第290話 外面という面妖なるもの 👻



 近代を代表する詩人の所業についての関係者の詳らかな記述に目を疑いました。

 妻子を離縁してまで一緒になった女性へのすさまじいまでの暴力の実態に……。

 センチメンタルで甘ったるい詩作のかげでそんな卑劣を働いていたとは、絶句。


 さらに卑怯なことには、極めて外面がいいので周囲は女性の訴えに耳を貸さず。

 目を狙って殴る、逃避行の雪道に倒れたところを下駄で滅茶滅茶に蹴り上げる。

 お岩さん状態になった女性にはじめて実態を知った人たちが救出に動き出して。


 それでも男は「陸軍士官学校の癖が出ただけだ」と言い訳がましくうそぶき、いざ別れるとなると、殊勝げに泣き伏し大仰に手をついて詫びてみせるところまで現代のDVとまったく同じ。なにも士官学校出の全員が暴力男だったわけではあるまいに。



      🪼



 なんともぞっとする話ですが、外面男に容易に騙される世間も世間ですよね~。

「あんないい人物がそんなことをするには、女性の側に問題があったからだろう」

 モノ書きでありながら表面的な見方しかできなかった当時の男性連を弾劾します。


 それにしても、別れる妻の着物(実家から持参した上物)を引き渡そうとしない、低俗な吝嗇ぶりに呆れていたとき朝ドラで同じ問題を取り上げた偶然に驚きました。

いまさらですが、あの時代、妻の財産は夫のものと法に規定されていたんですね。




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