第十一夜 府道99号線 伊丹空港トンネル

これは私が大阪に住んでいたころに体験したお話である。

友達を伊丹空港まで送りに行った帰り、私は車の助手席に乗っていた。伊丹空港へ車で行くにはだいたい府道99号線のトンネルを通ることが多い。


カーナビのオーディオから流れる音楽に耳を傾けながら、私は早く帰ってバイトいかないとな、みたいなことを考えていたように思う。


すると、ラジオではなくカーナビのハードディスクの音源から流れていたはずの音楽が、なぜかトンネルに入ったとたんガサガサ、とノイズが入って聞こえなくなったかと思うと、しばらく、シーン、とした無音の状態が訪れた。そしてトンネルの中程に差し掛かったとき、オーディオからぼそりと。


『コロシテヤル』


という野太い声が流れた。驚いているうちに車はトンネルを抜けたので、私は運転手に尋ねてみた。


『ねえ、聞いた?』

『うん、聞いた』

『なんて言ってた?』

『『殺してやる』だって』

『あー、やっぱり……』


今のところ、私もそのときの運転手も死んではいない。ちなみに府道99号線伊丹空港トンネルは、事故はたまにあるようだが幽霊が出る、という噂はあまり聞かない。

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