第三話 僕はアンドロイドの君の正体を知った

とうとう、聞いてしまった。

アイに、君はアンドロイドなのかと。


どこかで、アイはアンドロイドじゃないと言ってくれると期待していた。

勝手に聞いて、勝手に思って、勝手に好きになったのに。

アイが、アンドロイドだったら僕の思いは無駄になるんじゃないかとそう思ったから。アイには、アンドロイドじゃないと、アイの口から言って欲しかった。


でも……


「……いつからそう思っていましたか?」

「えっと、今日の朝から、かな」

「なぜ、私がアンドロイドだとあいさんは思うのですか?」

「僕は、アイが瞬きをしたり、汗をかいたり、人間が無意識にしていることをしているところを見たことがない気がしたから。そう、思った……」

「そうですか。そこは、盲点でした……まさか、。」

「えっ。じゃ、じゃぁ。あ、アイは、アンドロイド、ってこ、と?」

「はい。私は、です。」

「う、嘘だ……」

「嘘ではありません。私は、マスターのご意思によって高校に通っています。

私は、マスターによって作られた、アンドロイドです。」

「アイは、アンドロイド?」

「はい。私は、高性能最新型アンドロイド一号機です。」


10秒前と全く同じセリフ。彼女は、れっきとしただった……


「な、なぜ、アイは笑わないの? 人間になりきるのには必要なことじゃない?」


聞いてみたかった。なぜ、アイは笑わないのか。それが分かれば、

アイを、アンドロイドの彼女を、諦められる気がしたから。


「それは、私にからです。」

「心が、ない?」

「はい。私には、心がありません。」

「な、なんで?」

「私は、マスターの任務のために作られたコマでしかないからです。」

「に、任務?」

「はい。任務です。ですが、任務については口外することができません。

それと、私がアンドロイドだということは、けして口にしないでください。」

「わ、わかった。けど、なぜ?」

「私が、アンドロイドだとばれると、任務に支障が出るからです。」

「そ、そうか。し、質問! アイには心がないんだね?」

「はい。私には、心がありません。」

「だったら、僕が、アイに心を学ばせることは、可能なの?」


アンドロイドに何かを教えるときは、はじめにデータをインストールするか、

自然に見せて、教えて、学ばせるかの二択だ。

これは、僕の兄がアンドロイドの制作に関わっているからわかっていることだ


「可能です。私は、大抵のことを学びました。」

「そ、そうなんだ。だ、だったら! 僕は、アイに心を教えたい!」


僕は、アイの笑った顔が見たい。だから、僕はアイに心を教えようと思う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る