~カースト制度~
1ヶ月が経ち、それぞれにグループができはじめる頃。
俊もまた、自身の所属するグループを作っていた。
最初は、人見知り故にあまり親しくない人たちの輪の中には入れなかった俊に、同じ小学校だった敦也が声を掛け、それから、学園の初等部から所属していたおとなしめのグループ、広瀬甲斐(ひろせ かい)・鷹嶋朔弥(たかしま さくや)・高原聖(たかはら こうき)とも親しくなり、5人のグループを作ったのだった。
一番大人しくて小柄な俊を敦也と甲斐がいつもサポートしてくれていて、聖が雰囲気を作って、朔弥がそれを調整する、と言った役回りになり、物静かだがそれなりに学園生活を過ごせるようになっていった。
しかし、大人しい俊たちに、同じクラスにいたジョーカーグループには、恰好の玩具候補であったのに変わりはなく。
いくらジョーカーグループが騒いでいても、注意する事は憚れ、勝手にモノを使われても、何も言えない状況だった。
気が先走る聖は、何度かジョーカーグループに抗議しようとしたが、朔弥に止められ、モヤモヤした気持ちが募っていった。
そんな中、在るジョーカーが、聖に、上納金を払えば、お前も意見を対等に言えるだけの地位が与えられると持ちかけられ、気持ちが揺らぐ。
そして、結果的に、聖はそのジョーカーに上納金を納める事にしたのだった。
一時的なジョーカーにランクアップできた聖は、気分が良くなり、クラスのジョーカーグループの方へも顔を出すようになっていく。
最初の頃は、自分が所属していたグループへは、手出しできないように手を回していたが、次第に気が大きくなっていって、そんな事すら煩わしくさえ感じ始めて。
今までは朔弥が止めに入っていたが、今は立場が変わったため、誰も聖を抑える者がいない。
故に、聖は調子づき、俊にちょっとした嫌がらせをし始めるようになっていった。
昼食に持ってきたお弁当を取り上げて、勝手に食べたりする事も多々あった。
俊は何も言えずに、されるがままになっていたが、さすがに朔弥がいい加減にしろと反抗し、聖の暴走を止めようとした。
しかし、そこはカースト順位の壁が立ちはだかり、他のジョーカーたちが、朔弥を反逆者として見做し、一般的な下民としてでなく、その下の下僕的な立場にされてしまうのだった。
俊は朔弥を助けようとするが、敦也と甲斐に止められ、「今手を出せば、今度はお前が下僕になる」と釘を打たれ、何も出来ずにいた。
「……こんなの、間違ってる!この学園の生徒も、教師も皆…普通じゃない!」
「「………」」
俊の言葉に、敦也も甲斐も返事が出来なかった。
結局、朔弥は学園全体からの差別的な扱いに耐えられず、暫くしてから転校していった。
「はっ、根性ねーな。これくらいで逃げてたら、社会に出ても負け犬決定だろうよ!」
傲慢な態度で朔弥を馬鹿にし、そんな変わり果てた聖の姿を見て、俊たちは距離を置くようになった。
それから暫くしてからの事。
今度はなんと聖がランクを落とされて、下僕になっていた。
「いい気になりすぎたな。上納金も、もう払えないくらいに借金してたって、笑える~」
金を渡していたジョーカーに馬鹿にされ、反撃しようにも事実を言われているので、言い返せない。
実は聖は今までの上納金を、家の金から勝手に盗んでは渡し、足りない分を借金してまで支払い続けていたのだった。
いくら家庭が少し裕福だったとはいえ、負債を抱えれば制限が掛かるのは当たり前。
繰り返される負債に額が大きくなっていき、これ以上は貸せられ無いと、資本元から拒否されてしまったのである。
その結果、次第に上納金を支払えず、さらにランクを落とされて、借金で家計は崩れ、一気に破産してしまったのだった。
「貧乏人に反論なんて、出来るわけないよな~。あはは!」
ジョーカー達は聖を蔑み、哀れんで、こんな話を持ちかける。
「ちょっとくらいなら、お前の家の負債を軽減させてやっても良いぜ。ただし、この学園にいる間、ずっとお前が下僕だけどな!」
ゲラゲラと下品な笑い声を上げる彼らに、聖は何も言えずに拳を握り、涙ぐんでいた。
俊たちはそんな聖を遠くから見守り、でも、敢て何もせずにいた。
―――アイツは自分から僕たちを裏切った。
自業自得、助けるなんて偽善だーーー
そう自分に言い聞かせるように、3人は見て見ぬふりをするしかなかった。
そして季節は変わり、冬休みに入る前に、聖は体調不良を理由に、学校へ来なくなり、そのまま転校していった。
しかし、その後もカースト制度は続いていて。新たな犠牲者が出ては、体調不良を理由に学校へ来なり、耐えきれずに転校する者が出続けた。
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