第2話 研修旅行
兄も、もちろんモテた、プリンスとしてすでにその立ち位置を明確にし、スポーツでも学業でも類まれなる才能を発揮しているのだから、帝王として君臨していると言ってもいい。
しかし、それは、却ってまわりを寄せ付けないオーラを醸し出していて、
「あいつには触れてはいけない」
という、まるで貴重品であったり、ちょっと揺らすだけで大爆発を起こしてしまう、ニトログリセリンのような効果を、まわりに与えていた。
大学生として学業に邁進したり、自分の啓発したりして、成長著しい二人であったが、二人とも大学生になったことを機会に、松川コーポレーションの社長である松川社長は、二人の息子を会社に招いて、もちろん、入社させたわけではないが、アルバイトのような形で、ちょっとした仕事に従事させていた。
松川の方は、企画部、営業部などを総括する部署に配置され、定岡の方は宣伝部に配置された。
松川の仕事はあくまでも企画や営業の仕事を知ることが目的で、定岡の仕事の方は、新人賞をまだ受賞まではしていなかったが、その文才の実力派定評があったこともあって、文章とアイデアを生かした宣伝効果を狙ったのだ。
つまり、松川に対しては、研修的な意味合いが強く、定岡は研修だけではなく、実務にも精通するものであった。どちらの方にやりがいがあるかというと、もちろん、その人の感じ方であろうが、松川としては、定岡を意識しているせいもあってか、少々面白くない気分になっていた。
だが、それは松川が決して劣っているというわけではなく、定岡の実力がハッキリしているだけのことだった。だが、松川にはそれが許せない。しかも、自分が次期社長ということもあり、そんな思いを表に出すわけにもいかず、いかに気持ちを押し殺すか、それが次第に苦痛となってきていたのだった。
定岡は、そのうちに新人賞受賞が決定し、学校でももてはやされ、会社でも宣伝部では、祝賀会まで開いてくれた。
松川に対しては、社員が皆、
「次期社長」
という意識を持ち、腫れ物に触るような態度を取っていたが、定岡に対しては、いくら社長の息子とはいえ、
「妾の息子」
という意識もあって、松川のように腫れ物に触るような態度で接することはなかった。
しかも、彼の端麗な容姿に惚れる女性はたくさんあった。
これも一種の玉の輿なのかも知れないと思っている女性もいるようで、中には邪な気持ちを持っている女性もいたが、定岡は勘も鋭いところがあるので、そんな女性に対しては敏感だった。
邪な考えを持った女性が、定岡の考えているよりも多い気がしたのは、それだけ甘い考えを持っていたからではない。それは大学でも同じことだったが、相手が誰であろうと、自分を見ているのは、容姿だけに見える人も邪に感じるからだった。
本当は自分の才能の方を重視して見てもらいたいのに、容姿だけを見ている女性を邪と考えるのは、少し極端であろう。
兄である松川には、そんな弟の考え方が分かる気がした。
――自分だったら、そんなことは思わない――
と感じるのだ。
せっかく好きになってくれるのだから、容姿だけでもいいというのが兄の考えで、これは兄の方が、英才教育を受けてきた影響なのかも知れない。弟とは同じ英才教育と言っても立場の違いから別の英才境域であり、その違いがこの感覚の違いに結び付いているのは間違いのないことだった。
松川は、自分が少々のことは寛大に考える人間であることに気づいたのは、弟に対して嫉妬を抱くようになってからだった。それまでは、
「これは誰にでもある考えなんだ」
と、英才教育を当たり前のこととして受けていたが、どこかで疑念を抱いていたというのも分かっていた気がする。
それに比べて、弟は英才教育が兄とは違っていること、そして一般の人とも違っていることで、
「俺って、中途半端な人間なんじゃないのかな?」
という疑念を抱いたこともあったが、すぐに打ち消していた。
打ち消すことができるような英才教育が施されているのであって、それがナンバーツーたるゆえんである。
「その他大勢の人は、頑張ればナンバーワンになれるかも知れないが、ナンバーツーとして運命を決められた人は、どうあがいても、ナンバーワンになることはできないんだ」
