第十八夜 実家から見える人魂
このお話しは、第十七夜で触れた廃屋とは別の廃屋のお話である。
私の実家は道を挟んで向かいに大きな駐車場があり、その向こうに古びた伝統的な建築の廃屋があった。私の家の二階からはその廃屋がよく見えるので、風情のある眺めだな、くらいに思っていた。
ただ、その廃屋は少し問題があり、夜十一時以降ぐらいになると、よく青白い人魂が駐車場の辺りをゆらゆらと漂うと、そのうちに廃屋に吸い込まれていくのである。
最初見たときは流石にびっくりしたが、わりとよく出るのですぐに慣れた。帰りの遅い日に目撃しても特に悪い気もしないし、ああまたいるなー、ぐらいであった。飼っていた三毛猫にも見えていたらしく、ベランダの手すりに登った猫が、その人魂をじーっと見ていることもあった。
そのような感じで人魂が日常になっていたある日、その当時高校生だった次男が血相を変えて居間に飛び込んできた。何かあったのかと問うと、次男は声を荒げてこう答えた。
『前の駐車場に! 青白い人魂が!』
『ああ、よくいるよね』
『今まで気づかなかったの?』
私と母はすぐさまそう答えた。次男はバツが悪かったのかわあわあ何事かを言って部屋に引っ込んでしまった。父は、怖くて明日車が出せないと震えていた。
なお、母と長男は我が家の中ではかなり見える。私はほどほどである。父と次男は見えないわりに、わりと取り憑かれる。
私はほどほどだから、怪談などが好きになったのだと思う。
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