第19話 復讐計画(ロスタイムメモリー)
高1の頃?
男は記憶をたどる。
そして、一人の人間を思い出す。
「まさか……おまえ……望月……知輝か……」
震えながら男はその名前を口にする。
「そうだよ……さんざん、俺を利用しておいて都合が悪くなったらいじめに加担して……本当、人間ってこんなクズばかりだよなぁ……」
彼はそう言う。
「いや、あれはその不本意ながらやっただけで……その俺は反対したんだけどクラスの人間がそうしろって言うから周りに合わせただけで……だから……その……俺は別に本気でお前のことそう思ってたわけじゃなくて……」
聞いているだけでイライラする。
だらだらとその場しのぎの言い訳を並べて……
これだから人間なんて嫌いだ……
弦がさっきよりも強く張られる。
女の肉体が粉々に切り裂かれる。
そして、弦ははち切れる。
「人から全て奪っておいて謝れば許されるとでも思ったか?大事なものを奪っておいて自分だけ失わずにいられるとでも思ったか?人のわずかな幸せを潰して自分だけ幸せでいられるとでも思ったか?法律が守ってくれるとでも思ったか?道徳が、人間の心が、善意が、わずかな慈悲が、俺を止めてくれるとでも思ったか?残念だけど人にさんざん裏切られた俺にそんな物は通用しねえよ。お前ら人間なんて害虫と同じだよ。邪魔だから駆除する対象。それだけ。だいたい奪うなら自分も奪われる覚悟を持てっての。覚えておけ。恨みは人間の持つ最も危険な感情だ。抱かれれば最悪死に追いやられる。陰キャにそんなことできないってなめてると痛い目見るの。」
「てめえ……」
男はわずかな力を振り絞って彼に立ち向かおうとする。
「ハ短調 月光。」
4本のレーザービームが一斉に放たれる。
皮膚はただれ、段々真っ黒になって……
やがて跡形もなくなった。
「人は思いやりだとか道徳だとか善意を説く。だけど、馬鹿馬鹿しい。何が法律だよ?マナーだよ?一般常識だよ?どうせその隙をついて足を引っ張り合う。蹴落としあう。善意なんて本当は誰も持ってない。人に優しくするのはそうすることで何か自分にメリットがあるから。優しさなんて幻想だ。偽りだ。だったらさあ、いっそ、公平に蹴落としあおうぜ。金を盗んで。邪魔な人間は殺して。奪い合って。な?……ある意味平等な世の中の完成だろ?そもそも、弱肉強食が自然の摂理だろ?変にルール付けてもその隙をついてやり合うんだったら堂々とやりあおうぜ?」
「さよなら……お前が殺した俺の心が恨みとなってお前を襲ったんだよ……俺から唯一の幸せを奪っておいてお前らだけ幸せになろうだなんてそんな都合のいいこと社会が、神が、この世の全員が許しても俺が許さない。お前はそれだけのことをしたんだから。法律で裁けないのなら、正当なさばきができないのなら俺が代わりにお前らを裁く。」
「コーダ。」
彼は空間操作(テレポート)する。
「おかえりなさいませ、主様。お待ちしておりましたの。」
ピンク色の髪の女がそう言って彼を出迎える。
淡い緑色の瞳。
その髪は黒いリボンでポニーテールに束ねてられている。
「お疲れ様、リンネ。」
彼はそう彼女に言う。
「随分派手にやられましたこと?」
彼女が不気味に微笑む。
「まあな、高校時代の恨みだし。一生忘れねえよ、あの頃の恨みは。あの時引き裂かれたように俺も引き裂くだけだよ。」
彼は不気味に笑う。
その瞳にはわずかな光が宿っていた。
「主様らしいですこと。」
彼女はそう言う。
「それでテレズマの収集はどこまで進んだ?」
彼はそう続ける。
「現在目標の5割ほどですの。」
彼女はそう言葉を返す。
「そうか。これからもよろしく頼むよ。」
俺は珍しくそう言いながら微笑む。
「はい、私にお任せくださいませ、主様。」
彼女は嬉しそうにそう返す。
「その、本業の方が忙しくなったとお聞きしていますの……」
彼女が心配そうにそう言う。
「大丈夫だよ。こちらの計画に支障はない。」
彼はそう言って彼女を安心させる。
「そうですの。くれぐれも無茶はされないでくださいませ。」
彼女はそう忠告する。
「ああ、分かってる。それじゃあ、俺はそろそろ行くから。」
そう言って彼は空間操作(テレポート)しようとする。
「はい、ごきげんよう、主様。」
彼女はそう言って笑顔で彼を見送った。
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