第12話 司令部1
司令部にて
「ねえ、颯香遅くない。」
赤髪の女がそう話す。
「遅いですよね。何をしてるんですかね?司令官さんとデート中なのでしょうか?颯香さんが迷惑かけてないといいのですが……今朝も忠告したんですけど……」
青髪の女が心配そうにそう話す。
「いや、颯香だよ。そんな大したことしてないって。たぶん、今頃カフェでも行ってるんじゃない?いつもみたいに食い意地張って。」
「確かにそうですね。あの子本当に食いしん坊ですから。とんでもない量食べて困らせてないですかね?」
「いや、大丈夫でしょ……とは言い切れないな。」
赤髪の女も不安そうに話す。
「そうですよね。迷惑かけてないといいのですが……」
「新しい司令官どんな人かな?」
赤髪の女が話題をそらす。
「さあ、颯香から聞いたけどまだ見たことはないですね。」
「どんな感じ、イケメンだった?」
赤髪の女が興味深そうに聞く。
「聞いた限りだと、白髪に青い瞳の小柄な人らしいです。写真でも見たことはないので分かりませんが……」
「そっか。怖い人じゃないといいんだけど。」
「それはあってみないと分からないですね。」
「優しい人希望。それから、仕事少ないほうがいい。あ、それから……」
赤髪の女がいくつも要求をつける。
「あんまり無茶を言ってはダメですよ。私たちだって命かけて仕事してるんですから。仕事は少ないに越したことはないですけど、私たちが働かないと別の誰かが死ぬことになるんですから。」
青髪の女がそう諭す。
「はーい。ごめんなさい。」
そんな会話をしていると青髪の女が門の近くに二人の人間を見つける。
一人は颯香さんで……もう一人はおそらく司令官さんですね。
「あ、ちょうど帰ってきたみたいですよ。」
青髪の女がそう言う。
「どこどこ?」
赤髪の女が興味深そうに聞く。
「あそこです。」
「お出迎えしないと。行くよ、瑠璃。」
そう言って赤髪の女は青髪の女の手を引っ張る。
「あ、ちょっと待ってくださいよ。」
「着きましたよ。」
彼女がそう言う。
ここが司令部か……
研究職時代に武装を作ったときに司令官からいくつかお誘いがあったけど、他人のテリトリーに自分から踏み込んでいくのが嫌でいつも断っていたから実際に見るのはこれが初めてなんだよな。
それにしても、立派な建物である。
俺は感慨に浸る。
これをたった4人で使うわけか……
税金の無駄遣いでは?
そんな正論が頭の中に浮かぶ。
まあでも、政府からすれば怨霊の存在を隠すのにAAIが役立っている以上ケチることができないのだろう。
こちらとしてもこんな立派な施設をもらえて嬉しい限りである。
これなら研究室だって広々と使えるだろう。
「うん、案内ありがとう。」
俺はそう返す。
「それでは行きましょうか。皆さん待っていると思いますし。」
そう言って彼女が門を開ける。
「どうぞ。」
俺は門をくぐる。
一般人に見せてはいけないものだからこんな立派な門までついているのだろう。
「こっちです。」
そう言って彼女がまた俺の手を取る。
いつまでこうしているつもりだろうか?
ずっとそう考えていた。
おそらく司令部についてもこのままなんかじゃないか?
そんな嫌な予感がしていた。
その不安は決して杞憂ではなかった。
あ、これ、他の人間に見られて絶対からかわれるパターンだ。
俺の司令官人生いきなり終わった……
俺はそう悟った……
そして、その予感は的中した。
「颯香、遅いよー。っていつの間にそんなに仲良くなったの?」
赤髪の女がこの状況を見るなりいじってくる。
「おかえりなさい。あんまり司令官さんを困らせてはいけませんよ。」
青髪の女がそう話す。
「これは別に深い意味はないですよ。」
月城がそう言う。
「またまた照れちゃって。正直に話してくれていいんだよ。」
赤髪の女がそう言う。
「いや、その……違いますから。」
月城が否定する。
「その……先に紹介しますね。こっちの赤髪の子が北条蛍(ほうじょうほたる)さん。」
そう言って月城が話題をそらす。
「どうも、北条蛍っす。よろしくっす。」
軽いノリで彼女はそう言う。
肩より少し長く伸びた赤い髪。
紫色の瞳。
正直こういうのは俺の苦手なタイプだったりする。
コミュ障にとってこういう最初から無駄に距離感が近いのは抵抗があったりする。
とはいえ、仕事をするうえで彼女と関わるのは避けられないだろう。
まあ、こういう人間は無視し続ければ、いつかはおとなしくなるのだが。
「よろしく。」
俺はいつも通りそっけなく返す。
「それでこっちの青髪の子が佐藤瑠璃(さとうるり)さん。」
月城が紹介を続ける。
「初めまして。佐藤瑠璃です。これからよろしくお願いします。」
そう彼女はおとなしめに話す。
サイドテールで束ねた青い髪。
青い澄んだ瞳。
そういえば、この顔どこかで見たことがあるような?
気のせいだろうか?
うん、そうだよな。
俺が彼女と知り合いなわけない。
それにしても、礼儀正しいそうな子で良かった。
一人は問題だが、もう一人はまともそうで少し安心した。
「よろしく。」
さっきより少しだけ明るく返す。
もちろんいつも通りぶっきらぼうにだけど。
「あ、私のときよりちゃんとしてない?瑠璃だけずるくない?」
北条がそう言いながら突っかかってくる。
「気のせいですよ、司令官が困りますよ。」
佐藤がそう言いながら彼女を鎮める。
「そうですよ。気のせいです。」
月城も加勢する。
「とりあえず司令室に連れて行ってくれる?」
俺は月城にそう頼む。
「では、司令室へと案内しますね。」
月城がそう言う。
「ああ、頼む。」
俺はそう言う。
「それでは、お二人ともまた後で。」
月城がそう言って歩き出す。
俺もその後を追いかける。
「あ、ちょっと待ちなさいよ……」
北条がまだ何か言いたげだが俺は彼女をほっていく。
「落ち着いてください、蛍さん。」
そう言われながら彼女は佐藤に止められていた。
そんな彼女を見て俺は少し罪悪感を抱いた。
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