第266話 きちんと角を合わせて折り畳まれた一張羅 🔗



 終末期医療病院で働く若い女性医師の「同じように痛かったり具合がわるかったりする患者さんでも、いつもにこにこしている方とそうでない方がいる。人は自分の機嫌は自分でどうにかすべきでは?」の提言にかすかな反発を覚えたヨウコさんです。


 かつて地元紙のコラムに「人はみな生きて来たように死ぬと断定するのはやめて」と書いたところ「体験的実感につき部外者はシャラップです」大病院勤務という看護師さんから会社宛てに反論が届きました。匿名ゆえ反論の反論は出来ませんでした。



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 冒頭にもどると、見栄っぱりのヨウコさんは、よほどでない限り前者のグループに入ると思います。独り暮らしの現在でさえ、だれも見ていないのに無意識に笑んでいるのですから、自分のこれまでを知らない人たちに易々と本心を見せるはずも……。


 すべてを委ねられているからといって、人間をそんなに単純に判断していいものでしょうか。いい患者と思われたい笑顔の奥の小部屋に、きちんと角を合わせて折り畳まれた一張羅が仕舞われている、そういう絵を想像する度量があってもいいのでは?




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