきと宝生さんが決めていく。
まずバスルームはトイレと同様。
食事などは、基本的には花咲凛さんと黒川さんが作ってくれる。朝と夜だけ。
それで、まぁこういう制度をやっている以上、政府へのパフォーマンスも兼ねて、水曜日と土曜日は一緒に食卓を囲いましょう、とのこと。
まぁ政府が今後何かを言ってくる可能性はあるがひとまず、何かしらしておかないと何か言われた時に、言い訳できないから、ってことらしい。
リスクヘッジ流石よね。
現役高校生の俺と橘さんポカーンだったよ。
あとはゴミ出しとかは、日替わりにしましょう、とかかな。
細かいところで言うと、部屋の掃除は、平日はお二人(黒川さんと花咲凛さん)にやってもらい、土日はみんなで。とのこと。
休日は自分たちで。ワークライフバランス、的な話らしい。
そこらへんもばっちりです。
「……まぁざっとこんな感じかしらね?」
「そうね、あとはなにかあったらその都度話しましょ?」
「じゃあ一旦『第一回許嫁家族会議』終わっとく?」
「何その名前、うける」
秋月さんの急な造語に、橘さんがけらけら笑う。
「いいんじゃないですか。分かりやすくて」
変に英語とかよりはね? In laws families meeting part1 みたいなのよりはね。
「あら、分かってるじゃない?男のくせにセンスあるのね」
「はは、どうも」
「私は微妙な気がしますけど、まぁいいです」
「……なんか癪に障るけど……まぁいいわそれよりも何かあった時のためにグループラインでも作っておく?」
「じゃあつくろっか~、……あれ?どうやってやるんだっけ?あ、まずはIDか、ふるふる? だっけあれやろーよ」
ふ、ふるふる?
なんか懐かしいなぁ
「あぁ交流のためにフルフル?昔はやったよなぁ一時期」
「はやったけど、それ私大学生くらいの時よ?面白い事言うじゃない?」
確かにラインが出た当初だよな。ふるふる使ってたの。今じゃQRとかだし、でも交流にはいいかも。
「あ、あはは、でしょー?……やろやろ~、故きを温ねて新しきを知る。的な?」
「そんなのがあるのですね~、やりましょうか」
宝生さんは知らなかった様子。
まぁラインとかしなそう。イメージだけど。
ふるふるして、友達追加して、秋月さんからグループに招待される。
グループには6人の名前。
グループ名は、「許嫁同盟」
「……いい時間ですし、一旦お開きにしますか?」
外を見れば、もう暗くなっている。
思ったより、時間が経っているらしい。
「……そうですね、私がご飯作っておきますね~」
そう言って、黒川さんが台所に。
「やらないの?花咲凛さんは」
「こういうのは早い者勝ちですからね~、今回は黒川さんに譲りますよ、次回こそ頑張りますよ」
この人めんどくさいだけでは?作るの?
俺のジト目の意味に気付いたのか、花咲凛さんが弁明するように……
「ほんとですよ?」
「……疑ってないよ?」
「ほんとですか?」
うん、めっちゃ疑ってる。
ちなみに黒川さんのご飯はやっぱりおいしかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日
「あー、久々のランニングは気持ちいいな」
朝日を浴びて、周辺の散策も兼ねて走る。
まぁ今時男の一人歩きはあまり推奨されないけど?
三月になりたてで、まだ肌寒いけど走るといい感じに火照ってくる。
というか結構汗をかいた。
時刻は7時、か。
一旦俺たちの家に、住み慣れていない家へと戻る。
まだ2日目だし、それも当然かぁ。
玄関を開け、3階の部屋に戻るか逡巡し、
「まいっか、だれもいないだろ、音もしないし」
1階の浴室へ。
早くシャワー浴びたい欲が勝った。それがよくなかった。
そのままドアをあけ、汗で張り付いたシャツを脱ごうとして
「……あ」
なんか身体が見えた。
具体的に言えば、女体が見えた。
「……え?」
一瞬の戸惑い。
「…………きゃぁぁぁぁぁ」
そしてつんざくような悲鳴。
「わぁぁぁっ!」
俺も叫びながら、慌てて扉を閉める。
「ご、ごめん」
「……見た?」
「…………み、見たって何を?」
「身体、私の」
「い、一瞬だけ背中がちらっと。でもすぐに顔を背けたから」
「…………そう」
この声の感じ、橘さんか。
「どうしました?」
「どうしたの~?大きな声出して」
寝起きなのか、どたどたと、みんな集まってくる。
「すみません起こしてしまって、ちょっと浴室でハプニングがですね」
慌てて事態を説明するが、俺の顔は赤くなっている
秋月さんがにこりと笑う。
そして。
「ほんと男ってサイテー」
冷たい眼で見られた。
宝生さんは一言。
「続・第1回許嫁家族会議、ですか?」
延長戦入ります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お疲れ様です!
休日だぁぁ!
皆さんは何をして週末過ごされますか?
沢山のフォローと応援ありがとうございます。
また★とかいただけてありがたい限りです。今後もよろしくお願いします!
なにかわかりづらいところとかあったらお気軽にコメントしてください。
応援ボタンなどもぜひお願いします!!全部がモチベになります!!
本音を言えば、ランキングに入りたい、トップ10!!
ぜひよろしくお願いいたします。
それでは!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます