第332話 風見馬ふたたび 🐎
限られた土地に架けたせいなのか急角度でせり上がってゆく跨線橋の頂上付近は、この街一番の高級ホテルの四階の高さに当たり、そっくり同じ表情の長方形の玻璃が十数階まで、昇り始めた朝日をまぶしく反射しています。すうっと下った正面は瀟洒な煉瓦造りのオフィスビルで、その屋根にいつもどおりいました~、親子の風見馬。
馬が西向きゃ尾は東(笑)NとSの文字に交差して西の山並みを向いているこの母子を初めてカクヨムさんにご紹介したのはいつだったでしょうか。当時は心身ともにどん底で、なんとか生きねばならない一刻一刻が苦しかった……。あれから幾星霜、環境が変わった現在は、低地ながら安定したラインで静かに暮らせています。(^.^)
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出がけまで読んでいた本に太平洋戦時下の日記の記述が出て来ました。空襲の危険に怯える日常に人びとの気持ちは自ずから荒廃を深め、電車やバスの席取りなどの小競り合いが増え、どうせ壊されるのだからと掃除も怠りがちになり、日本古来の美しいものに目を留める余裕はなくなり、都市生活者まで野性的な匂いを放ち始め……。
権力拡幅&軍需暴利を企む勢力によって周到に用意された世界各地の戦争は終息の気配もなく、ヨウコさんが朝カフェに向かう今日この時間にも、八十年前と同じ思いに堪えている地球人がいるこの現実をどう咀嚼したらいいのでしょう。真っ青に澄みきった夏空に黙ってたたずむ馬の母子に申し開きできないうしろめたさを感じます。
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日記といえば、古くからの友だちは何十年も克明な記録を書きつづけていますが、その心は「なぜあのときその選択をせねばならなかったか、正確にして詳細な事実を記しておくことで、没後につながる人たちの矜持&メンタルを守るため」とのこと。使用するツールが異なるヨウコさんにも、その気持ちよく分かるような気がします。
それから、亡父の思い出をつづった向田邦子さんの本が評判になったとき、恥をさらしたという親せきの批難から守ってくれたのは母親と妹さんだったそうです。コンプライアンスに基づく執筆なのに……という経験は仕事時代にも何度かありますが、そういう方々は得てして、作家の没後、☆◇面でなんともはやなことになりがちで。
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