第525話 軽み 🐦



 なぜあんなに勢いこんだのか、われながら呆れます。どうしても伝えたかった心は「ちょっと聴いてください、こんなびっくり仰天があったんですよ、実際に……」に尽きるのですが、自分勝手な熱情を暑苦しいとする俳句界では絶対にやってはいけなかったことで、それに気づかないのがヨウコさんのノーテンキなところで。(^▽^;)


 ことの発端は、ある未明。パソコンデスクの横が妙に騒がしいので何気なく視線を投げると、なんと建物に囲まれた三十坪ほどの中庭が茶色い野鳥で埋め尽くされています。ものすごく美味しいものが落ちているとでもいうふうに、銘々が熱心に地面をついばんでおり、空からは矢継ぎ早に仲間が降りて来るので、ぎゅうぎゅう詰めで。


 いったい何事?! 慄いているうちに先頭の数羽が飛び立つと他の鳥たちもいっせいに飛び去り、あっと言う間に元の枯庭にもどりました。で、感興のまま詠んだのが「おたおたす冬鵙百羽庭に来て」の一句。あまりのぎこちなさに辟易して何度も推敲しましたが、あの実景が頭にちらついてどうにもならず、句会に出して撃沈。(@_@)




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※そんな折りにある評論で「虚子は感情の露出をきらった。省略と余裕による軽みを尊び、深い沈潜を旨とした」の一文に出会い、だよね~と、あらためて思いました。弟子の杉田久女への処遇には釈然としないものを感じていますが、さすがは「初空や大悪人虚子の頭上に」と詠んだ先達、核心をついていらっしゃるね~と。( *´艸`)


※ちなみに前掲の文字どおりの拙い句ですが「大挙して冬鵙来る朝の庭」「隙間なく冬鵙並ぶ明けの庭」「びつしりと冬鵙埋める狭庭かな」「冬鵙百羽庭を占拠の夜明けかな」などの推敲を経て「明けの星冬鵙百羽庭に来る」に落ち着きました。先達諸氏のご評価はわかりませんが、いまのところ自分の力ではこれが精いっぱいで。(^-^;




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