第402話 再びの三択 📣
ああ、今年の夏がこれほど苦痛に満ちたものになろうとは思ってもみなかったわ~とヨウコさん。世間はなべてパリオリンピック一色らしく、テレビもラジオも朝から晩まで各局アナウンサーの大絶叫が響きわたり、鬱陶しいやら、暑苦しいやら。一刻も早くこの魔の季節が終わってくれないか、指折り数えて待っているみたいです。
そもそも、ひととひとが競い合うこと自体が性に合わないのです。なにゆえそんなに勝ち負けを決めたいのか、つまりはいうところのマウントを取りたいのか、その気持ちがわからないので、当の選手はむろん、興奮して応援するメディアや視聴者も遠い世界の住人に見えます。だれかに勝つことがそんなにうれしいのって虚しくない?
メディアの事情は少しわかります。ことに民放では高校野球やオリンピックは莫大な広告収入が見込めそうですし、大入が出たりするのかもしれませんから、俄然、張りきりますよね~。ですが、たまたま心身の健康&体力&財力に恵まれなかった一般のひとは最初から選外なんですから、これほど顕著な不公平は滅多にないのでは?
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ここまで書いたところで拙作『問われる三択 🧑⚖️』(2022年11月25日)に思いがけないレビューコメントを賜りました。経験則から、この手の記事へのリアクションは皆無と諦めておりましたので、すばらしくタイムリーに過去作を発掘してくださった野栗さまへの深い感謝の思いを込めて、ここに再掲載させていただきます。
問われる三択 🧑⚖️
いまだ夜が明けない時間に起きると、テレビはワールドカップのライブだった。
昨日は日本チームが初戦で勝ったというのでメディアも国民も大興奮&大狂乱。
生中継で寝不足にならないのは非国民と言われそうな空気だが、その非国民(笑)の脳裡を占めているのは、青いユニフォームではなく、ひとりの無力な女性の健気。
四年余り前に平和な家庭をおそった不幸への判決が、本日の午後、出されるというが、目の前のスポーツの勝敗に夢中の民衆にはどうでもいいことなのかも知れない。
生涯にわたり志を貫いた日本画家・堀文子さんは「スポーツ&スキャンダルがもてはやされる社会は危ない」と言ったそうだが、聡明な先人の遺訓も虚しいだけ……。
⚽
1928(昭和3)年、アムステルダムオリンピックの三段跳競技でアジア人初の金メダルに輝いた織田幹雄さんの至言を、詩人・アーサービナードさんに教わった。
――オリンピックを政府やまわりの思惑で左右されてはならない。
国威昂揚にメダルを利用するのはオリンピック精神に反する。
え、一世紀近くもむかしの人の言葉がこれなら、人間の思考って後退しているの?
であれば、時代錯誤が問われるロシアのウクライナ侵攻も、むべなるかなだよね。
🏃♂️
同じ『武蔵野樹林 VOL.4 2020夏』のなかで米国生まれの詩人は書いている。
「巨大なインチキ」に遭遇したとき、われわれに与えられた選択の道は三つあると。
一 なんかヘンだと思いながらも見て見ぬフリをする。
二 手強い相手を敵にまわしても社会に警鐘を鳴らす。
三 やがての破綻を見越し、ピンポイントの利を得る。
これはまたなんたる卓見! 日本人に言えないことをズバリ指摘してくれている。
赤木ファイルを遺して逝った公務員とその妻は、間違いなく二の道を選んだのだ。
老いた父親に「俊夫は成績優秀だったが、経済事情で大学に行かせてやれなかったから上役の命令に従わざるを得なかった。父として無念」と言わせながら……。💧
🎩
さらなる真実を知られたくない国家が、昨年の暮れ、突如リングにタオルを投げた結果、個人で責を負うことになった元理財局長・佐川宣寿氏にも損害賠償棄却判決。
岡山県と福島県、いずれも地方出身の生涯が歪められたなか、迷わず三を選択した山高帽やら禿頭やら白髪やらアレやらコレやらの妖怪族は高級料亭で祝杯だろうか。
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※歳時記では秋に入りましたが、まだ猛烈に暑いですし仕込みネタがありますので、連作俳句の数回は夏の季語でまいりたいと存じます。反則をご寛恕くださいませ。
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