と教えられてきた。
もし、ナンバーワンが失脚したとしても、ナンバーツーが繰り上がり昇格をするこということは、他の会社ではあり得ることなのだろうが、ここのような同族会社ではありえない。
いや、他の同族会社ならありえるのかも知れないが、松川コーポレーションとしては、最初から、そういうシステムで運営されるように、初代の社長がそれを社訓としていたのだ。
二代目もそれを踏襲し、三代目の父親も従った。もうここまでくれば、この体制は盤石で、この体制が崩れるということは、会社の存続の危機は免れないということでもあったのだ。
会社というものがどれほど大変なものなのか、大学生であり、会社で仕事に従事すると言っても、アルバイトであれば、まだまだ甘い考えであることはしょうがないとしても、このアルバイトという仕組みが本当に二人のためになるのかどうか、実は二人ともそれなりに疑問に感じていたのだった。
特に腫れ物にでも触るように接せられるまわりを見ていると、どこか自分たち松川一家が失脚するのを待っているかのように思えて、そんなことを考える自分が嫌だった。
特に女性社員は、意識としては弟を意識しながらも、次期社長である自分に、色目を使っているようにも思える。それは、自己保身のためなのか、それとも、社長夫人に収まるという玉の輿を狙ってのことであろうかと思えたのだ。
しかし、実際には、弟に対してであれば、いくら容姿端麗と言っても、あくまでも妾の子であり、恋愛にはいいかも知れないが、結婚は考えられないという思いを持つ人も多いだろう。
下手をすれば、
「付き合っている間に、せいぜいお金を使わせて、結婚の手前でやめればいいんだ」
と思っている人もいるだろう。
もちろん、社長に乗り換えるなどできるはずもなく、いざとなれば転職してもいいと思うだろう。
結婚して家庭に収まってもいいかも知れない。それまでにたっぷりと定岡にお金を出させればいい。
何とも恐ろしい考えであるため、ここまで考えている人がどれほどいるか、甚だ疑問ではあったが、まったくいないとも言えなかった。
松川に対してアプローチを仕掛ける女性も数人はいたが、こちらの方がまだ正統派の恋愛から、結婚という玉の輿をリアルに夢見ている女性たちだ。
松川は、弟を見ていて、モテている女性の中に、邪な、しかも悪意のある女性が存在していることが分かった。
それは、松川が定岡のことを、弟であり、他人であり、さらには客観的に見ることができる相手だと感じているからであった。
だが、実際に定岡に自由にできるお金というのは限られていた。
それはきっと先代が、妾の子に対しての他の女性がちょっかいを掛けることで、松川コーポレーションの存続が危うくなることを危惧してのことであったのだろう。
それだけ、三代目にもなると、会社の組織としての規範はしっかりとしたものがあり、だからこそ、社会不安も乗り越えられる体力を持った会社に成長できたのであろう。
そんな松川家を安泰だと思うようになっていると、大きな間違いだった。
危険がすぐそばに迫っていることを、それまで危険がないことを予見しながら、あわりに目を光らせていたにも関わらず、危険が迫る時というのは、えてして、安心している時であった。
静かに迫りくる恐怖ほど恐ろしいものはない。どこからやってくるのか分からないので、全体を見渡していると、一度見逃してしまうと、もう一度同じ位置に戻ってくるまでに、結構時間が掛かった仕舞ったりもするだろう。
「その時、すでに遅し」
などということも結構あったりする。
それはまるで船舶に供えられたソナーと呼ばれるレーダーのようではないか、アンテナがあって張り巡らせる人間のレーダーは、なかなか機械のようにうまくいかないものなのではないだろうか。
松川コーポレーションは、今は都心部の一等地の高層ビルに本社機能を有しているが、支店や工場をいくつも抱えている。その中で、F県K市は特別であった。都心からは少し遠いが、夏は涼しく、避暑地としても有名なところなので、避暑をかねての研修ということで、二人は赴くことになった。
