第3話夢のような少女

いつかのおはなし


ほの暗い、物置の中。

一つのランタンをりんごの空き箱に乗っけて

二人は身を寄せ合っていた。


<、、そういって探偵は去っていった>

<おしまい>


パタンと薄汚いハードカバーの探偵小説を閉じる。

読み聞かせていた相手は物足りなさそうに

コチラを見ている

「、、、もうおしまいなのね」

「早いかな」

上目遣いで見たって、ページは増えない

「早いわよ、、」

仄白エラ《彼女》は

「この本、まだ続くんでしょ?」

と、おかわりを要求している


「そうだね、、あとどれくらい続くんだろう」

かび臭い黄ばんだページをパラパラ持て余す


「最初から読めば、またもと通りよ」

柔らかな花の香りがふんわりと広がる


「最初って、どの位」

「うーんとじゃあ、出会いの場面からね」

「分かった」


・・・・・・・・


中学二年の

12月のはじめの頃。彼女わたしは、それはそれは美しい女の子と出会いました


まだ身を貫くような寒さじゃなかったころ

彼女は校舎の裏の水仙の花畑でひとりぼっちで空を見上げていました


そこだけ景色が明るく、スポットライトが彼女のためにっているようでした


人を美しいと感じたのはこれが初めてでした


しばし、その光景ゆめに身を縛られていると


彼女はこちらに気付き、絵画ゆめではないことを思い知らされました


「なに」

彼女ゆめは声を発したのです


ガラス球を転がしたようによく通る声

ふれると崩れてしまいそうな


儚さ


女神という言葉が一番ふさわしいと思います


「なんでもない」

ただ、あなたを見つめて居ただけ


そういうと、クスクス笑ってくれました


彼女ゆめは笑いもするのです


「貴女、お名前は」

彼女はそう言いながら スポットライト《ゆめ》から歩いて出てきました


「獅子あびる」

目の前の彼女は私より三つくらい頭が低く人形のようでした


「わたしは、仄白エラ。よろしくね、あーちゃん」


なんとなく、私たちは秘密を共有したような気になっていました

心地よい気分でした






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