第十五夜 さっき会いませんでした?
これは私がまだ高校生だった頃に体験した話だ。
高校の寮に入っていた私は、深夜二時ごろに抜け出して外の空気を吸いにいくことがわりとあった。
深夜二時は先生の見回りスケジュール外の時間帯だと把握していたので、注意されることはそんなになかったように思う。
ただ、ある日私はいつものように深夜外の空気を吸おうとして部屋を出て、トイレに寄ろうか思ったとき、トイレの前に寮の先生が立っていることにはっと気づいた。今まで先生がそこにいることが、すぐ目の前に来るまでわからなかったのである。何もない空間から突然出現した、ようにも感じた。
とは言え、怒られるのは嫌なので
『トイレです』
と断ると
『おう』
という返事が返って来たためトイレに入った。数分して出てくると、先生はもうそのフロアにはおらず気配もない。これ幸い計画続行と思った私は、一階まで降りて外に出ようとしたとき、
外から来たその先生から
『おい!何してるんだ!!』
と呼び止められた。あれ? こんな短時間で寮内の見回りが終わって外にいるのはおかしくない?
と思った私は
『先生? さっきも会いませんでした?』
と尋ねると、
『何言ってるんだ! 早く部屋に戻って寝なさい!』
と言われた。先生はさっき上の階で会ったことを覚えていないようだったのだがら、これ以上言い合いになっても不毛なので、私は自室は戻ることにした。
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次の日、深夜徘徊が見つかるとお咎めが入るのだが、なぜか私にはなかった。
『あの〜昨日は…』と先生に声をかけても『??』という表情をした。私の深夜徘徊はなかったことになっている? そして先生は数日後に事故にあった。
なお、トイレの前で、または一階の外で出会った先生が(例の通り目の部分は見えなかった)本物であったのか、人間であったのかは分からずじまいである。
ただし、この二人の寮の先生を模したおっさんは、その日はもうこれ以上私を外に行かせてくれるなという、時空のおっさんの関連性も疑わなければならないと思う。
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