第二話「第一の試練」

―――…扉を開けた。

そこには、結構距離が遠いが目の前に恐らく出口らしい扉があった。

だが…―――…渡れない…――…渡るための橋がないんだ。

今居る場所とドアの場所はかなり差があり、ジャンプで辿り着ける距離ではない。

どうやって渡れって言うんだ…?


「これ…どうやって渡れば良いんでしょうか…」


玲奈も困惑している様子だ。

これをどうしろと…


「そう言えばルール説明がまだだったな。今からルール説明を行う。」

「……ジャスティス。」

「パッと見橋が無いように見えるだろうが、実際は透明な橋がある。………だが、目に見えない橋なため、下に落ちて死ぬ可能性もある。」


渡るのも命懸けという事か…


「あと、ただ渡るだけだと少し簡単過ぎるから、アスレチックみたいにジャンプしないといけない部分もある。」

「…なるほど…流石にそう簡単に渡るだけにはならないのか。」

「しゃがんだりするのはNGだ。しゃがんだり手を添えたりして床があるかないか調べられたら困るのでな。」


流石にそう簡単にはクリアさせてくれないのか。

第一の試練とか言う割に難易度が高いな。


「……どうしてそこまでして参加者の人達を殺そうとするんだ…?」

「だから正義の為だと言っているだろう。」

「正義って…人を犠牲にするのが本当に正義だと…?」

「正義の為なら必要な犠牲だ。」


……どうしてこいつはそこまで正義に固執

する…?


「それでは、ルール説明は終わったので私は去らせてもらう。」


ジャスティスはその場から去った。


「……それじゃあ、とりあえず僕が先に行くよ。僕は不死身だし。」

「なるほど〜翼くん不死身だもんねー………で、もし万が一落ちた場合どうやって上に登ってくるの?」

「…あっ…考えてなかった…」

「無計画だね〜………まぁあたしは案がない事はないけど、人が死ぬとこ見たくないよ〜って場合は目と耳塞いでね。」

「彩葉ちゃん…何するつもりなんですか?……わ…私は見ないでおきます!」


本当に何をするつもりなんだ…?

無能力の彩葉が手をかける事は無理なはずだし、一体どんな案なんだ…

僕達が立ち止まっている間も、色んな人が挑戦して、失敗して、死んでいっている。

悲鳴をあげながら、落ちていく。


「…ひっ…!…うっ…」

「…ん〜?…どうしたの春人急に後ろから抱きついてきて。……ビビりだね〜。」

「…う…うるせー…!」


1人、また1人と落ちていく。

何人か運良くゴールに辿り着く人が増えたりしていた。

……僕達は見てるだけなのか…?

その時、彩葉が口を開いた。


「よし!それじゃあ私達も行こっか!………私についてきてね〜。………で、春人はいつまで私の後ろに抱きついてるの?」

「…うぅ…うるせー…」

「ついてきてって……道が分かったのか?どうやって…」

「……とりあえず、他の参加者さん達もあたし達についてきてください。」


そのまま彩葉について行って進む。

……正直本当についていってゴールまで辿り着けるとは思わなかったが…簡単に辿り着いてしまった。


「………どうやって、道が分かったんだ…?」

「ん〜?簡単だよ〜…他の人が通る道を記憶してただけ。」

「…か…簡単…?」

「私にとっては簡単だよ。確実にゴールできるためにかなり時間がかかってしまったけど。この生まれ持った記憶力のお陰で学年一位とってると言っても過言ではないからね〜。」


確かに彩葉は記憶力があって、物をなくした時などに助けてもらう事がよくあった。

……つまり…その記憶力を使うために落ちていった参加者の人達を見殺しにしたのか…?


「……他に方法はなかったのか…?……もしかしたら犠牲者を1人も出さない方法だって…」

「……じゃあ翼くんは他に良い案でもあったの?」

「……それは…」

「そりゃ犠牲者が一人も居ないのはそれが一番いいとは思うけど、だからってあたし達がその為にできる事って何?………無闇に進んでたところで、犠牲はもっと大きくなってたと思うけど。」


確かに言われてみれば、彩葉が道を知って案内した事で助かった参加者の人達の方が多い。

彩葉は意外と合理的な性格なのかも知れない。


「…今のあたし達が出来るのは、脱落してしまった参加者さんたちの分も生き残る事だけだよ。」

「…そうだな。」

「…わ…私も…頑張ります…!」


そして僕達は扉を開けた。

その時、他の参加者の人達と俺達4人は別の場所にワープした。

……―――…謎の空間に付いたと思ったら、そこでジャスティスが待っていた。


「どうやらクリアしたようだな。」

「…まぁな…」


一体何の用だ…?

クリアおめでとうだけを言う訳ではなさそうだが…


「…とりあえず他の奴らには眠って貰うか。」


ジャスティスが僕以外の3人に何かしようとしている。


「…おい、他の3人に何する気だ…?」

「…うっ…い…彩葉に近付くな!!………彩葉は……俺が守っ…」

「良いから寝ておけ。」


ジャスティスは、他の3人を気絶させた。

……何がしたいんだ…?

そもそも何で僕だけが……


「それでは、神崎 翼、お前にだけ特別ミッションだ。」

「…は…?……特別ミッション…?」

「お前達4人の中にいる裏切り者を探せ。それでそいつを陥れようが許そうがお前の勝手だ。」

「…いや、僕達の中に裏切り者なんている訳…」

「これは運営側からのミッションだ。それでは説明はしたので、私は去らせて貰う。」


……僕達の中に裏切り者…?

そんなの居る訳がない。

玲奈は人を騙せそうなタイプではないし、春人は友達を大事に思っているタイプだ。

…彩葉も、多少合理的なだけで今回は僕達を助けてくれた。

……でも…もし本当に居るんだとしたら……

とりあえず、探してみるしかない。

安心する為にも…探すしかないんだ。

もし本当に裏切り者が居るんだとしたらそれは一体…―――…誰なんだ…?

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