第246話 木は根もとから描くのですよ 🎨



 少し前の時代の本を拝読していると、明治維新から間もないころの発想とは思われない斬新さに射抜かれることがあります。良妻賢母教育が基本だったと思われる女子師範の図画教師が語る「木は枝から描いてはいけません、根もとから描くのですよ」などはその最たるもので、朝カフェのヨウコさんの目から、ぽろりと鱗が……。🐟


 木は、地下の土をつきあげて生え出て、その末節として枝葉を茂らせるのだから。枝は、枝そのものを描くのではなく互いの間隔を描くつもりで……ひょっとしたら、そういう考え方は、現代美術の世界では当たり前になっているのかも知れませんが、初めて聴く耳にはなんと滋味深く楽しい含蓄に富んでいることでしょう。(^.^)/~~~



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 絵筆をペンに持ち替えても同様と思われ、目に見える事象の底にはそれぞれの人生の豊かな水脈が奔っており、その裏づけがない文芸は少しさびしいように思います。古今東西の名作と呼ばれる作品にはいずれにもこのモチーフが通底しているようで、あわよくば自作もそのご相伴にあずかりたいなと虫のいいことを考えるヨウコさん。




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