第一話「能力者」

「う〜ん…能力ってどうやって貰うんだろう。とりあえず座れるとこあるし、ここで休んどこうか。」

「…ごめん…ありがと。」


彩葉が春人を休ませている。

彩葉も怖いだろうに、周りに気を遣ってくれているみたいだ。


「どう?少しは楽になった?」

「…うん…少しは…。」

「…歩けるかな〜?」

「…こ…子供扱いするなよな!」

「よ〜し!言えるぐらいには元気出たみたいだね〜!それじゃあ行こっか!…玲奈と翼くん待たせてごめんねー!」


どうやら春人が少し元気を出したらしい。

どうにか元気になれたようで良かった。


「春人くん元気になれたみたいで良かったです〜!」

「み…美月さんががんばって元気出してるのに俺が出さない訳にも行きませんし!!」

「はいはい良かったねー……ん?あれ…何だろう。」


彩葉が"能力者センター"と看板が貼ってある部屋を指さした。

「自分の能力を知りたい方はこちら」とも書いてある。

……ここに入れば良いのか?


「よくお越しくださいました。あなたは……初めて来た方なので、能力を与えて貰いに来た方でしょうか?」

「…は…はい。」


謎の女性がカウンター席から話しかけて来た。

この人が能力を与えてくれる人なのか…?


「…わたくしが能力を与えると言うよりは、あなた方はもう能力を頂いており、私達わたくしたちが何の能力かを視て教えるだけでございます。」

「なるほど…」

「ちなみに運営側も能力を持っている場合がありますが、運営と言っても自分の能力は決めれません。参加者様も運営側も能力自体はランダムです。」

「えっ!つまり、敵側の人が弱い能力の可能性もあって、あたし達がかなり強い能力を持つ可能性もあると?!」

「そう言う事でございます。」


なるほど、つまり能力次第ではジャスティス達に勝てる可能性もあるのか。


「それでは、皆様の能力を視させて頂きます。」

「…はい。」

「…あら!神崎様の能力は不死身らしいです!」

「不死身…強い…のか?」

「いやいやどう考えても強いでしょー!……てかこういうデスゲームみたいなので不死身って大丈夫なのかな…?」

「ええ、問題はありませんよ。」


不死身、相手の攻撃が当たっても死なないと言う事か。


「それでは次は、美月様。あなたの能力は…回復です。その名の通り相手を回復できます。」

「回復って事は、後衛って感じですかね…足手まといになりたくないので頑張ります!」

「そして貝塚様。能力は、ナイフを操る事が出来ます。」

「…ナイフを…操るか…つまり攻撃は俺って感じか。」


玲奈は後衛で回復、春人はナイフを操って攻撃か。


「そして雫芽様。あなたの能力は――……ん?」

「ん〜?」

「…その…あなたの能力は………―――……無能力です。」

「うんうんなるほどねー!まぁあたしともなればそれぐらい………ん?今……何て…?」

「無能力です。」

「…は……え…?………えぇぇぇぇ?!」


無能力?!

全員に能力を渡す訳ではないのか?

……どう考えても不利過ぎる!!


「いやいやいや、絶対ミスでしょ!そもそも与えるって言ったじゃん!何であたしだけないのさー!!」

わたくしもそこまで詳しくはなくて…」

「そんなぁ…」

「…ぷっ…あははっ!お前だけ無能力って…ふふっ」


春人が爆笑し出した。


「なっ?!いや笑い事じゃないからね?!」

「…つまりお前が無能力な分、俺達が守れば良いんだろ?…任せとけって。」

「えー…そう言う問題?……てかさっきまで春人ビビってたじゃん。本当に出来るんですかー?」

「なっ…う…うるせー!」


こう言う状況でも喧嘩はするんだな…

まぁ喧嘩できる程の元気が出たのは良い事かも知れない。

それに春人の言い分も一理ある。

無能力で不利になるからといって、ハナから彩葉を見捨てるつもりは元からない。


わたくしもジャスティス様から教えて頂いてるだけで詳しくはなくて…「相手の能力を2倍でコピー出来る能力」、「蘇生出来る能力」、「サイコキネシス」などがあるとは聞いて居ますが。」

「…なるほどぉ…ちなみに〜…バグとかで実はそこらへんの強そうな能力の可能性は…?」

「バグ…ですか…わたくしの視る力は絶対なので、ありえないかと。」

「そっか〜…」


とりあえず全員の能力は知り終わった。

次の段階に行った方が良いのか…?


「それでは、皆様には第一の試練に行っていただきます。」

「…第1の試練…?」

「こちらに扉が見えますよね?……この扉を開いてお進みください。………皆様が戻って来れる事を、祈っています。」


見た目はただの扉だ。

……この扉を開けるのか…?


「行かないとまずそうだね〜…どっちにしろ行かないことには先に進めなさそうだし…」

「回復出来るだけの私でも大丈夫でしょうか…」

「美月さんは応援してくれるだけでも全然!!」

「……それじゃあ――行くか。」


気は進まないが、今のところは進むしかない。

―――必ず生き残ろう。

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