第538話 半世紀 🎥



 三十九歳の若さでカトリック系の大学の学長に抜擢されてなお「こんなに苦労して来たのだから、もっとわかってくれていいはずだ」という不満をくすぶらせていた。「置かれた場所で咲きなさい」「なにも出来なくていい、いつも微笑んでいなさい」など尊い啓示を得たのは、さらに星霜を重ね、還暦近い年齢になってからだった。


 目の前で父親を惨殺される(二・二六事件での陸軍幹部)という壮絶な体験を持つ女性の声をアーカイブスで聴き、半世紀という途方もない時間が肌に痛かったです。ちなみに、海外のある現代アーティストも、愛人を同居させた父親への愛憎を巨大な蜘蛛のオブジェ制作に託し、半世紀後にようやくトラウマ呪縛から解放されたとか。


 五十年――ひとの一生の大半に相当する長い歳月ですが、細胞に刻まれた原体験があとかたもなく昇華されるまでに最低限必要な時間であること、奇しくも東西の女性先達たちが提示してくれているようです。それは極めて残酷な事実ではありますが、一方で、焦らなくていいのだよという、やさしい寛容が見え隠れしているとも……。




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※子ども電話科学相談が四十年になるそうです。回答者のひとりの地質学者さんが「千五百万年前(たしか(^-^;)の愛知県には火山が活動していたことを土壌が示している」と語っておられました。当初の視聴者が五十歳前後になっていること&地球史の途方もない長さ VS 国内外の稚拙な大人の増殖に、あらためて慄然としました。




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