第14話 カーテナ

「それで次は整備場に連れて行ってくれるんだよね?」

俺は彼女に問いかける。

が、彼女は何も答えない。

さっきのことを根に持っているのだろうか?

「その……さっきはやり過ぎた……ごめん……」

俺は彼女に謝る。

「し……仕方ないから許してあげます。」

彼女はそう言う。

「そっか、良かった……」

俺は安堵する。

「む……無条件とは言ってません。」

彼女はそう言う。

嫌な予感がする。

「何を要求するつもりだ?」

俺は恐る恐る尋ねる。

「一回だけなんでもいうことを聞く権利をください。」

彼女はそう俺に要求する。

一体何を要求するつもりなのか?

俺の中の不安がますます積もる。

「まあ、俺ができることならするけど。」

彼女の機嫌をこれ以上損ねてはいけないので俺は了承する。

「ありがとうございます。」

彼女はいつもの笑顔でそう言う。

「では行きましょうか。」

そう言っていつも通り手を握ってくる。

「うん。」

その後、整備場に着いた。

「その……さっき言ってた武装お願いできますか?」

彼女は俺に問いかける。

そんなこと言ったっけ?

記憶にない。

何回か記憶がとんでいるからその間に約束したのだろうか?

「えっと……何だっけ?」

俺は彼女に問いかける。

「だから、さっきカフェで言ってた剣ですよ。」

彼女がそう言う。

「えっと……どんな剣?」

まだ分からないので詳細を詳しく尋ねる。

「空間操作がどうとか言ってましたけど。」

「ああ、カーテナだね。」

そっか、こいつにカーテナあげる約束したんだ。

「そうです、それです。」

彼女は激しく肯定する。

「じゃあ、今から取ってくるから。」

「ありがとうございます。」

彼女は赤い瞳を輝かせてそう言う。

俺は剣の保管先へと向かう。

特技研から移動するときに持ってきたのだ。

「えっと……これだな。」

俺は金色の剣を持ち上げる。

これがカーテナである。

「はい。」

俺は彼女に渡す。

「ありがとうございます。」

「じゃあ、起動実験と行こうか。」

「はい!!」

「こっち。」

俺は彼女を実験スペースに移動させる。

装置を起動し、周囲の霊力の測定を始める。

「全身の霊力を剣に集中させて。」

俺は彼女に指示を送る。

「はい。」

周囲の霊力が上昇する。

フェイズ6……7……8……9……

順調に上昇する。

剣が光り出す。

鞘から抜ける。

銀色の刃が現れる。

良かった。

フェイズ9でも起動には成功したみたいだ。

「じゃあ、空間操作(テレポート)してみようか。」

俺は彼女に提案する。

「はい。」

「あそこのポールまで移動してみて。」

彼女の姿が消える。

そして移動先に現れる。

誤差50センチといったところか?

まあ、フェイズ9だし座標演算は難しいだろう。

「次、元居た場所に戻ってみて。」

俺は彼女に続けて指示を送る。

「はい。」

彼女がまたテレポートする。

今度は誤差30センチ程度だろうか?

さっきよりも正確になっている。

目標を狙えるほどの実力ではないが長距離移動などではつかえるかもしれない。

「じゃあ、次は斬撃を放とうか。あのポールに向かって放って。」

俺は彼女に指示を送る。

「はい。分かりました。」

「風斬。」

風の斬撃が放たれ、途中で消える。

また現れるが、全然見当違いの方向に飛んでいく。

かすりもしない。

「もう一回やってみようか。」

「はい。」

それから、30発ほど放って当たったのはたったの3発。

10回放ってやっと1回当たるという計算だ。

とても実践で使えるレベルではない。

やはりフェイズ9じゃコントロールは難しいのだろうか?

「お疲れ様。そろそろ晩飯だし、また明日練習しようか。」

俺は彼女にそう提案する。

「はい。」

俺は装置を停止する。

「ありがとうござました。」

そう言って彼女は俺にカーテナを渡す。

「じゃあ、行こうか、食堂に。」

「はい。」

そう言って二人で歩き出す。

なぜか今回は手を握ってこない。

案内が終わったからだろう。

もう迷う心配はないのだからその必要はない。

そう言い聞かせたがどこか寂しい気もした。


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