F県K市は何が特別なのかと言って、前述をご覧になっていれば、おおかた想像もつくであろうが、この土地が松川コーポレーションの発想の地であった。さすがに昔の事務所はすでになく、近代的な事務所になっていた。ただ、倉庫や修理工場の建物は現存していて、時々解放されて風を通している。
創立記念日になると、社長を始め幹部がやってきて、お祓いをする儀式になっているのだが、それも本部を都心に移してからの伝統行事として、ずっと行われてきたことだった。
定岡はすぐに研修としてくる分には、何ら障害はなかったが、松川はサッカー部の中心選手なだけに、
「はい、そうですか」
と、なかなかすぐにはうまくいかなかった。
しかし、会社側の粘りで夏休みだけという話で、松川を研修に送り出してくれた。相手が次期社長に決定している人だけに、大学の部活で拘束することはできなかったのだろう。
二人のK市での研修は、一か月ほどということになった。
実際に修理の肯定から、機械の扱い方。そして、生産ラインの勉強などを主に行う。
松川はそちらの流れに精通することを課題とし、定岡の場合は、さらに、仕入れから販売に至る流れ、さらに経費などの総務や庶務の仕事までを見ることを課題とされた。
松川は、
「深く狭く」
定岡は、
「浅く広く」
という課題に挑戦することになる。
それも次期社長と、次期秘書という立場からの課題であるが、言われるまでもなく、二人とも自分に与えられる課題がどのようなものか、最初から理解していたようだった。
そういう意味では、この二人の兄弟は優秀だった。
得てして、世襲会社の次期社長候補が複数いた場合など、全員が優秀というのは難しい場合が多い。二人のように血は繋がってはいるが、腹違いの兄弟ともなると、余計な嫉妬や自虐などはないものであり、それぞれのいいところを引き出すにはいい環境なのかも知れない。
しかも、二人ともそれぞれに違った英才教育を受けているというのも功を奏しているのかも知れない。そのことを一番よく分かっているのは、減債の社長の松川氏だったのだ。
松川の母親と定岡の母親が仲がいいというのも、家族としてはありがたいことだった。
それも松川氏が、妾の家族を同じ家に住まわせるという、一見危険な賭けに見えることをうまくやってのけたのがウルトラCのようなものだった。
それだけ定岡弘子という女性が穏やかな性格であり、松川鮎子も、本当は一人で嫁に来て寂しかったというのもあったのかも知れない。話し相手という意味だけでも弘子はありがたい存在だったことだろう。
もう一つよかったこととしては、松川氏が最初から、
「次期社長は貞夫で、哲郎は秘書として、社長を全面的に支える役を担ってもらう」
ということを決めていたことだ。
その分、鮎子も変な不安を持たずに済むし、弘子の方も、なまじ期待などせずに済むからだ。
そもそも子供たちの間で、最初から問題のないような英才教育を施されているのだから、これ以上のことはない。
そういう意味では、松川氏の壮大な計画は、何年にもわたって、気付かれてきたものだったのだ。
貞夫が母親を慕っているというよりも、哲郎が母親を慕っているという思いは強いようだ。
――母親が頑張ってくれているから、今の自分はいるんだ――
と哲郎はいつも感じている。
母親の控えめの性格が遺伝したこともよかったのかも知れない。そもそも控えめな性格だからこそ、妾という地位に対して不満を持たずにいられるのではないだろうか。
定岡は世間で妾というのがどういう目で見られているかということを実際には知らない。それだけの英才教育を受けてきた。
「俺は秘書としてナンバーツーになるために、生まれてきたんだ」
と納得できた。
ナンバーワンにはなれなくても、ナンバーツーは保証されている。目標がはっきりしている状態からのスタートは、途中で目標を見定めるのとどちらがいいのか、難しいところではあるが、松川コーポレーションとしては、このやり方が最高だと思っている。
