第260話 ひとつの生き方として認める社会に 🥦



 小雨の朝、傘をさしてゴミ置き場に行くと、公民館の横のボードに選挙ポスターが貼ってありました。老若男性六人のつくり笑顔が並んでいますが、分けても目立っているのがエステに行き立て風にピッカピカの三十代。親の資産に恵まれて順風満帆な半生を渡って来たと勝手な想像をふくらませて、つい先刻のテレビを思いました。


 東日本大震災の津波で亡くなった引き籠もり男性の家族がぽつぽつ語っていたのは「引き籠もりもひとつの生き方として認められる社会になって欲しい」ということ。父親の転勤で移動した土地の中学に馴染めず引き籠もるようになったご子息さんは、逃げようという家族の呼びかけに応えず、二階の自室ごと大津波に呑まれて……。



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 引き籠もりがすでに社会からの避難所であったのに、ある日とつぜんの災害発生でそこから引き出され、再び恐怖の坩堝に放りこまれる。その残酷を語る老父の苦悩に痛く胸を塞がれました。国家にせよ自治体にせよ行政にせよ、まつりごとはそういう繊細な人たちにこそ司って欲しいのに、現実は真逆の物資主義なのですから。(;_:)




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