第20話 再発1

次の日、俺は昨日の報告書をまとめていた。

例の爆弾魔についてである。

コンコン。

ドアをノックする音が聞こえる。

また月城だろうか?

「失礼します。」

そう言ってサイドテールの女が部屋に入ってくる。

佐藤だった。

「珍しいな。」

俺の口から思わず本音が漏れる。

「そうですね。こうやって二人きりでお話するのは初めてですもんね。」

彼女は穏やかな声でそう言う。

「それで何か用?」

俺はそう尋ねる。

「姉のことで聞きたいことがあります。」

彼女はそう言う。

「姉?」

思わず俺は聞き返す。

こいつの経歴に目を通したが親族はみんな亡くなっていたはずだ。

それなのに今さら何を聞くつもりなのだろう?

そもそも俺が何を知っているというのだろう?

「はい、6年前にAAIに捕らえられた姉です。」

彼女はそう言う。

AAIに捕らえられた?

どういうことだろう?

怨霊だったのか?

わけが分からない。

「AAIの研究施設に居るはずです。特技研に居た司令官なら何か有力な情報を持っているかもしれないと思って……」

彼女はそう続ける。

そういうことか。

頭の中でわずかに納得がいく。

言われてみれば初めて会ったとき彼女のことをどこかで見たことがあると思った。

それは気のせいではなかったのだろう。

俺が昔あった気がしたのは彼女の姉であろう。

ということは彼女は特技研に居るということだ。

どこかの計画で使われているということだ。

「今すぐわかる情報はない。後で調べてみる。」

そう俺は返事する。

「ありがとうございます。」

彼女はそう言いながら微笑んだ。


二日後


「渋谷でまた爆破テロ。」

ネットのニュースが目に入る。

どういうことだ?

怨霊を仕留めそこなっていたというのか?

そんなはずはない。

確かに霊力値がフェイズ5へと収束するのを確認した。

だとすれば、あの場に居合わせた怨霊は事件とは関係がなかったのか?

いや、それはない。

月城からの報告に爆弾を使うと書いてあった。

だとすると、怨霊が複数存在する。

その可能性が一番濃厚だろう。

また、張り込んで殺さないといけないのか……

面倒な作業に気が遠くなりそうになる。

それにこの感じ、一人の怨霊が手下の怨霊にやらせている気がする。

だとすると、手下の怨霊をいくら殺しても意味がない。

あえて逃がして、ボスのところに行くのを追いかけ、ボスを潰さなければならない。

本当に面倒な鬼ごっこになりそうだ。

俺は局長に連絡する。

「もしもし、十六夜ですけど、また爆破テロ起こっているの知っていますか?」

俺はそう尋ねる。

「ああ、どうやら複数の怨霊が組織的にやってるみたいだね。」

どうやら彼もその結論にたどり着いたみたいだ。

「僕もそう思います。」

「やはりそうか。それで今夜も渋谷に張り込む気か?」

彼はそう尋ねる。

「はい、今回はわざと逃がしてボスを見つける予定です。そうでないと、手下が尽きるまでかかりますから。」

俺はそう答える。

「確かにそうだね。それでは今日は住民に行動制限をかけよう。」

彼がそう提案する。

「はい、お願いします。」

俺はお願いする。

「それではまた後で。健闘を祈る。」

「はい。」

電話が切れる。

さて、細かい作戦はどうしようか?

俺は今から作戦を練ることにした。


また夜になった。

俺は彼女たちを呼び出す。

しばらくすると……

コンコン。

ドアをノックする音がする。

「どうぞ。」

「失礼します。」

三人ともそろっているみたいだ。

「知ってると思うが、昨日また渋谷で爆破テロがあった。おそらく前回倒したのは何人かいる手下だ。ということで、今回はあえて手下を逃がしてその後を追い、ボスを見つけ、ボスを殺す。そう言う作戦になる。何か質問は?」

「ないです。」

「ないよ。」

「ないです。」

三人が口をそろえて言う。

「しっかし、初任務なのに厄介な事案引き受けちゃったね、司令官?」

北条がそう言う。

「本当にお気の毒です。」

佐藤がそう続ける。

「まあ、面倒だよな。でも、引き受けた以上やるしかない。俺も全力でサポートするから頼んだよ、三人とも。」

俺はそう答える。

「任せとけ。」

北条がそう言う。

「はい。」

月城がそう言う。

「お任せください。」

佐藤がそう言う。

「あ、そうだ。一個だけ言うの忘れてた。今回は民間人避難させてるから派手にやっちゃっていいから。」

「本当に。」

北条が嬉しそうに言う。

こいつの性格的に暴れるの好きそうだしな。

「ちょっと、蛍、民間人がいないとはいえほどほどにね。」

佐藤がそうなだめる。

「じゃあ、行くか。」

そう言ってまた俺たちは渋谷へと向かう。


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