第15話 月城颯香5

食事が終わって私は部屋に戻った。

ベッドに飛び込み、ふとため息をつく。

このままじゃ全然ダメだ。

さっき実際にカーテナを使ってみて当たったのは30発中わずか3発。

命中率はわずか10パーセント。

とても実践で使えるレベルじゃない。

強くならないといけないのに……

このままじゃいけない。

せっかく新しい力をもらっても使いこなせなければ、意味はない。

どうにかしないと。

もう失わないために。

でも、司令官頼りになりそうな人で良かった。

あの人なら私の夢を叶えられる気がする。

問題は私の方だ。

明らかに今の私じゃ力不足だ。

今のままじゃ確実に足を引っ張ることになる。

ただ少し彼のことで気になる点があった。

所々で一瞬意識が途絶えているように見えた。

持病でもあるのだろうか?

だが、本人の言うのを聞く限り、どこか具合が悪いわけではなさそうだ。

なら、あれは何だろうか?

発作を起こしたのは私が彼に食べさせようとしたとき、私が彼の自虐を否定したときの二回。

共通点は?

分からない。

あるとすれば、私の行動に反応している。

彼の記憶の中の何かが私と重なったのだろうか?

彼のきれいな青色の瞳はどこか薄暗い。

その目に光はなかったりする。

どこか寂しさを感じているような。

そんな気がする。

そうだとすれば、彼は過去に何か辛いことを経験しているのだろう。

そうすれば、あの涙とも辻褄が合う。

私の何かが彼の過去と重なったのなら納得がいく。

まあ、今のところ分かるのはこのぐらいだろう。

それより、カーテナだ。

早く使いこなせるようにならないと……

そのまま、ベッドで横になっていたがなかなか寝付けなかった。

時計の針を確認する。

時刻は午前2時。

寝付けないので少し外を歩くことにした。

灯りのついていない廊下を歩く。

すると、わずかに灯りの漏れている部屋があった。

わずかに開いているドアの隙間から覗いてみる。

欠さんだった。

こんな時間まで仕事をしているのだろうか?

私はコーヒーでも入れて持っていこうと思い、自室に戻る。

そして、コーヒーを持って彼の元へと向かう。

ドアをノックする。

「どうぞ。」

彼の声が聞こえる。

「失礼します。」

私はそう言って中に入る。

「こんな時間までお仕事お疲れ様です。差し入れです。」

私はそう言いながらデスクにコーヒーを置く。

「ありがとう。」

彼はそう言ってカップを持ち上げそれを飲む。

「何をされてるんですか?」

私は気になって彼に尋ねる。

「明日の任務の作戦の確認だけど。」

彼はそう答える。

「そうですか。何か手伝えることはないですか?」

私は少しでも彼の役に立てればと思い、そう尋ねる。

「別にないけど。それより、明日の任務お願いね。」

彼はそう答える。

「はい、あまり無茶しないでください。」

私は彼にそう忠告する。

「別に大丈夫だよ。実際研究に没頭し過ぎて三日ぐら徹夜するのなんて日常茶飯事だから。このくらい平気だよ。」

彼の口から衝撃的な事実が放たれる。

三日連続で徹夜?

そんなの体を壊すに決まっている。

「駄目です。体調崩しますよ。」

私は心配でそう言う。

「このくらい全然平気だから。実際、昔は体が弱かったが、ここ十年一度も体調を崩したことはないし。」

「それでもダメです。ほどほどにしてください。」

私は強い口調でそう言う。

「……うん。」

彼は私の押しの負けたのかそう答える。

「ほどほどにしてくださいね。」

私は念のためもう一度念押ししておく。

彼の仕事の邪魔になってはいけないので、それを言い終わるとすぐに部屋を出る。

私も頑張らないと……

そう心の中で誓った。


彼女が部屋を後にして1時間ほど経った。

そろそろ終わりにするか……

時刻は午前3時を過ぎたところ。

俺はベッドにダイブする。

ふかふかだ。

こんなに快適なのは初めてだ。

もうここで死んでもいい。

そんな気がする。

それにしても、今日はいろいろとあった一日だった。

まあ、今のところ大した問題はないからよかった。

月城がやたらと距離感近いのは無意識なのか?

故意なのか?

どっちか俺には分からない。

あと、北条が扱えるか気になるが、それも今のところ分からない。

それより一つ気になることがある。

記憶が途切れる回数がいつもより多かった気がする。

いつもは一日に一回あるかないかなのに。

記憶が途切れている間は一体どうなっているのだろうか?

10年前からこういうことは起こり始めたが未だに分からない。

そんなことを考えていると段々眠たくなってくる。

思わず欠伸が出る。

目を閉じる。

段々と意識が消えていく。

そこで意識は途切れた。


次の日


コンコン。

ドアをノックする音が聞こえる。

俺は寝室のドアのカギを開ける。

「おはようございます、司令官。」

そこに立っていたのは月城だった。

「おはよう。昨日はコーヒーありがとう。美味しかった。」

俺はそう彼女に言葉を返す。

「そうですか?なら良かったです。」

彼女は少し頬を赤らめながらそう言う。

どこか嬉しそうでもある。

「その……朝ご飯食べ終わったらカーテナの練習していいですか?」

彼女は俺にそう尋ねる。

昨日全然使いこなせなかったのが悔しかったのだろうか?

ただ、今日は夜から任務だ。

まあ、やる気があるのはいいことではあるが……

「今日夜から出撃だからほどほどにな。出撃に支障があるほど霊力使ったらダメだから。」

俺は彼女にそう釘を刺して、許可する。

彼女のやる気をそぐようなことはしたくない。

「はい、分かりました。ありがとうございます。」

彼女はそう笑顔で返事をした。

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