この研修には、本部から、営業本部長と、管理部長のどちらかが、行動を共にするようにしている。二人がどうしても抜けられない事情を持っている時は、社長自らは研修に立ち会うというころになっていた。三人ともダメな場合には、営業副本部長が立ち会うということで決定していて、そのスケジュールもすでに決まっていた。
研修日数は全部で二十五日あるが、十日ずつをそれぞれの本部長がまかない、残りの五日を社長自らということになった。
最初の十日は本部長に任せ、その後、二日ずつくらい社長が入り、最後の日にまた社長が来るという日程が組まれた。最後の日は、ある意味家族水入らずと言ったところでの打ち上げのようなものがあるのかも知れない。
二人にとっては、初めての泊りでの研修になるので緊張もあった。普段は屋敷での生活だったが、、こちらではホテル住まいである。研修とはいえ、二人ともまだ大学生であり、しかも哲郎はまだ未成年だった。
とはいえ、高卒で社会人になっていれば、今は仕事を覚えるのに必死になっている時期だ。
入社前からこんなにも手厚く研修を行ってくれる会社などないだろう。
そもそも、まだ就活時期でもないのに、すでに進路が決まっていること自体、誰もが恨めしく思うほどで、まわりの人からすれば、
「あの二人は別格なので、比較するだけ無駄だ」
と思っていることだろう。
比較しても、やっかみしか生まれてこない。それは誰もが分かっていることだった。
研修一日目には営業本部長が一緒だったので、まず影響活動から見学することになった。
支店には、営業部。現場を仕切る修理部と改造部、さらには、庶務、経理などをしている管理部に分かれていた。
営業部は、自分の受け持ちのエリアを持ち、既存のお客と、新規開拓を目指す部分との二つに分かれている。
二つに分かれていると言っても、同じ人が両方を受け持つわけで、分かれているのは、地域だけであった。
基本的に既存の顧客を大切にしながら、新たに新規開拓を目指すのが一般的なやり方である。
「既存のお客さんに定期的に回っていると、そこからいろいろな情報を貰って、それを新規開拓に結び付けるんだ。たとえば、顧客が絵営業会社だったとすると、彼らも新規開拓を目指しているので、その部分に乗っかることもできるし、彼らの既存の顧客をこっちも狙うこともできる。それには、相手の担当と仲良くなって、そのあたりの情報を仕入れることで、こちらはそれを精査し、いけるかどうかを考える。最初が肝心だということもあるので、情報をしっかり精査しないと、やってはいけないこと、口にしてはいけないことなどをしてしまわないとも限らない。一度嫌われると二度といけなくなるのが、営業の辛いところでもあるんだ」
と、営業の先輩が言っていた。
二人はメモを取りながら、熱心に聞いている。まだまだ大学生としても初々しい限りである。
「最近は、長かった景気低迷から少し上向き掛かっていると言われているけど、実際にはそんなことはない。どうしても、相手の会社の方も、何かの契約を取り付けるには、かなりの勇気がいる、特に刑事節減はいまだにどの会社も重点課題の一つだからね」
とも言われた。
「そこでも、情報が生きてくるわけですね?」
「ああ、そうなんだ。相手が何を欲しているのかを見定めていかないと、違うことを進めたりすると、相手から信頼も得られない。相手とすれば、この人は何も言わなくても自分の言いたいことを分かってくれると思っただけで、安心感が急激に上がるというものだ。信頼を得るというのがどういうことなのか、相手に会って実際に話をしてみないと分からないことだからね」
と、営業の人はそう言った。
この話を訊いて、定岡の方は納得していたが、松川の方は、前のめりで聴いていた。
自分がこれから進もうとする道にも精通することだと感じたからで、定岡の場合は、納得したうえで、その後の実質的な話が自分にとって大切だと分かっているので、実際の話の内容が大切だと思った。
それだけ、リアルな発想と広範囲な発想を秘書として歩む自分には求められていることを感じたのだ。
