第16話 プレリュード1
その日の夜
18時を過ぎた。
そろそろ狩りの時間だ。
俺は三人を呼び寄せる。
これから初任務だ。
しばらくすると……
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ。」
「失礼します。」
そう言って三人が入ってくる。
普段あんなにはちゃけている北条も珍しくキリっとしている。
月城と一緒で戦闘モードになると変わるんだな。
一応あいつも巫女なんだな。
俺の中でわずかに彼女の評価が上昇する。
俺は説明を始める。
「今回の作戦内容を伝える。渋谷周辺で最近連続で起きている飲食店を標的とした爆破テロの阻止と犯人の抹殺だ。おそらく炎系の術式を使う怨霊と思われる。被害者が既に100人を超えている。これ以上増える前に対処したい。そこで今日の夜、渋谷に乗り込む。それぞれ別の飲食店で待機してもらう。4000を超える飲食店があるが、AAIの職員を増援してもらう予定だから。さすがに全部は把握できないけどなるべく多く網羅する。それで爆破テロが起こったら直ちに現場に急行して欲しい。その際、民間人の避難は他の職員に任せて怨霊のことにだけ注意すること。以上が今日の作戦概要だ。何か質問ある?」
俺はそう聞いてみる。
「いえ、特にありません。」
月城がそう答える。
「はい、私も特に異論はありません。」
佐藤がそう答える。
「特に問題はないんだけど、司令官は何すんの?」
北条がそう俺に尋ねる。
こっちが何もしないと疑っているのだろうか?
決して手を抜くつもりはない。
「俺は基本サポートに徹する。霊力を確認して怨霊を追跡したりとかね。別に心配しなくてもただ見ているだけの役立たずにはならないから安心して。」
俺はそう答える。
「そっか。司令官頼んだよ。」
納得したように北条はそう言う。
「うん。任せろ。」
俺はそう言って彼女を安心させる。
「では、行きましょうか?」
月城がそう言う。
「ああ。」
俺はそう返事をする。
椅子から立ち上がって彼女たちのもとへ近づく。
さあ、奏でようか。
プレリュードを!
渋谷に着いた。
俺たちはそれぞれ分かれ、それぞれの持ち場で待機している。
事件が起こるまでもしくは犯人を見つけるまで張り込むだけの単純な作業である。
シンプルだが、めんどくさい。
飲食店の数の多さに対して情報が少ないせいだ。
4000を超える中から絞り込むのは容易ではない。
何せ犯人が飲食店を狙っていることしか分からないから特定のしようがない。
目的も動機も不明だ。
せめて犯人の怨霊になる前の情報があれば、何か手がかりが分かるかもしれないが、あいにくそんな都合のいいものはない。
そもそもどんな見た目の怨霊なのか知らない。
会ったことがないから当然である。
さて、何か他にできることはないかな?
周辺の霊力値が表示された地図を見ながら考える。
フェイズ5.5。異常なし。
できることは何もない。
ただひたすら待つだけである。
暇なので俺は研究の続きを始める。
ちなみに今はブースターの改良の研究をしている。
ブースターとは霊力を増幅させる薬である。
いわゆるドーピングである。
が、薬である以上副作用が存在する。
眠気、吐き気、蕁麻疹。
薬に応じて多種多様である。
ちなみに俺の改良したブースターの場合、理性を失うというものである。
ただただ暴れ狂うようになってしまう。
それでその副作用をなくせと局長からまた無理難題を吹っ掛けられているわけだが……
そんな都合のいいものあるわけがない。
そもそも薬とは主作用に加えて副作用があるものなのである。
いかに副作用を軽くするか。
そこが腕の見せ所だ。
そんなことを考えていると霊力値に以上が見つかる。
フェイズ2。
ここから南西に500メートル。
月城のいる場所から北西に300メートルほどのところだ。
俺は彼女に連絡を入れる。
「負の霊力を感知。北西に300メートル先。現場へ急行して。」
「了解。」
月城がそう答える。
「今、位置情報を送った。」
「はい、確認しました。」
俺は他の二人にも連絡を入れる。
月城に比べて遠いが、5分あれば行けるだろう。
「こちらポイント56、爆発が発生。怨霊は西方向に逃走中。」
送り込んでいた工作員から連絡が入る。
「今、月城たちをそちらへ向かわせてる。もうすぐ到着するはずだ。避難誘導を頼む。」
俺はそう伝える。
「分かりました。」
さて、面白くなってきたね。
お手並み拝見と行こうか。
見つけた。
怨霊が視界に入る。
私は剣を構える。
「風斬。」
剣を振り下ろす。
風の斬撃を放つ。
斬撃が怨霊に命中する。
怨霊の動きが止まる。
やったか?
こちらに爆弾が飛んでくる。
さすがにこの程度で終わるはずがないか?
フェイズ2だしね。
私は剣を横に振るう。
「烈風。」
周囲に横方向の風が巻き起こる。
爆弾が近くで爆発する。
が、周囲の風で無効化する。
傷一つついていない。
これで終わりにします。
「か……」
私は技を放とうとする。
が、視界に小さい女の子が目に入る。
逃げる途中で両親とはぐれたのだろうか?
爆弾が彼女目掛けて放たれる。
今からじゃ烈風でも間に合わない。
何か手段はないの?
必死に思考を巡らす。
が、私にできることはない。
ごめんね。
また守れなくて……
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