第四話「裏切り者」
「えっ…あたし?」
「……第一の試練の時…彩葉ちゃんが合理的に判断してクリアできましたけど…確かに彩葉ちゃんの記憶力で助かった事はありましたけど、そう何回か見ただけで、覚えられるとは到底思えないと言うか…」
「…なるほど、だから最初から道を知ってたから分かったんじゃないか…と。」
「……はい…」
「………」
沈黙が続く。
彩葉が裏切り者なのか…?
だが、確かに言われてみれば怪しい面も結構あった。
「…ま…待ってくれよ…彩葉は…裏切り者なんかじゃ……」
春人はどうにか彩葉を弁解しようとしている。
……彩葉は何も言わない。
「正直に…話してください…私も誰が裏切り者だとしても攻撃をしたりするつもりなんてないんです。………ただ…理由を……」
「…あのさ〜。」
彩葉が急に口を開いた。
「……あたしが、裏切り者に心当たりがある。って言ったら……信じる?」
「…えっ…?」
……心当たり?
「…あるなら教えて欲しい。……僕も誰が裏切り者だろうと理由さえ説明してくれればそれで良い。」
「…そっか〜。……あのね。あたし深夜まで起きてたの。」
彩葉が話し始める。
僕はその時間寝ていたはずだからその辺は分からない。
「……あのさ、翼くん。……一応確認なんだけど、あたし達ってカウンター席のお姉さんに案内してもらったよね?」
「…ああ…して貰ったけど…」
「……どこと、どこと、どこを案内して貰った?」
………何を言っているんだ?
…そんなの…
「………僕達が案内して貰ったのはこの部屋だけだろ。」
「…そうだよね〜。」
彩葉は少し悲しそうな顔をして続ける。
「その時、私以外にも起きてた人が居てさ〜、こっそりその人の跡つけてたの。」
「…そうなのか。」
「…そしたら…その人、あたし達が案内されていないはずの "リビングホールみたいな場所" に迷わず歩いて行くところを見たんだよね。」
「…一体…それって誰の事を……」
…後ろを振り返ると、春人が真っ青な顔をしていた。
「……春人…?どうしたんだ?」
「…い…彩…葉…お前……気付いて…っ…」
「…あたしだって信じたくなかったよ。……もしかしたらたまたまかもって。………だから、ちゃんと説明してよ。」
「……それは………それ………は…………」
沈黙が続く。
………どういう事なんだ…?
「くくっ…ふふ…あっはははっ」
春人は急に笑い出した。
「ははっ……はぁ……だったら何だよ。俺が裏切り者で、どんな理由でも必ず殺さないって?……ばっかみてー…」
春人は顔色や声色を変えて、口を開いた。
「…どんな理由なんだ?」
「……逆に何で教えて貰える事前提なんだよ。」
「…そうか。」
「………はぁ…俺の父さんはここの運営側なんだ。……て言っても父さんは正義に拘っていると言うより、ただ単に人を傷付けるのを娯楽として…って感じだ。……これで満足か?」
父親が運営側…?
確かに考えても見なかったが、必ずしもないとも言い切れないのか。
「…それで、どうしてお父さん側に協力したかまではあたし達に教えてくれないと。」
「…話す必要ないだろ。…お前達を巻き込んだのは俺。それが真実。」
「………なるほどね〜。」
本当にそれだけなのか…?
本当は何か理由があったんじゃ…。
「…それだけじゃない。俺の父さんはお前達がこのゲームに参加する前から人を殺したりしてた。……彩葉の姉さんや中学時代の友達とか。」
「………は…?……いや、中学時代の友達はまだしも姉さんは事故のはずじゃ…」
「…事故に見せかけて殺した。」
「…どうして?」
「…彩葉が俺に関わったから。……だから俺のせいで彩葉の姉さんや友達は死んだ。…そもそも俺は巻き込むつもりで同じ高校に通ったんだ。………だから……だから…っ…」
春人はそう言って部屋から逃げ出した。
「ちょっと春人!!」
彩葉は春人を追いかけに行った。
…僕は何もできないままここに立ち尽くすのか…?
「…翼くん、今はとりあえず二人にしてあげましょう。」
「…え…?」
「…多分これは二人の問題だと思うんです。……多分私達が間に入ったとしても、お話の邪魔になってしまうかも。」
確かに一理ある。
僕達はあくまで高校からの付き合いであって、幼馴染ほど知ってはいない。
「…多分、私達に出来ることは、二人の決断を待つことだと思うんです。……私達は、意外とあまり二人の事を知っていないから。」
「…そうだな。」
―――……一体、2人はどんな決断をするんだろうか。
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