プロローグ②「非日常」

「聞いてくださいよ美月さん!彩葉が毎日俺に突っかかって来てー!…昨日なんて〜…ベラベラベラベラ」


「ただいま。二人の分の飲み物買ってきたぞ。」

「たっだいまー!」

「おっ!ありがとな翼!」

「翼くん、彩葉ちゃん、ありがとうございます〜!」


2人共仲良く話していたようだ。


「春人ー!あたしには感謝はないのかな〜?」

「お前に感謝なんてねーよ。どうせ付いて行っただけだろ〜!」

「はぁ?!あたしも金出しましたけど!!春人のコーラ分の金返せー!!」

「はーい絶対嫌でーす」


春人はニヤニヤしながら彩葉を煽っている。


「おいお前達、早く帰りなさい。帰りが遅くなると危ないぞ。」


担任の先生だ。

帰りが遅くなるのを心配して声をかけてくれたらしい。


「あと彩葉、あまり生徒と揉み合うな。」

「え?!いやいや、春人だって非はあると思いますけどー!!」

「とにかくやめなさい。」

「えー?!」

「とりあえず俺も先に帰っているからな。お前達も早く帰りなさい。」

「とにかくあたしだけのせいじゃないのでー!!……じゃあまた!」

「僕達を心配してくれてありがとうございます。先生、また明日。」


何故か彩葉だけが注意されていたな…

ちなみに注意から免れた春人はと言うと、後ろで笑いを堪えている。

……流石に彩葉に同情するな…


「先生も帰ったみたいですし、私達も帰りましょうか。」

「そうだな。玲奈。」

「あたしも帰る〜!」

「俺も帰っ…ぷっ…あははっ!」

「私春人のせいで怒られたんだからねー…?笑い事じゃないんだけどー…」


4人で帰る事になった。

春人は終始大爆笑していた。

……どれだけ可笑しかったんだ…


「それじゃあ僕と玲奈はここまでだから。」

「お二人共、また!」

「あたしと春人もここまでだ!二人共またね〜!」

「美月さん!!また!!」


春人…あからさまに玲奈にだけ態度違うな…僕にもまた明日ぐらい言えよ…って言うのはやめておこう。


「今日もお二人共元気でしたね。私も見習いたいなぁ…」

「そうだな。」


玲奈と他愛ない話をしていた。

―――……その瞬間、鈍い音が鳴って、僕と玲奈は倒れた。


「――……誰……だ…」


僕は犯人そう発して、倒れたまま気絶した。


…ぉ………て……くん………きて……

「―――翼くん起きて!!」

「…玲……奈…?……ここは…」


玲奈に声をかけられて目を覚ました。

……それにしてもここはどこだ…?

やけに広くて部屋全体が白い。


「起きて良かった…私もここがどこかは分からないんです…目が覚めたらここに居て。」

「あたしと春人も玲奈と同じ感じだよ。」

「…そう…なのか…」


僕達を襲った犯人は誰だったんだ…?

気絶するまでだから定かじゃないが、黒いパーカーでフードを被って居て、とても顔は見えなかった。


「全員目覚めたようだな。」


覆面を被った謎の人物が話しかけてきた。


「誰だ…?」

「私はそうだな。ジャスティスとでも名乗っておこうか。今からお前達はあるゲームに参加するんだ。」


そのジャスティスと名乗る男性は、その謎のゲームとやらの説明をし始めた。


「お前達に何度か試練を与える。その試練を乗り越え、生き残った者のみ正義となる。」

「…は?」


訳が分からない。

そもそもこの人の言っている正義って何だ?


「いやいや待ってよ〜…急に正義がどうこうとか言われても、正義って人それぞれだし、もうちょいあたし達に説明してくれない?」

「ああ、そうか。自覚がなかったか。」

「自覚…?」

「お前達は、大罪の葉であり悪の芽なんだ。だから咲き誇る前に抹消させてもらうんだ。」


…本当に何を言っているんだ。

大罪…?そもそも僕達は罪なんて犯していない。

――…これから犯すはずもない。


「自分達は罪なんて犯していない、これからも犯すはずなどない。……と言いたげだな?」

「…も…もちろんですよ…!……私も…翼くんも…彩葉ちゃんに春人くんだって!……罪なんて犯すはずありません!」

「犯していない。犯すはずがないと思っている奴程無自覚に罪を犯すんだ。」

「…そ…そんなの……」


玲奈は何も言い返せず黙ってしまった。

確かに必ずしも犯さないとも限らないのかも知れない。


「そんな事言われたって納得なんて出来る訳ないだろ。罪罪って…じゃあ僕達をこんなところに連れてきた事は罪じゃないとでも?」

「罪人に罪を償わせる。または罪を犯さないよう教育するのは正義だろう?」

「は?」

「お前達は、大罪の葉であり悪の芽だ。花が咲き誇る前に抹消させてもらう。」


だめだ…こいつには話が通じない。


「後にお前達には一人づつ能力を与える。生き残りさえすれば手段は厭わない。相手を蹴落そうと罪人の卵同士で協力しようと自由だ。それでは私は去らせてもらうよ。」


そう言ってジャスティスと名乗る男性は部屋から去って行った。

どうやら僕達以外にも参加者が居るらしい。


「…嘘…だ……嫌だ…そんな……何で…」


春人は真っ青な顔をして放心状態になっている。

そりゃそうだ。

こんな訳の分からないゲームに参加しろだなんて…こんな非日常…誰だって嘘だと思いたい。俺もそうだ。


「…で…これからどうするの?……蹴落とし合う?それとも協力し合う?」


彩葉が口を開いた。


「…そんなの…協力し合うに決まっているだろう。僕は蹴落としたりはしたくない。」

「……私も……です。」

「まぁあたしもハナから蹴落そうと思ってないけどねー。………春人はどうする?」

「……彩……葉……俺…は……」

「……まぁこの感じじゃ相手蹴落とせそうもない状態だね。春人も協力って事で。」


全員で協力し合う話になった。

そりゃそうだ。僕達は蹴落とし合ったりなんてしない。

ジャスティスとか言う奴なんかの思い通りになんてならない。

―――……絶対に全員で生き残ってやる。

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