第247話 身内という面妖なるもの 👻



 そのとき読んでいる本の世界の明暗に呼応して、現実世界もそっくり同じ色に染め上げられる現象がほとんど日常と化していますが、生まれついて父母の縁に薄い少女にこれでもかとばかりにおそいかかる身内の大人たちの薄情さ、それとは真逆に映るアカの他人が寄せる厚情がひたひたと押し寄せて来てヨウコさんを濡らしています。


 家族とか身内と呼ばれる存在が無条件に持っているはずのやさしさやいたわりが、じつは決定的に欠けていることに気づいた十二歳の少女の戸惑いと絶望。大人の庇護なしには生きていかれない身をどう対処させればいいのか、まったく見当もつかない孤独な心に、すっと寄り添ってくれる他人がいたことへの感謝と感動の深さは……。



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 私事ですが、たびたび書かせていただいたとおり、育児・家事・仕事の明け暮れに寝る間もなかったころに「なぜ叔母を訪ねて来ない。姪として当然の義務だろう!!」当時、高校の物理教師(物理ぎらいの所以かも(笑))だった母方の義叔父に法事の席で叱責された記憶があります。幼いむすめたちが怯えるほどの怒気に委縮して、ひとことも弁解できませんでした。


 かたや、震度6強の直下型地震を遠因として半世紀の事業歴を閉じることになったとき、末期のベッドの澄んだ目を赤く潤め「ヨウコ、かわいそうに(´;ω;`)ウゥゥ」掠れ声を絞り出してくれたのは、ひとつ上の管理栄養士と見合い結婚するまで一緒に暮らしていた叔父(父の末弟)で、獣医師(動物好きの所以かも(笑))で保健所長を務めた大好きな身内でした。




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