第297話 仮想現実はどっち? 🥽



 時間の経過で人気がなくなり、終了間近を伝えられているVRゲームの仮想空間で純真な美少女アバターに出会い、初めての恋心を感じる冴えない中年サラリーマン。ふつうなら見向きもしない(笑)ドラマに妙に惹きつけられるのはなぜかな? 自分が不思議だったとき、友人からかけられた言葉に、ああそうかと思い当たりました。


「深い付き合いといっても、先方が実在するのかどうかも定かでない仮想空間の話でしょう。よく真面目に対応できますね~。アナログ派の自分には信じられないです」面と向かってそんな無礼を言う口を眺めながら、ここ何年かのあいだにあまりに遠く隔たり過ぎて、いまさら埋める方途もなくなった彼我の価値観の差異を思いました。



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「ネットは怖い」が合言葉(笑)の自称アナログ派の人たちは、かたくなにリアルな世界しか認めようとせず、おもな情報源といえばいまだに地元紙一辺倒で、狭い地域社会の各種組織内で少しでも上の名誉職につくこと、消息欄を見逃さず、知人の葬儀におくれを取らないこと、この二点が後半生の最大の重要事項という認識みたいで。


 そういう目に映るヨウコさんは、寄る辺のないアイデンティティを求め若い世代に迎合するだけの軽佻浮薄な輩としか見えないようで憐みのお言葉を頂戴します。(笑)でも、表層だけの関係が本当にリアルなの? しがらみのなさから率直な本音を吐露できるネット世界にこそリアルがあるんじゃないの? ま、言っても分からないか。




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