最初の十日間ほどは、何事もなく過ぎた。それぞれの本部長は、いると言っても、何かをするわけではなく、研修のための、立ち合いという程度なので、本部の自分の机がこちらに移動したという程度で、業務に支障はなかった。二日くらいで入れ替わるので、本部の仕事が滞ることもなく、問題はなかったのである。
そして、いよいよ社長の日がやってきた。
「社長のことだから、本部長さんたちと違って、いろいろ興味を持って聞いてくるかも知れないね」
と松川が言った。
「ええ、そうですね。社長って本当はこうやって営業所を回ったりするのが本当は好きなんじゃないかって気がするんですよ」
と定岡がいう。
「どうしてだい?」
と聞くと、
「結構、茶目っ気があって、落ち着きのないところがあるでしょう? あれはきっと現場を時々は見たいという気持ちからの落ち着きのなさじゃないかって思うんだ。若い頃の血が騒ぐんじゃないかな?」
と、定岡は分析した。
「なるほど、定岡君もそういうところがあるのかい?」
と松川はニヤニヤしながら聞いた。
「いいえ、僕にはありませんよ。どちらかというと、お兄さんの方じゃないんですか? スポーツをやったり、アウトドア派でフットワークが軽いのは、お父さん譲りかも知れませんよ」
と定岡がいうと、
「そうかもな」
とまんざらでもなさそうだ。
松川は定岡に言わせて、悦に入ることが結構ある。この時もそうだったようで、ニコニコしながら聞いたのも、分かっていて聞いた証拠であった。
そんな会話は、一日の研修が終わって、食事も終わった後の大浴場での会話だった。二人の宿泊しているホテルは、会社員の研修に使うようなビジネスホテルではなく、普通の観光ホテルだった。重役や社長クラスの人が宿泊するホテルで、社長のご子息であれば、当然のことなのかも知れない。
二人はこの大浴場が好きだった。表には露天風呂も作られていて、露天風呂から星を見るのも好きだった。
その日も二人は露天風呂から星を眺めた。
「東京じゃ、こんな星空見ることできないもんな。露天風呂に浸かりながら、満天の星空を眺めるなんて、本当に贅沢な気がするな。これが研修だなんて思えないくらいだ」
と松川がいうと、
「まったくですね」
と、定岡が答えた。
二人は最初の一週間ほどはずっと一緒に行動していたが、途中からはそれぞれの専門的部署を中心に研修を行うようになったので、一緒になることは少なくなっていた。
「定岡君は研修の方はどうだい?」
と訊かれて、
「ええ、結構専門的な話になってきていて、面白いですよ。大学ではまだ一般教養の段階で、専門的なことはやっていないので、先に研修で勉強しているような感じですよ。お兄さんの方はどうなんですか?」
と聞かれた松川は。
「俺の方も、そうだなぁ、学校では絶対に教えてくれないような実地研修を目の当たりにしているので、もうすでに自分が社会人になったんじゃないかって思うほどだよ。営業ってすごいよな。皆それぞれに自分の特徴や味があって。それで相手を安心させたり信用させたりするんだから、やってみないと分からないことだって結構あるんだろうって、思うようになったね」
と、松川は言った。
「お兄さんは、きっとそういうのを肌で感じて、感じたことを自分でするわけではなく、オーラを醸し出すことで、人を引っ張っていくんでしょうね。やっぱり人の上に立つ人なんだろうって思いますよ。その点、僕はそんなお兄さんの裏で、その力を判断して、いかに大きく見せるかということを模索しながら、会社の方は、実務としても見ていかなければいけないんだって思います。やりがいはあるんだろうなって思います」
と定岡がいうと、
「お前はそれでいいのか? トップになりたいとかいう野心のようなものはないのか?」
と聞かれた定岡は、
「僕は、わきまえることを一番最初に覚えさせられましたからね。それはそれでいいんですよ」
と答えた。
二人は各々、次の日の社長が自分たちに対して、懐かしそうに微笑んでくれるのを想像しながら、その日はゆっくりと、床に入ることができた。
明日の運命を知ることもなく、明日のこの時間、どうなっているというのだろう?
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