第23話 デート

12時50分。

「お待たせしました。」

月城がそう言いながら部屋に入ってきた。

前回俺が5分前には既に居たからだろうか?

この日は10分前にやってきた。

紺色のブラウス。

赤色のロングスカート。

黒いきれいな髪はいつもと違ってポニーテールに束ねられていた。

ポニーテールも似合うんだな。

俺は思わず見とれてしまう。

相変わらず今日のコーデも完璧なのだから。

「では、行きましょうか?」

彼女の一言でボーっとしていた意識が戻ってくる。

「……あ、うん。」

司令部の外に出て電車に乗る。

「その……お仕事の方は良かったんでしょうか?」

彼女が申し訳なさそうにそう尋ねる。

「まあ、いくら考えても分からないものは分からないし。」

俺は彼女を安心させるようにそう言う。

「そうですか。」

少し安心したように落ち着いた声でそう言う。

佐藤の言う通り、初めて会ったときと様子が違う。

どこかいつもより雰囲気が暗いのが俺にでも分かる。

いつもと違って手も握ってこない。

やはり落ち込んでいるのだろうか?

俺は少し大胆な行動に出ることにする。

恐る恐る彼女の手を握る。

こちらから女の子の手を握るなんて人生初めてなはずだ。

凄い緊張する。

少し戸惑った様子を見せたものの彼女はすぐさま握り返してくる。

気のせいだろうか?

少し表情が明るくなった気がする。

そうこうしていると、横浜に着いた。

やっぱり港町なんだな。

神戸に似ている気がする。

その風景はどこか懐かしさを思い出させる。

「映画までまだ時間あるけどどうする?」

俺は彼女にそう尋ねる。

「そうですね。あそこ行きたいです。」

そう言いながら彼女はお洒落なカフェを指さす。

やっぱりああいう所が好きなのだろうか?

「いいよ、行こうか。」

そう言って俺たちはカフェに入る。

席に着くと彼女は相変わらずメニュー表とにらめっこだ。

「好きなだけ頼んでいいから。」

俺は彼女を元気づけようとそう言う。

「いいんですか?」

彼女が嬉しそうに赤い瞳を輝かせる。

でも、いつもよりその輝きは暗い気がする。

「それじゃあ、グレープとストロベリーと……」

結局彼女は5つも頼んだ。

これだけで5000円吹っ飛んだ。

が、これで彼女が元気になるなら痛くない出費な気がする。

「おいしい?」

俺は彼女にそう尋ねる。

「はい。天国です。」

彼女は頬張りながらそう言う。

その顔、さっきよりも明るかった。

「それじゃあ、映画行きましょうか。」

「うん。」

映画なんていつぶりだろうか?

子供の頃は年に一回行っていたけど。

あいつとは来なかったし。

俺たちは映画館へと向かう。


映画館に着いた。。

「えっと……H10、H11は?」

俺たちは席を探し、見つける。

「ポップコーンいる?」

俺は彼女にそう聞く。

「はい。」

彼女はそう答える。

まだ食べるんだな……

「何味にする?」

「キャラメルでお願いします。」

「分かった。」

その後月城と買ってきたポップコーンを食べながら映画を一緒に見た。


映画が終わって出てくる途中、近くで爆発音が聞こえる。

まさか例の爆弾魔?

なんでこんなところまで来た?

それに今回規模大きくないか?

俺は辺りの霊力を調べる。

するとフェイズ2が3体?

月城一人で相手できるのか?

「状況があまりよくないのですか?」

俺の表情を読み取って察したのか彼女は俺にそう聞く。

「まあ、あんまりよくないな。フェイズ2が3体いるから。」

「どうしますか?」

「一か撥かの賭けだが、カーテナを使う。」

「カーテナなんてどこにあるんですか?」

「ここにあるよ。」

俺は鞄の中からカーテナを取り出す。

「何でそんなもの持っているんですか?」

彼女は戸惑いながら聞く。

「細かいことはいいから。」

そう言って俺は誤魔化す。

「それでどうするつもりですか?」

彼女はそう聞いてくる。

「空間操作(テレポート)で二人をこの場に呼びよせる。」

「分かりました。やってみます。」

俺はカーテナを彼女に渡し、二人と連絡を取る。

「空間操作(テレポート)。」

正の霊力の気配が新たに二つ現れる。

「成功したみたいだな。」

「待たせたな。」

北条がそう言う。

「お待たせしました。」

佐藤がそう言う。

「じゃあ、それぞれ怨霊一体ずつよろしく。」

「了解。」

三人はそう答え、怨霊の元へと向かう。


爆弾が放たれる。

「灯。」

炎の球をいくつか打ち出す。

そのうちの3発が命中する。

「効いてない……だと……」

それどころか何か強くなっていないか?

まさか、もらい火?

ヤバい。

怨霊がいくつも爆弾を同時に放つ。

「地獄炎。」

炎の渦を発生させる。

そして、爆発の衝撃を抑え込む。

炎が使えない……相性最悪だな。

だったら、こちらは剣技で戦うしかないのだ。

私は怨霊目掛けて切りつけようとする。

が、視界が遮られる。

辺りが煙に覆われる。

煙幕だと?

段々と意識が遠のいていく。

「……クソが……」


気が付くと司令部だった。

「蛍さん大丈夫ですか?」

瑠璃がそう心配そうに話しかける。

「うん、これぐらい平気。」

私はそう答える。

「それで二人はどこに?」

私は彼女にそう尋ねる。

「颯香さんと司令官なら司令室です。作戦会議をしているみたいです。」

彼女はそう答える。

「そっか。悪いな全然役に立たなくて。今回は相性最悪で。」

「いえ、別に。私もあの怨霊に逃げられてしまいましたし。」

「そうか、颯香もか?」

「はい。後をつける作戦だったのですが、逃げられてしまったみたいです。」

「そっか……」

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