第一章 アンドロイドの君は素っ気ない

第一話 アンドロイドの君

僕が、彼女の正体に気づいたのは高校に入って間も無くのことだった。


自己紹介の時に、みんなは、緊張していた。

なのに、彼女だけは違った。

彼女は、綺麗な目鼻に、シュッとした輪郭、艶やかな長い髪で、りんご飴のような赤い唇を動かして、


関口せきぐち アイです。これから1年間どうぞよろしくお願いいたします。」


と、言った。

高校生活初日とは思えないぐらい、堅苦しい挨拶だった。

でも、その後は特に問題なくアイは過ごしていった。

僕は特にアイを気にかけてはいなかった。

もちろん、隣の席だから少しは話す機会があった。

でも、アイはすぐにどこかに行ってしまうことが多かった。だからあまり話す機会がなかった。

でも、アイについて一つわかったことがあった。

アイは、全然笑わない。

友達と話しても、クラスの男子がギャグを言っても全然笑わなかった。


だから、僕はアイの笑った顔が見てみたかった。

あの綺麗な顔が笑うと、どんな顔になるのかがすごく気になった。

だから、僕はアイのことをよく見た。

いつ、どんな時に、どんな気持ちになるのかを見てみた。

すると、アイの色々なところがわかった。

犬よりも猫派なこと。お年寄りに優しいこと。国語より、数学が得意なこと。

そして、アイのことをよく見ていると僕は二つのことに気がついた。


一つ目は、僕はアイのことが好きになってしまったということ。いつの間にかアイのことを目で追うようになっていて、いつもアイのことを考えていた。


二つ目は……


こと。


そんなことあるのだろうか。

人間は必ず瞬きをする。瞬きをしない人なんて見たことがない。

アイは人間じゃないのだろうか。でも、アイは学校に来ているし、ご飯も食べている。水だって飲んでいるし、汗だって……


汗? アイが汗をかいているところを僕は見たことがあるっけ……?

アイは体育の授業を受けている。この間、持久走だってやっていた。

でも、アイが汗をかいていた記憶がない。持久走をやれば誰でも少しぐらい汗をかくだろう。


アイは、彼女は、人間じゃない?

そんなこと、嘘だ、嘘だ……!

僕は、人間じゃないアイに恋をしてしまったのか?

だとしたら、アイはなんなんだ!?


人間にそっくりで、仕草も、性格も、初めからような……

持っていた……?



まさか、……?


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