第5話お葬式へ
木枯らしがスカートの裾をかき乱す
夕暮れ時。夜に限りなく近い時間
家に一人帰る。
父と母の面影へ「ただいま」を告げ
今日はエラの葬式だ。と伝えた
母に「送っていこうか?」と聞かれそうだけど
何も言わなかった。
ただ、相変わらず微笑んでくれた。
2階の自室に上がり
ベットにリュックを放り投げる
三度目の葬式
喪服は持っているが、それもサイズが合わない
なにより、エラと会うなら制服がいい
必要な物だけ持ち
マフラーを首に巻き、顔をうずめる
学校指定のピーコートを着込み
「いってきます」と
エラの葬式会場に向かう
冷えた刃と白い溜息
天條さんの夜道の警告から今日で三日が経つ。
三日間、夜道での不審なこともなく、学校での嫌がらせもなく
平穏な三日間。
葬式会場は一駅向こうにある
流れる並木の道
今は寂しい枝を晒しているが
春になれば、美しい桜並木の小道になる
途中まで一緒に通っていた
エラとの思い出の道
学校へ往くような気でいた
いつも通り、この道の先でエラが待っている
そんな感慨を打ち消すように
、、、目の前の一区間だけ
街燈がつぶれている
辺りは暗闇が押し迫る
ギャァ、、ギャァと鴉の声が響いていた
進まなければ駅へ向かうことはできない
が
見なければ、どうということはない
ポケットに手を突っ込み
薄暗い足元だけを見る
白いスニーカー
心なしか明るく見える
どうでもいいことを考えよう
絵本のような穏やかになれそうな考え方
一つ目の街燈の足
闇に溶け込む赤茶の錆
二つ目の街燈の足
兄弟で言ったら次男
三つ目の街燈の足
ほら、「何もない」
大丈夫
そうだ。何もいない
わたし以外には誰もいない
、、エラと会うのもまだ先だし
やっと暗闇を抜け
一つ目の分かれ道。
四つ辻が、エラと落ち合う場所
白銀の月が辺りを照らして
罪も、悪人もすべて照らしてくれる
エラとの秘密
しばし、畏怖の心で月を見やる
墓場までの距離は自分次第だが
きっと、墓場まで持っていこう。
12月にしては生ぬるい風が吹いた
吸い込まれた先に
グレーのスウェットが見えた
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