第21話 再発2

また俺たちはそれぞれ飲食店へと分かれる。

今回は4店舗しか開けていない。

それ以外は全部営業停止にした。

だから、前回と違ってだいぶやりやすいだろう。

前回と同じで研究の続きをしながら、怨霊が来るのを待つ。

が、一向に来る気配がない。

今日は来ないのだろうか?

不安になる。

わざわざ退避命令まで出して、民間人を避難させたのだ。

それ相応の成果を出せないと困る。

が、その後どれだけ待っても怨霊は来ない。

もうすぐ日付が変わろうとしている。

俺はどんよりとした気分になる。

そのときだった。

電話が鳴った。

その音で我に返る。

「もしもし、十六夜です。」

「あ、十六夜君、今から至急、秋葉原に向かってくれ。」

局長が訳の分からないことを言ってくる。

なぜ今から秋葉原に。

別の任務だろうか?

俺はたくさん疑問がわき、尋ねる。

「どういうことですか?」

「秋葉原で爆破テロだ。」

局長から衝撃の事実が聞かされる。

今まで待っていても来なかったのはそういうことだったのか。

俺は心の中で納得する。

「分かりました。すぐに向かいます。」

そう言って俺は電話を切る。

月城たちに連絡する。

「秋葉原で爆破テロ。直ちに現場に急行するからポイント36に集合して。」


秋葉原に着いた。

俺は辺りの霊力値を調べる。

フェイズ4.3といったところか。

怨霊が居た気配が残っている。

が、特段低い場所がない。

どうやらもう圏外らしい。

逃げられた……

住民がいなかったから目的地を変更したのだろうか?

だとすると、危険だが民間人を巻き込んだ戦闘になる。

それは避けられなくなる。

本当に厄介な怨霊である。

「はー。」

俺はため息をつく。

「ため息をつくと幸せが逃げますよ。」

月城がそんなことを言う。

「ため息は幸せじゃないときにつくものだろ。だから、元から幸せはないから逃げることはないからいいの。」

俺はそうつっこむ。

普段通りの屁理屈である。

「そうですね……」

彼女が覇気のない声で言う。

よっぽど疲れているのだろう。

普段の彼女なら何か言い返してくるはずだ。

と言っても彼女に会ってから、4日しか経っていないのだが。

「司令官、次の作戦どうするつもりだ?」

北条がキレ気味に俺に話しかける。

まあ、あれだけ待って逃げられたのだからイラつくのも当然だろう。

「まあまあ、司令官さんは何も悪くないのでそんなに責めないであげてください。」

佐藤がそうなだめる。

「いや、俺のミスだ。待ち伏せは一旦白紙に戻す。」

俺はそう答える。

「それじゃあ、各自撤退していいから。」

俺はそう言って歩き出す。

「ちょっと、私らを置いて帰る気?」

北条がまた突っかかってくる。

「蛍、ちょっと落ち着いて。」

佐藤がそうなだめる。

「そうです。一旦冷静になってください。」

月城が続けて言う。

「いや、俺はもう少しここに居る。」

俺はそう言い残して立ち去る。

「私も残ります。」

月城がそう言って引き留めようとする。

が、俺は無視する。

振り返らず進む。

これは作戦を決めた俺の責任だ。

俺がけじめをつけるのが当然だろう。

初任務だとはいえこんなにてこずるとは想定外だった。

たかがフェイズ2となめ過ぎていた。

あいつらに任せているだけじゃ何も変わらない。

信頼なんてするべきじゃない。

期待なんてするべきじゃない。

俺一人でやらなければ……

また変な感覚に襲われる。

立ち眩みがする。

その瞳は赤く染まる。

俺は何か手がかりになりそうなものがないか探す。

狙われたのはいずれも飲食店。

その中に共通点はないか?

俺は必死に考える。

が、分からない。

同じ系列の店というわけではない。

同じ種類の店というわけでもない。

だとすると、目的は別?

飲食店が目当てというわけではないのか?

段々と正解に近づいている気はするが、何か大事な部分を見逃している気がする。

が、それが何か今は分からない。

ちょこまかと逃げやがって……

凄いイライラする。

俺は結局一旦撤退することにした。

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