第5話 わたしたちは練習したい
ああー金持ちになって美人な恋人がほしい。キーンコーンカーンコーン。ぼんやりしていると、今日も授業のおわりをつげるチャイムが鳴った。
「おいユージ、ダンジョン遊びにいこうぜ」
「まじ授業かったるかったー今日こそはダイヤモンドを掘りだして学校やめてやるぜ」
解放感に満ちあふれたいつメンは、ユージの机をとりかこむように集合した。だべりながら学院の門をぬけ、商店街から馬車にのって街の郊外へ————ダンジョンのまえには同級生や先輩たちの顔がちらほらあった。今日は運悪く有名冒険者の顔をおがむことはできないまま、ダンジョンにできた長蛇の列へならんだ。
「おいあれ」
「ルイーズさんたちとアルフォンスだ、いいなあ」
「アルフォンスでいけるなら俺でもいける
「ははははマジうける。おまえこないだも似たようなこといってふられてたじゃん」
「えー俺きいてない。イーサン詳しく」
「うわっやめろ」
「別にはずかしいことでもないじゃん。もう同級生はみんな知ってるし」
嘘だろ。ひざの力がぬけた。
「そんな絶望するほど嫌ならいわねえけど」
「えー俺だけ仲間はずれかよ」
まあでもどうせ知られることになるのか。ユージはみずらかうちあけた。
「となり組のルーナにこくってふられたんだよ。おととい」
「あーなるほどな。ユージに
「知らね」ユージはそっぽをむくと、列がすこしすすんだ。
◆
ツルハシをつんだ台車をおしていると、レイチェルさんが交代してくれた。アルフォンスはお礼をいって、ボトルの牛乳に口をつけた。冷たくとろっとした牛乳がほてった体を冷やしてくれる。タオルで首まわりをふくと、ひんやりとした洞窟の風に背筋がぞくっとした。
「アル君っていっぱい水筒もってるよね」
「はい、こっちが牛乳で、あとの二本はお水です。年明けの測定までに身長をのばしたいので」
「まじか、展望えぐいね」
「もうナタリーさぼんないでよ」
「あーごめんごめん。でもさアル君ダイエットもしてるんでしょ。牛乳いっぱい飲んでたら、
ナタリーさんはレイチェルさんのひっぱる台車のうしろを押しながらいった。
「うーん、どうなんでしょう。まだ牛乳のみはじめてちょっとしかたってないのでなんとも。実はまえまえから体重のおちは悪くなっちゃってたんです」
「あーわかるわかる。途中でおちなくなるよね。そんでいらいらしてお菓子食べて爆死すんのよね」
「なにいってんの、たかが一週間食事制限しただけのくせして。そういえば三か月でどのくらいおとしたの?」レイチェルさんがふりむいた。
「ちょっと恋人になんてこというのっ」
「六キロくらいですね」
「ナタリーもすこしは見習ったほうがいいわよ」
「ひどっ」
「がんばったのね」
「はい!もうちょっとやせて背がのびたら最高です」
ルイーズさんにほめられて、今日はいい日だ。
「あ、ルーナから女子会しようって連絡きてる」
「えータイミングわる。パーティではじめてのうちあげだったのに」
ダンジョン探索をおえて帰り道、レイチェルさんに友達からメッセージがきたようだ。
「ぼくだったら今度で大丈夫です」
「ごめんね、なんかすごいぐちりたいみたいで」
「じゃあアル君に甘えて、今日は女子会ね。じゃあまた明日」
「はーい、さよなら」
家に帰ると、今日はお姉ちゃんとママが夕飯の準備をしてくれていた。
「それでね道の途中で手をふって別れるとき、クールなルイーズさんも手をふりかえしてくれたんだ」
「あらあらグッジョブよ、アル。そういうとき未練たらしい男は嫌われるからね」
「でもママ、付きあったらわがままいうのも大事じゃない。彼氏がたんぱくすぎて
「そうね。それでもアルちゃんがわがままいうのはちょっと早いかなあ。ようやく清潔感がちょっとではじめて、
「ママ、傷つくこといわないでよ」
「しっかりかわるもんね。最初は余計軟弱になるだけだとおもったのに、おもったこといわせるだけでこんな大人びるなんて」
「ふふふ実は昔、パパにこっそりおしえてもらったの。パパも昔は感情的だったんですって」
「ええーあの
「そのときはモテなかったけど、感情的な子供時代をすごしたからこそ、大人になっておちつけたんですって」
「たしかにママにおもったことをはなすようになってから、学校でダイエットのことはなしてもはずかしくなくなったかも」
「それはあんたがダイエットに成功してるからじゃないの」
それはいえている。
「そんなことないわよ。ママの助言だってきいてます」
「あーもうわかったからはりあわないでよママ」
今日も我が家はにぎやかだ。ルイーズさんたちもいまごろ
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