第二十三夜 国道一七六号線 某トンネル
これは私がまだ大阪に住んでいた頃のお話だ。国道一七六号線の某トンネルには幽霊が出る、と言うのはわりと有名な話だ。その付近には廃墟なども多くあり、心霊スポットと化している。私たちはそこあたりを、大阪から丹波方面に抜けるために走っていた。
夜もだいぶ更けた頃だったと思う。私たちはもうすぐ某トンネルに差し掛かろうとしていた。すると、運転手が急にブレーキを踏んだので、何事かと思って前を見ると、ハザードを焚いた前の車が、トンネルのすぐ手前で花柄のワンピースを着た女性を車内に乗りこませているところだった。夜だったせいもあってか、その女性の顔は判別がつかなかった。
『ヒッチハイクかな』
そんなこんなで前の車が進み出したので、私の乗る車もそれに続くことにした。前の車の後部座席にはあの女の影が見える。ちょっと長いトンネルを抜けて、トンネルの灯りからヘッドライトの照らす夜道に変わったとき、私たちは衝撃を受けた。
トンネルを抜けた先の道路には、車の一台もいなかったのである。それはつまり、目の前を走っていた車がふっと前触れもなくどこかへ消えた、と。そう言うことになる。私の見間違えの可能性もある。そう思って運転手に尋ねてみた。
『ねぇ、前の車、トンネルの前で女の人拾ったよね』
『運転席側ではわかりづらかったけど、たぶん』
『で、トンネルの中は普通に走ってたよね。女の姿も見えた』
『そう思う』
『ここからが重要なんだけど、トンネルを出た瞬間に、その車いなくなってない? 脇道とかあったっけ?』
『そのとおり。あの車はいなくなった。ついでに脇道はない』
車を止めて調査する、などするとそれはそれでかなりやばそうな目に遭う気がしたので、私たちはスルーして目的地を目指すことにした。
前を走っていた車が実在のものだったのか。多分あの女は生きているものではなかったのであろうけど、車自体連れて行かれてしまったのか。それはいまだに結論づけられずにいることである。
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