第4話 わたしたちは冒険したい
最近、友達がさまがわりしてしまった。五月初旬の
誰がアタッカーをやるのか。どうやってタンクをやってくれる仲間をさがすのか。不人気なポジションや、レアなスキルをもった子には同級生があつまっている。みんなメンバー勧誘をしながら、視線は中央のバトルフィールドにむいていた。
アルはルイーズパーティの中衛位置にじんどると、右手には
開始の合図と共に魔法をぶっぱなしたアルは、自分にヘイトがむいた瞬間走りだした。相手の後衛アタッカーの魔法のヘイトをあつめたまま、ルイーズさんとつばぜりあいしていた敵前衛の横に盾でつっこんだ。
いれかわるように相手陣地へとびこんだルイーズさんが後衛ふたりをノックダウンして試合は終了した。前々回の授業のときと同じ、ルイーズパーティの勝利だった。
次のパーティが対戦準備のためにたちあがった。アルがバトルフィールドからもどってくる。また腕と胸板はたくましくなった
「ごめん付きあわせて」
「おつかれさま。大丈夫だよ」
ダンジョン実習は参戦せずとも単位がもらえることもあって、見学者はすくなくない。でも来年は総合コースがなくなってしまうから、同じ授業はうけられないかもしれないな。
「そっか」アルがとなりに腰をおろした。ほんとうに顔まわりがすっきりした。心なしか肌も綺麗になったようにみえる。
「そ、それよかさ。やっぱりルイーズさんに告白するの?」ケントはまわりを確認してから、ささやいた。
「え、どうして?」アルはとまどった。
「ダイエット成功じゃん」
別パーティの模擬戦がはじまって、まわりはそちらに夢中になっている。
「
アルは笑っていた。そうか、まだダイエットが成功しただけなのか。なぜかわからないけど、アルにおいていかれている
◆
ルイーズが相手後衛ふたりをノックダウンしたところで、試合終了の笛が鳴った。ナタリーはアルの援護用に待機させておいた魔法をといて、先生のまえに整列した。また圧勝してしまったよ。バトルフィールドからでると、同級生たちが歓声と拍手で
「あーまた調子のってんでしょう。ダメだよ」
「いだっ。いいじゃん。アルがはいってからわたしたち調子いいんだもん」
レイチェルにほっぺたをつまむと、すこしひっぱってからはなした。彼女はタオルで汗をふきながら、ひとあし先を歩いてゆく。となりに腰かけると、彼女はもう一枚のタオルをわたしてくれた。えへへへ。
「最初は正気かうたがったけどね。あの装備、もしかして
あ、アルがいる。ナタリーが手をふると、彼もきがついて手をふりなおしてくれた。あいかわらず面白い装備編成だな。亀の甲羅のようにせおった盾は、遠くにいても彼であることを証明していた。
「あのルイーズが推薦するくらいだからね。でもさ、一体どこで仲良くなったのかな」
「あんたなにいってんの、アルフォンスはクラスメイトじゃない。いくらでもはなす機会なんてあるわよ」
「いやそれはないっしょ。加入するまでアルとルイーズがはなしてるところなんてみたことないもん」
しゃべっていると、第二戦がはじまった。ユージもすっかり勧誘してこなくなったなあ。きっとアルの実力におったまげてあきらめたんだろう。ナタリーはドリンクをのみほしながら、第二戦の参加者たちをにらみつけていた。
ナタリーはまわりをみまわした。ルイーズはまだお手洗いからでてこない。
「ふたりが付きあいはじめたらダブルデートしてみたくない?」
こそこそっと耳元ではなしかけると、レイチェルが
「すまぬっ でもさ楽しそうじゃない?パーティでおたがいカップルなんて」
「まあいい雰囲気ではあるよね。みたかんじアルは
レイチェルはハエでもおいはらうように耳をこすっていた。
第二戦が中盤にはいろうとしたころ、ルイーズはもどってきた。強い陽射しをあびて、赤みのある長髪が輝いている。彼女はすわらずにいた。
「アルならあそこにいるよ」
ナタリーはささやきかけた。
「ありがと」
「あいかわらずクールだねえ」
「あんたはもうちょっとクールになったほうがいいかもね。このへんとか」
わき
「やっぱり、明日から走りこみに参加決定ね」
「いやいや、わたしは後衛の魔法使いなんだよっ?!」
ぜったいに嫌だと手をふると、彼女は
「あ゛っ ?ダンジョンでもしものことがあったらどうすんの」
「それはレイチェルが守ってくれるでしょっ」
おもいきりかわいこぶると、レイチェルがしなだれかかってきた。普段ははずかしがり屋のくせに、やっぱりちょろい————あれ?
「ダーメ。わたしたちと明日から一緒に走りこむの。新メンバーだって意欲的に参加してるんだもん、ね゛?」
怪力がひめられし細い腕を腰にまわされ逃げ道はとだえた。青筋をうかべた笑顔の彼女に、ナタリーはうなずくことしかゆるされないことをさとった。
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